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日銀の白川前総裁、異次元緩和で「資源配分にゆがみ」

白川方明・前日銀総裁は1日公開された国際通貨基金(IMF)の季刊誌に寄稿し、黒田東彦総裁による異次元緩和に疑問を呈した。金融政策が「物価に与えた影響は控えめだった」と指摘。解雇の少ない日本の雇用慣行が賃上げの弱さに影響しているとして、米欧と同じ2%の物価目標を掲げることに懐疑的な見方を示した。

季刊誌は「金融政策の新たな方向性」として特集を組み、学識者や中央銀行の元幹部らが参加した。白川氏は「金融政策の基礎と枠組みを見直すとき」と題し、英文で寄稿した。

白川氏はまず、低インフレの長期化で政策金利がゼロ近くに張り付くことを警戒する声について「根拠のない恐怖」と表現。実質的なゼロ金利が「景気後退時に利下げを通じて経済を安定させる能力を低下させる」とした米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の過去の発言に対しても「事実によって実証されなければならない」と指摘した。

理由として日本の1人当たり国内総生産(GDP)の成長率が、日銀がゼロ金利に達して非伝統的金融政策を開始した2000年から異次元緩和前の12年にかけて主要7カ国(G7)の平均と同程度だった点をあげた。

異次元緩和は、物価を押し上げる効果が小さかった一方で構造問題への改革を遅らせる「応急措置」になったとの見方を示した。長期の金融緩和で「資源配分のゆがみがもたらす生産性への悪影響が深刻になる」とした。簡単に労働者を解雇できない日本の大企業は「将来の成長に確信が持てない限り賃上げには慎重で、それがインフレ率の低下につながっている」と指摘した。

季刊誌では元インド中銀総裁のラジャン・シカゴ大教授も日本の金融緩和に疑義を呈した。物価の下落が止まらなくなるデフレスパイラルに陥らない限り、低インフレを過度に心配する必要はないと説明。「数十年にわたる低インフレは、日本の成長と労働生産性を鈍化させた原因ではない。高齢化と労働力人口の減少がより大きな原因だ」と分析した。(ワシントン=高見浩輔)

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