「ブラック校則」とも呼ばれる校則の見直しをめぐり、中学生と学校、行政の議論が始まっている。兵庫県尼崎市は昨年12月、校則の見直し指針を策定。ルールに苦しんだ「中学生ラッパー」がはたらきかけた。
昨年8月、稲村和美市長(当時)や白畑優教育長らを前に、あるアンケート結果を発表する中学生がいた。市の中学3年生竹島一心さん(15)だ。
14~29歳が集う市立ユース交流センターの活動報告会。竹島さんは、校則の満足度や納得度を問うアンケートを作り、中高生や大学生、保護者から計251の回答を得ていた。
校則について「教員は納得できる理由を説明してくれたか」。中高生の約83%が「いいえ」と回答した。竹島さんは「校則に納得したい」と訴え、こう提案した。生徒が意見を言える場を▽(校則や風紀検査方法などの)情報公開を▽ガイドライン策定を――。
中学校入学時、教員は竹島さんの髪形について「ツーブロックだ。校則違反」と言ったという。小学生時代からの髪形なのに、「ルールだから」と是正を求める学校。意見したが、周りからは「内申点下がるで」と言われた。ワンポイントの靴下不可、男子は体育服の下に肌着不可――。校則の理不尽さにストレスを感じた。
そんな時に、ラップに出会った。「マイナスのことを曲にして、プラスに変えることがかっこいい」。先輩ラッパーに教えを請い、曲を作った。
なぁ大人聞いてんか大人 俺の言いたいことは 伝わってるこの言葉 俺の奏でる音が(「大人へ」)
意見あっそ聞かない そんな大人ばっかり 縛りばっかがっかり 校則に拘束 マジでないよ道徳(「gimukyouiku」)
ラッパー名は「ISSHIN(イッシン)」。ラップで気持ちを表現できて、救われた。
センターの提案活動は、若者が「言ってもムダ」とあきらめる状況をなくそうと始まった。稲村市長は「一心君の訴えに大人がどう動くのか、他の子たちが見ている」と後押しした。
報告会から4カ月後の12月、市教委は校則の見直し指針を作った。柱は、子どもが参画できる仕組み構築▽校則を必要かつ合理的範囲で制定▽校則を公表、だ。生まれ持った性質や性の多様性を尊重していないなど、合理的な説明が難しいことは、積極的に見直すと明記した。
竹島さんが通う中学校では、校則の見直し議論が始まっている。能島裕介教育次長は、竹島さんの発表を振り返る。「ブラック校則をなくせという主張はよく聞くが、彼は違った。大人に対して説明責任を果たせと言っていた」
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