国産ロケットH3「失敗」明言も 共同通信の対応は全然問題ないワケ

キーワード :
,
先日、国産ロケット「H3」の打ち上げ結果に関する「失敗」「中断」の判断を巡って、インターネット上で議論が紛糾した。物議を呼んだ共同通信記者の対応は本当に間違っていたのか、改めて考える。

みんなが思った「これは失敗か…?」

種子島宇宙センターのある位置(画像:(C)Google)
種子島宇宙センターのある位置(画像:(C)Google)

 実際、異変が起きた直後には共同通信だけでなく日本経済新聞もツイッター上で

「失敗」

と伝えており、読売新聞、東京新聞も当日の夕刊で

「H3打ち上げ失敗」
「H3ロケット発射失敗」

と報じている。読売、東京の両紙は翌朝の紙面では「失敗」と書かずに「中止」「発射できず」などとしていたが、これは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と文科省の公式見解を受けて、表記を調整したのかもしれない。歴史とは、こうして修正されていくのだろう。

 インターネット上では

「共同通信はいち早く『失敗』と報じてしまったから、会見で『失敗』という言葉を無理にでも引き出す必要があった」

という言説がまことしやかに語られているが、これはフェイクニュースの一種だろうと私は見ている。共同通信だけでなく、読売新聞も東京新聞も「失敗」と報じていたからだ。
 H3の打ち上げ時の映像を見ると、カウントダウンが10秒を切り「フライトモードオン」「全システム準備完了」などのアナウンスが流れたのち、カウントゼロでロケットは真っ赤な炎と大量の白煙を吐いた。だが、ロケットは一向に動き出す様子は見られず、やがて静寂が戻った。

 この場面を見て「失敗か……?」という言葉が胸によぎった人は決して少なくないはずだ。ライブ中継の動画でも「失敗?」というコメントが多数書き込まれた。だからこそ、共同通信の記者は会見で「失敗と呼ばれることも甘受せざるを得ないのではないか」と繰り返し聞いた。

 最後の一言「それは一般に失敗と言います。ありがとうございます」について、「捨てぜりふ(= 軽蔑・脅迫の意味を込めた言葉)」と批判されているが、このどこに軽蔑・脅迫の意図があるというのだろう。確かに、JAXA担当者と記者の見解は平行線のままで折り合わず、記者のなかにあきれた気持ちはあったかもしれない。だが、暴言や罵声を浴びせたわけではない。このぐらいはまったく

「正常運転の範囲内」

だ。