国産ロケットH3「失敗」明言も 共同通信の対応は全然問題ないワケ
先日、国産ロケット「H3」の打ち上げ結果に関する「失敗」「中断」の判断を巡って、インターネット上で議論が紛糾した。物議を呼んだ共同通信記者の対応は本当に間違っていたのか、改めて考える。
専門用語が導く「曲解」
確かに「失敗」は決して響きの良い言葉ではない。だが、辞書的な意味は「目的を果たせないこと」にすぎない。
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「失敗:やりそこなうこと。目的を果たせないこと。予期した効果をあげられないこと。しくじり」(大辞林 第3版)
今回の目的は、言うまでもなくロケットを天高く宇宙まで打ち上げることにあったはずだ。その上で、人工衛星「だいち3号」の軌道投入などのミッションがあった。
リフトアップだのフェイルセーフ(被害を最小限に抑えること)だのという不慣れな専門用語を使うから、かえって物事を曲解してしまうのだろう。ややこしく考え過ぎである。
ロケットではなく、ロケット花火の打ち上げで考えてみればいい。導火線に着火しました。順調に導火線が燃えていきました。ところが、ある地点で“何らかの異常”によって、火が消えてしまいました。そして、ロケット花火は飛びませんでした――。
この場合、中止や中断と呼ぶことも可能ではあるが、より端的に伝えるなら「打ち上げは失敗しました」と言うほうが適切だ。安全装置が作動したのであれ、導火線が湿っていたのであれ、とにかく22年ぶりの新型ロケット打ち上げは、目的を達成できなかった。すなわち、打ち上げに「失敗」したのだ(繰り返すが、これは敗北でも厄災でも破滅でもない。ただ、失敗したというだけだ)。
墜落や爆発といった狭義の失敗ではないものの、目的が達せられなかった以上、広い意味では失敗と言える。「想定内の失敗」と言えば、伝わるだろうか。