2018年夏、私はモンゴルのゴビ砂漠にいた。
エンジンを止めると風の音しかない世界。
まるでバイクに乗ったまま原始時代にタイムスリップしたのかと錯覚する。
とんでもねえところに来てしまった…。
なぜモンゴル…?
最初になぜモンゴルに行った理由を書いておこう。
草原を走りたかったから。
以上である。
なんとも頭の悪い理由だが、おそらくモンゴルを走った先人たちも同じ理由だろう。
観光名所も、美味い飯も、快適なホテルも、プールや海のようなリゾートも、何もない。
1週間こんな景色が続くだけ。
それどころか、風呂はないし、強制で野グソだし、泥だらけになるし、高確率で転ぶ。
モンゴルでは腰の高さの布壁をトイレと呼ぶらしい。
しかも、30万円近く払う必要がある。
ここまで話すと一般人には「意味が分からない」と言われるが、30万円以上の価値があると断言できる。
全国のオフローダー諸君は、絶対損しないから30万円握りしめてモンゴルに行ってほしい。
さて、モンゴルの素晴らしいところを語っていこう。
モンゴルの素晴らしいところ
本気で語ると1万文字くらいになるので、ベスト5だけ書くことにする。
見渡す限りの地平線。
モンゴルに行く理由の9割はこれ。見渡す限り全部地平線である。
北海道のコンクリートが伸びて見える地平線とは異質の感動がある。
これはね。言葉ではこれ以上表せない。
せめて写真たくさん貼っておくけど肉眼はもっとすげえ。
おはようからおやすみまでオフロード。
朝起きて、夜寝るまでオフロードしか走らない。
最高走行距離は1日250kmにも及ぶが、全て土の上だ。
それもそのはず、モンゴルでは郊外に出るとコンクリートがほぼない。
これがどれほど素晴らしいことか、オフローダーの皆さんは分かるだろう。
都心部でオフロードを走ろうと思うと、片道50km~100kmコンクリートを走る。
で、走るオフロードはせいぜい多くて20km程度だろう。
ところがモンゴルはどうだ。もう起きたら一歩目がオフロードだ。
繰り返すが、ずっとオフロードだ。嫌になってもオフロードだ。
もう後輪が滑るのなんか普通になる。
ちなみに、1000kmオフを走ってコンクリートを走ると宙に浮いたように感じる。
規格外の星空。
星空がぶっ飛んでいる。
何しろ、モンゴルの国土は日本の4倍あるが、人口は38分の1しかいない。
しかもその人口の半分が首都ウランバートルに集中している。
そうすると何が起きるかというと、郊外に行くとマジで光がない。
日本の光害マップを調べてほしいが、本気で街の光の影響を受けず撮影ができるのは、離島か北海道くらいしかない。
しかしモンゴルはどうだ。人がいないんだから光なんかあるわけがない。
加えて国の平均標高が1000mを超えており空気が超澄んでいる。
月が出ると明るさに驚く。周りが暗いと月がすごく明るく感じる。
月光浴をしながらの野グソは格別なのでぜひ体験してほしい。
モンゴルは、近い。
モンゴルは遠い異国に感じるが、東京から6時間で着く。
つまり、早朝に出たら夕方にはモンゴルの草原でキャンプしてる。
海外ツーリング好きには伝わるだろうが、コレは非常に重要なファクターだ。
我々のようなサラリーマン、学生が海外ツーリングするのは時間との闘いである。
フライト時間ほど無駄なものはない。
こんなに近くに地球の原風景があるってのは、本当に日本人は恵まれている。
ぜひその恩恵に与ってほしい。
すべてがどうでも良くなる。
どれだけ仕事が辛くても、家庭が荒れていても、モンゴルを走るとどうでも良くなる。
必死で走るから余裕がなくなることもあるが、俗世から強制的に切り離されることが大きいと思う。
モンゴル郊外にはほぼ電波がない。上の画像のように、電波塔がないからだ。
スマホを持ってても、それはただのカメラでしかない。
しかも娯楽がない。つーか、街がない。
数日間、純粋にバイクと飯だけを繰り返す。
するとどうだろう。人間は心が浄化されていく。
私は無宗教だが、コレはマジだ。
しまいには風呂がなく野グソで、服は泥だらけ。そのまま星空の下キャンプだ。
最終日はどうでもよくなってテントすら張らなかった。
その辺の草原に寝袋だけ敷いて寝たが、この日が最高に気持ちよく寝れた。
ちなみにこの体験をすると、どんな安宿に泊まっても「まあモンゴルよりマシだな」となる。
そういう意味でも、全てがどうでもよくなる。
どうやってモンゴルに?
日本の旅行代理店、クルーズインターナショナルのツアーに参加した。
ほかの国では個人旅行でツーリングした経験もあるが、モンゴルはちょっと事情が特殊だった。
いくつかその理由を書いておく。
国際免許が使えない
ツアーだとヨロシクやってくれるが、モンゴルでは日本の国際免許が通用しない。
コレは、モンゴルがジュネーブ条約に加盟していないため。
個人旅行で無理やり免許を取ろうとすると、渡航後にモンゴル語で申請書を書いて1週間待つ必要がある。
モンゴルの草原には警察はいないし、免許なしでもバイクが借りられる実態があるが、合法的に走ろうとすると個人ではかなーり無理がある。
この時点でツアー参加を決意した。
トラブル時に死ぬ
比喩ではなく、本当に死にかねない。
この景色の中、パンクやガス欠になったら…と思うとゾッとする。
モンゴル人たちはどうしているんだろう…。助けを呼ぶにも、電波がないので電話が通じない。
街に向かうにも、GoogleMapは通じない。
ぶっちゃけ私と友人はオフロード経験ほぼゼロで参加するという無謀っぷりだったので、サポートが必須だった。
ツアーならパーツ取り車を車に載せているので、壊滅的な故障があっても安心だ。
手ブラで走れる
ツアーなら体一つで走れる。
コレはオフロードを純粋に楽しむ上で非常に大切だった。
車がついてくるので荷物は任せっきり。バイクには何も載せない。
そして夜は冷たいビールが飲み放題。テントも立ててくれるし、ご飯も用意してくれる。
個人だと、疲れた体でテントを立て、ヌルいビールを飲むことになる。満足度がケタ違いだ。
とまあ大きな理由はこの3つ。ちなみに通訳がついてくるので、現地人とも会話できるぞ!
動画で見るモンゴル
動画の方が感動は伝わる。けど、ぜひ現物を見に行って欲しい。
まとめ。さあモンゴルに行こう。
コロナが収まったらモンゴルに行こう。
空港を出てバイクを借りたらその先は草原。ウイルスが移る心配もない。
(むしろこっちが移さないよう、人と出会ったときは十分な対策をしよう)
私は海外5か国5000km、国内46都道府県を走っているが、「人生最高のバイク体験」と言われたらブッチギリでモンゴルである。
この先も、この体験を超えることはないと思う。
そのくらいブッ飛んだ体験ができるモンゴルを、ぜひ自然が多く残る今のうちに行ってほしい。