〈社説〉共産の除名問題 かたくなに映る党の対応
組織防衛の論理を優先させる対応が、かえって傷口を広げているように見える。
共産党が、党首公選制の導入を著書などで訴えた党員を除名処分にした問題である。
志位和夫委員長は、異論を持っているから排除したわけではない、と強調している。党のルールに従わず外部で訴えたことが規約違反に当たるとの説明だ。
共産党には「民主集中制」という仕組みがある。議論を尽くした上で、決定すればみんなで実行する、派閥・分派はつくらない、といったルールである。それと相いれないというのは分かる。
だが、今回の騒動への対応には党の内外から厳しい目が注がれている。閉鎖的な組織と見られても仕方ない面がある。
朝日、毎日、産経の各紙が社説で、除名を巡り「異論封じ」「強権体質」などと批判した。これに対し党は、憲法が21条で保障する「結社の自由」への攻撃に当たるとして、猛反発している。
組織内の問題だとしても、政治に一定の影響力を持つ公党の在り方にメディアが関心を寄せるのは当然だろう。その批判や指摘を自主性への侵害と切り捨てるだけでよいのか。謙虚に受け止め、今後に生かす姿勢がほしい。
除名されたのは、党政策委員会の安保外交部長を務めた経験のある元党職員、松竹伸幸氏。1月に出した著書などで、民主集中制が抱える課題を指摘している。
党員が党中央の方針に疑問を持っても事実上、周囲に支持を訴えられず、可視化されない。異論を許さない党のように国民から見られている、との分析である。的外れとは言い切れまい。
民主集中制を採る背景には、かつて旧ソ連の干渉などを機に党が分裂した苦い歴史がある。一方的に論難できるものではない。
だとしても、分析に基づく批判があり、その反響が広がっている事実は重い。改革を検討する柔軟さがあってしかるべきだ。
共産党は昨年、1922年の創立から100年を迎えた。その主張も当然、当初と同じではない。一定の変遷を経てきた。
安保関連法が成立した2015年以降は、安保法廃止を掲げる野党による「国民連合政府」の樹立を提唱している。自衛隊も有事には活用するとしたほか、日米安保条約廃棄などの持論も連合政府に持ち込まない方針を示す。
かたくなに映る対応は、進めてきた現実路線にもそぐわないのではないか。