違法な美容整形 治療費のため動画配信を続ける女性
ブラジルに住むジュジュ・オリヴェイラさん。当時27歳の彼女は違法な美容整形で変化してしまった。
今回、スタッフが現在33歳となったジュジュさんの家を訪ねた。出迎えてくれたジュジュさんはスリムな体にはアンバランスな大きな顔で、頬は不自然に盛り上がり、あご下の肉が垂れ下がっている。
ジュジュさんの顔が変わってしまったきっかけは、2017年に接客業をしていた時男性客に「キレイだけど、なんかちょっと男っぽいね。顎とかなんかゴツイし…骨が太そうって感じ?」と言われたことだという。
ジュジュさんは、性別は男性で生まれたトランスジェンダーで、自分の丸みの無い頬、角張った顎と輪郭が幼い頃からのコンプレックスだったという。骨格を気にしていたところに言われた一言だった。
そして数か月後、違法で美容整形を行う女性の施術を受けるために隣町にあるホテルへ。
施術を行う女性は「今日はシリコンをあごに入れて、残りの2回で鼻と頬を調整するから、3回でどう?」と持ちかけ、値段は1000レアル(約4万円) で1回の施術は1,2時間で終わり、睡眠薬で眠りについている間に終了したという。
そして3回の施術を受け、顎、鼻、頬への液状シリコンの注入で丸顔に変化。
これこそが理想の変化だと夢が叶ったと大喜びしたが、それから1年後、瞼が腫れ、目が開きにくくなる。
少し様子をみようと思ったその数日後。起きると顔が重く感じ、顔全体がぼこぼこと膨れ、あごにたるみも起き出した。すぐに病院へ行き、CTなどによる検査が行われた。
検査の結果、医師から「あなたの顔に入っているのは液状シリコンではありません。ミネラルオイルというものです」という事実が判明。
ミネラルオイルとは石油から様々な不純物を取り除いて得られる無色透明の液状の成分で、東京イセアクリニック 吉種克之院長に聞くと「日本だとミネラルオイルは化粧品の材料ですから、それを(体内に)入れると言うことは絶対あり得ない。ミネラルオイルは異物ですから排除しようとして、人間の体の持っているもので中で包んでしまって塊にしてしまうこともあるし、逆にこういうものが組織に浸潤してきて形を崩してしまう。いろんなことが起こります」という。
ミネラルオイルは1リットルが1000円~2000円程度とシリコンに比べるとかなり安く、施術を行った女性が、シリコンと偽って使用したのはその安さが理由ではと思われた。
ジュジュさんは医師から異物を除去する医療費はかなり高額になると言われ、高額な医療費を払えるあてもなく、顔は異物による免疫異常で膨らみ続けた。
彼女は腫れ上がった顔により仕事もできなくなり、顔を見られたくなくて家に引きこもる日々をしばらく送っていた。しかし生活必需品や食料を買いに出るために外に出ると、容赦ない誹謗中傷の言葉を浴びた。
その生活が1年程続いていたある日、買い出しに出た時、女性2人から「フォフォーンそっくりじゃん!」と笑われる。フォフォーンとは、ブラジルで有名な子供番組のキャラクターで、これまでに一番傷ついた言葉だったという。そしてジュジュさんは猛烈な怒りを感じ、誹謗中傷に闘う決意をした。
その日、家に帰りお気に入りのワンピースに着替えると自撮りをし、「今日…フォフォーンに似ていると言われて笑われました。とても悔しくて、悲しかった。みじめだった」とやるせない気持ちをSNSに投稿。そして「この顔は、違法行為を選んだ自業自得。でも、誹謗中傷はやめて欲しい。人の容姿を笑い、罵倒することは間違っているはず」と今までの経緯も全て説明した。すると応援コメントが続々と書き込まれ、コメントに励まされその生活はがらりと変わったという。
現在は朝起きると身だしなみを整え、メイクアップをし、動画配信をスタート。裕福ではないが動画による収入で生活が成り立っているという。
そして今では外にもどんどん出て、顔を隠さずに堂々と歩いている。声をかけられ写真撮影をすることもあるという。今後の治療についてジュジュは「治療をあきらめたわけじゃないわ。自分でお金をためて、いつかはって思ってる。そのためにもSNSでの発信をがんばらないと」と話した。治療を受けられる日を信じてこれからも、中傷に負けずにポジティブな発信を続け、違法な施術の危険性も訴えていくつもりだという。