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「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究

人口の「縮小」と「偏り」が都道府県議選に与える影響とは~2045年に政党は…

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【21】

岡野裕元 / 一般財団法人行政管理研究センター研究員

2023年02月23日 [無料]

政治学における政党ラベルの議論

 ここで政治学の政党ラベルの議論を少し紹介する。

 日本の地方政治研究では2010年代から、ヨーロッパ政治研究の知見に基づき、国政と地方政治をマルチレベルで立体的に見るという視点が紹介、適用される動向が目立つ。例えば待鳥聡史は、ヨーロッパ政治に関するHough and Jefferyの研究を参照しつつ、次のように紹介している(待鳥聡史『政党システムと政党組織』東京大学出版会、2015年、p.58)。

 複数の政党間競争アリーナの存在を前提にした政党システム論として、これまでのところ知見が最も蓄積されているのは、ヨーロッパ諸国の政党システムを対象とした研究である。ヨーロッパには、もともとオーストリア、ドイツ、スイスといった連邦制諸国があることに加えて、1970年代以降にはイタリア、スペイン、ベルギー、イギリス、フランスなども地方分権改革を進めるようになった。これらの変化は、地方政治が国政に対して独自性を強めることを促し、それに伴って政党政治のあり方も国政と地方政治で異なるという現象が見られるようになったのである。

 要は、地方分権改革が進展すると、政党政治が国政・地方政治間で異なってくる。

 国政と地方政治を立体的に見て、執政制度と選挙制度の双方に注目すると、有権者の投票行動(政党投票か候補者個人投票か)に与える影響として、建林正彦の先行研究で政党組織の観点から次のことが指摘されている(建林正彦『政党政治の制度分析 マルチレベルの政治競争における政党組織』千倉書房、2017年、p.10)。

 オープンリストの比例代表制や中選挙区制といった選挙制度、あるいは大統領制という執政制度は、有権者に議会選挙において政党ではなく、候補者個人を基準にした投票を行わせるのであり、そこでは政党ラベルはそれほど価値を持たず、結果的に凝集性や規律の弱い分権的な政党組織がもたらされるものと考えられる。他方、クローズドリストの比例代表制や議院内閣制、また小選挙区制と議院内閣制の組み合わせによるウェストミンスター型の民主制は、政党を基準にした投票を促す制度であり、集権的な政党組織をもたらすというのである。

 それゆえ、「日本のマルチレベルの政治競争においては、衆議院の選挙制度改革によって埋め込まれた政党本位、政策本位への誘因を下支えする、あるいはそれと制度補完性を持った制度が参議院や地方議会において採られていなかったのであり、政党組織の構成員である参議院議員や地方政治家は、政党ラベルをレベル縦断的に一貫した形で維持することにそれほど高い価値を見出さなかったのである」といわれる(建林正彦『政党政治の制度分析 マルチレベルの政治競争における政党組織』千倉書房、2017年、p.215)。

 政党システムに注目した砂原庸介も、「日本の地方政府における二元代表制と、単記非移譲式投票が変わらなかった地方議会の選挙制度、そして1990年代以降に進展した地方分権改革が、国政レベルの政党への統合を弱め、政党システムの制度化を阻害したということである」と同じように指摘している(砂原庸介『分裂と統合の日本政治 統治機構改革と政党システムの変容』千倉書房、2017年、p.172)。

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地方で政党ラベルはどうなる?

 最後に、国政の政党ラベルが機能するか否かについては、国政と地方政治の間における執政と選挙の両制度の差異、地方分権改革進展の動向に注意を傾ける必要がある。国政、地方それぞれの選挙制度単体に焦点を当てるのではなく、三層構造(国、都道府県、市区町村)で検討すべき課題だ。さらに、執政、議会、これらを媒介する政党組織、そして主権者たる国民・住民と社会の実態も含めたシステム思考で考えるべきだ。

 その理由は、各制度間で相互作用があり、連動するからである。また、もし現状の地方議会選挙制度に変わる代替案を本気で作成するならば、実現可能性も考慮すべきである。その際、当事者たる政治家たちが、選挙の現場で肌を感じ、課題や問題点を感じているのかも含めて丁寧に話を聞くことが重要だろう。

 少なくとも、国民民主党、社民党、公明党の今後の地方執政制度の見方については、この連載で3回にわたってインタビュー調査を実施してきたところである(日本共産党は不明)。

・第14回「有権者の地方選での投票行動はどう変わったか?~国民民主党の見方は……」
・第15回「地方政治、沖縄県民と向き合う社会民主党の流儀とは~福島瑞穂党首に聞く」
・第17回「地方の政治・選挙の現状と選挙制度の課題と今後~石井啓一公明党幹事長に聞く」

 そこから浮かぶのは、現行の地方二元的代表制という執政制度に対する信頼の厚さであった。

 地方分権改革は継続して進展中である。集権化、分権化の観点からは、「中央と地方の政体間の垂直的な権限配分が中央に集中しているとリンケージが高まり、地方に分散されているとリンケージが弱まる」といわれている(浅羽祐樹「選挙制度の影響」山田真裕・飯田健[編著]『投票行動研究のフロンティア』おうふう、2009年、p.247)。

 いずれにせよ、現行制度を前提とした2045年の都道府県議会選挙は、今以上に政党ラベルが機能しにくくなると予測される。

 以上、都道府県議会選挙で1人区が多くなる要因を説明してきた。これらは、筆者が三浦まり教授(上智大学)主催の地方議会研究会(2022年7月22日、オンライン)で講演した内容をバージョンアップしたものである。次回は県内基礎自治体間での人口の極端な偏りとの関係で、公職選挙法第15条第8項(旧第7項)ただし書について議論する。

◇連載「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」は「こちら」からお読みいただけます。

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岡野裕元
筆者
岡野裕元(おかの・ひろもと)
一般財団法人行政管理研究センター研究員
肩書は原則、論座に執筆当時のもの
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