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「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究

人口の「縮小」と「偏り」が都道府県議選に与える影響とは~2045年に政党は…

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【21】

岡野裕元 / 一般財団法人行政管理研究センター研究員

2023年02月23日 [無料]

県内基礎自治体・選挙区間の人口の極端な偏り

 日本全体の人口は2008年にピークを迎え、それ以降、人口減少社会に突入した。2022年には東京都でもコロナ禍の影響で26年ぶりに減少へ転じた。人口が都市圏に偏る構図自体に変わりない中で、社会・経済圏全体の縮小が今後進む。県内基礎自治体間での人口の極端な偏りは、人口の縮小と偏りの社会構造の中で、選挙区構成に深刻な影響を及ぼす現代的課題である。

 リンク先の表4は、2019年4月~2023年3月期(19ターム)の選挙区定数の分散値を算出したものである。全国が4.77となっている中、愛媛県(15.01)、石川県(13.78)、鳥取県(13.43)、香川県(12.44)、長崎県(12.11)、和歌山県(11.71)、鹿児島県(11.48)、高知県(10.50)、島根県(10.24)で10を超えており、地方において選挙区定数間の広がりが顕著である。

 そこで、愛媛県と石川県を事例に見てみよう。リンク先の表5(愛媛県)、表6(石川県)は、1959年4月~2023年3月期(4~19ターム)における各選挙区定数の推移をたどったものである。全体的な特徴として、県庁所在地の都市(愛媛県松山市、石川県金沢市)を含む選挙区における選挙区定数の巨大化が顕著である。他方、小選挙区も一定数残存し続けていることが分かる。

選挙区定数の巨大化と小選挙区の残存

 では、2045年に愛媛県の選挙区定数はどのようになっているのか。本稿の冒頭で示した公職選挙法の選挙区・定数設定と配当基数計算の方法に基づき、単純に人口比例で算出すると次のようになる(公職選挙法第15条第8項ただし書について考慮しない)。なお、議会定数を2019年4月~2023年3月期と同じと仮定して計算している。

 2045年の愛媛県(2019年は定数47)の各選挙区は、松山市・上浮穴郡(21人区)、今治市・越智郡(5人区)、新居浜市(5人区)、西条市(4人区)、四国中央市(3人区)、宇和島市・北宇和郡(2人区)、大洲市・喜多郡(2人区)、伊予郡(2人区)、八幡浜市・西宇和郡(1人区)、伊予市(1人区)、西予市(1人区)、東温市(1人区)、南宇和郡(選挙区を維持できず強制合区対象)となる(配当基数の小数点以下の計算処理の都合上、選挙区定数を全て足すと48)。

 2019年の統一地方選挙と比較すると、松山市・上浮穴郡選挙区は、16人区から21人区へと巨大選挙区に変貌を遂げる。他方、1人区については、八幡浜市・西宇和郡が2人区から1人区へ、南宇和郡選挙区が1人区を維持できず強制合区対象となるが、4個維持されたままとなっている。

 同様に、2045年の石川県(2019年は定数43)の各選挙区についてみると、金沢市(19人区)、小松市(4人区)、白山市(4人区)、野々市市(3人区)、河北郡(3人区)、七尾市(2人区)、加賀市(2人区)、能美市能美郡(2人区)、輪島市(1人区)、かほく市(1人区)、珠洲市鳳珠郡(1人区)、羽咋市羽咋郡南部(1人区)、鹿島郡(1人区)、羽咋郡北部(選挙区を維持できず強制合区対象)となる(配当基数の小数点以下の計算処理の都合上、選挙区定数を全て足すと44)。

 金沢市選挙区は16人区から19人区へとさらに巨大化する。他方、1人区については、4個から5個に増える。

 いずれも、選挙区定数の巨大化と小選挙区の残存が目立つ。

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県議選選挙区定数の上限はどれくらいが妥当か

 県議選の選挙区定数の巨大化は、市区町村議会選挙とさほど変わりない選挙になることを意味する。各党から複数人立候補すること、大選挙区単記非移譲式での投票であることを踏まえると、政党ラベルが機能しにくい。一方で、同じ政党内の候補者間で地割りを守らせる必要もあり、地域レベルで政党組織が機能する必要もある。

 有権者が候補者の比較考慮作業を行う際の情報コストの問題も浮上する。情報コストは、量的側面と質的側面の両方がある(加藤秀治郎『日本の選挙』中央公論新社、2003年、p.76)。候補者数が多いことは、量的側面の情報コストが高くなり、有権者に負担を強いる。

 候補者の情報提供についても、課題が残る。第14回「有権者の地方選での投票行動はどう変わったか?~国民民主党の見方は……」で紹介した明るい選挙推進協会の意識調査では、「地方選挙で『候補者の人物や政見がよくわからないために、誰に投票したらよいか決めるのに困る』という声に対してそう感じるか」との設問に、46.9%(2019年)もが「感じたことがある」と回答している。「地方選挙候補者の情報不足はどの選挙か」との設問では、県(道・府)議選、次いで市(町・村)議選が多かった。

 マジカルナンバーの観点からも付言したい。マジカルナンバーとは、人が瞬間的に記憶できる情報の限界数を指す。その情報の塊は、7±2(ジョージ・ミラーが提唱)や4±1(ネルソン・コーワンが提唱)が限界とされ、飲食店のメニューを例としたマーケティングにも活用されている(口コミラボ編集部「マジカルナンバーとは?7や4が重要である理由・人が理解できる情報のかたまりの数」口コミラボ、2020年12月25日2023年2月6日閲覧)。

 とすれば、選挙での候補者数は、4±1を前提とすると、多くても5人が限界である。候補者数が選挙区定数M(magnitude)+1に収斂することを踏まえると、最大4人区という見方もできる。

 もう一つ、選挙区定数別の有効政党数を算出し、1人区から22人区へと順に見てみよう。有効政党数は、4~7人区にかけて増加し続けた後、一旦減少し、再び増減を繰り返す(岡野裕元、前掲書、p.187)。最初の増加は、6人区まで続けるパターンが多い(同上)。多元的代表の確保の観点も考えるのであれば、最大でも6人区の設定が妥当であり、ちょうどマジカルナンバー7±2の範囲内にも該当する。

 他方、1人区については、拙著でもその政党間競合の実態や推移を詳細に実証したが、競合がまともに成立していない。また、無投票選挙区の割合は、選挙区定数別に見ると、1人区で高い。今後も小選挙区の高止まり傾向が続くことを考えると、地方選挙の未来は悲観的にならざるを得ない。別の回で政党間競合について詳細に紹介したい。

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岡野裕元
筆者
岡野裕元(おかの・ひろもと)
一般財団法人行政管理研究センター研究員
肩書は原則、論座に執筆当時のもの
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