ライブでの「一体感」とライブ後の「誠実さ」
大多 ただ、ライブで『悲しみは雪のように』を歌った時の会場の反応は本当にすごいです。僕は3年ほど前に初めてライブを見させていただいたのですが、サビの「誰もが」の後「ウォウウォウ」と会場が一体になって声を合わせるのを聴いて感激しました。
ライブ後は、お礼を言うために楽屋に挨拶に行き、浜田さんと初対面しました。浜田さんには、僕のようなテレビマンが近づいてはいけない崇高な雰囲気があって、それまでお会いできていなかったんです。
いざ対面してみると、向こうから「大多さんお世話になりました。ありがとうございました」と言ってくれた。とても誠実な態度に、圧倒されました。握手をしたまま、5分ほど語り合ったのは最高の思い出です。
スージー 古くからのファンのなかには、'81年の旧バージョンのほうが好きだという人もいるでしょう。さらに大ヒットが「ハマショーらしくない」と言う人もいる。でも、この曲で多くの人に浜田省吾を知ってもらえたのは、喜ぶべきことだと思います。
大多 あの頃、テレビ業界では大学生を主人公にしたドラマはヒットしないと言われていました。それでも『愛という名のもとに』が多くの人に受け入れられたのは、間違いなく浜田さんのおかげだと思います。素晴らしい曲を提供してくれた浜田さんには、感謝しかありません。
星 この曲が発表から40年以上経っても愛され続けているのは、彼自身がずっと走り続けてきたことも大きいはずです。昨年末に浜田君は70歳になりましたが、年齢とともに低音の響きが良くなって、歌の説得力も増していると思います。『悲しみは雪のように』という歌は、さらに進化していくはずです。
星勝(ほし・かつ)/'47年、宮城県生まれ。元モップス。アレンジャーとして井上陽水『氷の世界』のほか、RCサクセション、安全地帯などの楽曲を手掛ける
大多亮(おおた・とおる)/'58年、東京都生まれ。フジテレビ専務取締役。'88年の『君の瞳をタイホする!』以降、「トレンディドラマ」というジャンルを確立、ヒットを連発した
スージー鈴木(スージー・すずき)/'66年、大阪府生まれ。音楽評論家、野球評論家として活躍。著書に『桑田佳祐論』『EPICソニーとその時代』など。bayfm『9の音粋』月曜DJ
「週刊現代」2023年2月11・18日合併号より