『悲しみは雪のように』の170万枚大ヒットは必然…浜田省吾の「歌唱力」は圧倒的だった

週刊現代 プロフィール

ヒット曲も他の曲も同じように「愛している」

スージー この曲以外もそうですが、彼の歌詞には寄り添うような「弱者の視点」があると思います。'90年代は「がんばろう系Jポップ」が支持され、頑張れば夢は叶うというメッセージが流行った。でも、それらの多くは上から目線で、どこか白々しい。

それに対し、浜田省吾は「俺だって弱い。つらいし泣くこともある。でも歯を食いしばって頑張っている。君だけじゃないんだ」と歌ってくれた。それが聴く者の共感を呼ぶんです。

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 結果的に『悲しみは雪のように』は170万枚を超えるヒットになりました。しかし浜田君はきわめて冷静で、「良かったですね」と淡々と言うだけだった。そして、これまでと変わらないように楽曲制作やライブに取り組み続けた。

スージー 売上枚数だけをみれば、「一発屋」扱いされてもおかしくないけれど、浜田省吾のことを『悲しみは雪のように』だけの歌手だと言う人はいません。それは、ひとつの曲が大ヒットになろうが、なるまいが、自分のスタイルを貫いているからだと思いますね。

 ライブで『悲しみは雪のように』をセットリストから外すことがあるのも、浜田君らしいですね。最近もライブに足を運んだんですが、一緒に行った友人は終了後に「『悲しみ』やりませんでしたね」と残念がっていました。

あの曲を期待しているファンが大勢いることは、本人も知っているはずです。それでも、ライブ全体のテーマに合わないと思ったら、あえてセットリストには入れないんです。彼にとっては楽曲の人気とは関係なく、すべての曲に思い入れがあり、等しく愛しているということです。そこも実に彼らしいよね。

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