『悲しみは雪のように』の170万枚大ヒットは必然…浜田省吾の「歌唱力」は圧倒的だった

不器用で実直な性格がファンを魅了してきた「ハマショー」。商売下手ともいえる彼が一躍国民的スターとなったのが、この『悲しみは雪のように』だった。イントロだけじゃない、この曲の魅力を3人が存分に語りつくす。前編記事『浜田省吾の『悲しみは雪のように』…ドラマ主題歌起用が当時“意外”だったワケ』に引き続き紹介する。

トレンディドラマの「都会の孤独」を描いた曲

 放送が始まってからドラマを見ましたが、狙い通り作品に馴染んでいると感じました。若い男女の恋愛を描いたトレンディドラマ的な内容については、僕自身には無縁な話だな、と思いましたけど(笑)。オープニング以外にも浜田君の曲が使われていたけれど、どれも使い方が非常に上手かった。大多さんの浜田君に対する愛情とリスペクトを感じましたね。

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スージー '92年版はドラマの内容も合わさって、'81年版以上に歌詞が迫ってくる感じがしました。僕は'90年に博報堂という広告代理店に入社し、広告業界で毎日へとへとになりながら働いていました。

バブルはすでに崩壊しており、ドラマでも倉田篤(チョロ)という登場人物が株取引にからむ不祥事が原因で自殺するなど、身につまされる思いをしたものです。そんな物語と、青春の蹉跌を表現した歌詞が完璧に重なっていました。

大多 サビの歌詞は、僕らが描きたかったドラマの世界そのものです。

トレンディドラマはキラキラした都会を舞台にしているけれど、登場人物は地方から砂漠のような東京に出てきた若者たちがほとんどです。そこで恋をして、挫折を味わう。いわば「都会の孤独」を描くトレンディドラマの世界に、浜田さんの歌詞はぴったりでした。

 

 サビの「誰もが~」からが好きですが、特にその後に入る、歌詞カードには書かれていない「ウォウウォウ」という叫びが圧巻! ここが浜田君の凄いところです。衝動的に叫んでいるわけではなく、感情を乗せながらも音楽として成立させている。簡単なようで、実に高度なテクニックですよ。

スージー 本当にそうですね。日本ではビブラートのきいた声を「歌が上手い」と言いがちで、浜田省吾は歌唱力で語られることが少ないと思います。でも、僕はそれが不満なんです。浜田さんのボーカルはもっと評価されるべきです。

大多 状況や設定を説明しすぎない歌詞になっていたことも、ドラマの主題歌として輝いた理由のひとつだと思います。たとえば2番の頭の歌詞。

君が誰なのかも、歌っている自分と相手はどんな関係なのかも、ハッキリしない。でも、そこがいいんです。抽象的だからこそ、『愛という名のもとに』というドラマの登場人物の誰を歌詞に当てはめても違和感がない。

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