メジロ(読み)めじろ(英語表記)white-eye

日本大百科全書(ニッポニカ)「メジロ」の解説

メジロ
めじろ / 眼白
white-eye

広義には鳥綱スズメ目メジロ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。種としてのメジロZosterops japonica全長12センチメートルの小形の鳥で、背面は黄緑色、のどは黄色、腹面は白くわきが褐色をしている。目を取り巻く白いリングが目だつ。日本からフィリピンに至る島々に分布している。日本ではほぼ全土にみられ、周辺の島々にもいる留鳥。小笠原(おがさわら)諸島のものは、伊豆諸島のものと硫黄(いおう)島のものが人間により導入され、それが逃げ出して増えたものである。広葉樹林や混合林にすんでいるが、とくに常緑広葉樹林に多い。また日本では、南西部周辺の島々の林に高密度にすんでいる。樹木小枝や葉の間を活発に行動し小さい昆虫をとって食べるが、(くちばし)は細くとがり、舌の先がブラシ状になっていて、果実の果汁や花蜜(かみつ)を吸い取るのに適している。サクラやウメの花盛りにはたいていきているし、ツバキの花蜜に好んで集まる。冬は小群で騒がしく鳴き交わしながら過ごしており、シジュウカラ科の鳥との混群の中にも入っている。メジロの群れのなかには順位制が知られている。繁殖期にはつがいになり、強い縄張り性を示して、雄は急ピッチのさえずりを盛んにする。巣は樹木の小枝の間にクモの糸でつるすようにつくる。古来よく知られた飼い鳥で、すり餌(え)で飼う。雄のさえずりをめでて、飼っているメジロの鳴き合わせの競技が行われている。

 メジロ科Zosteropidaeはサハラ砂漠以南のアフリカ、インド、東南アジア、南太平洋の島々を経てニュージーランドからオーストラリアにかけて分布しており、北は中国東北部まで至る。85種ほど知られているが、すべて7~14センチメートルの小さい鳥で、いずれも舌の先がブラシ状になっており、果汁や花蜜食に適している。比較的多様化が少なく、どれもよく似ているが、島々によって多くの亜種、種に分かれている。

[中村登流]

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野生のメジロをとり、籠(かご)に入れて飼育する風習が、関東地方周辺から沖縄県にかけての農村にあった。鳴き声を競う鳴き合わせも行われ、鹿児島県ではハナシ(花吸)とよばれ、品評会を開いた土地もあり、その評価によって売買されたりした。捕獲にはおとり籠を用い、おとりを貸し借りする習慣もあった。籠はすべて自製で、竹を削ってつくる。目白目白押しも俳諧(はいかい)の秋の季語。

[小島瓔


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「メジロ」の解説

メジロ

(1) Zosterops japonicus; Japanese white-eye スズメ目メジロ科。全長 12cm。羽色は上面黄緑色,下面が黄白色,脇は淡褐色。名が示すように眼のまわりに白色のがある。日本,朝鮮半島南部,タイワン(台湾)中国東部など東アジア南部から,フィリピンインドシナ半島一帯に繁殖分布する。日本では北海道以南の各地に繁殖しているが,北海道での繁殖数は非常に少ない。平地から山地疎林に生息し,北方で繁殖するものは南方に渡って越冬する。市街地でも樹木があれば生息する。昆虫類も食べるが,花蜜や果汁を好む。非繁殖期は小群になり,夜間は一つの枝に並んで留まる。「目白押し」ということばは,その押し合うように留まる様子に由来する。
(2) Zosteropidae; white-eyes スズメ目メジロ科の鳥の総称。128種からなる。ほかの科から移されたカンムリチメドリ属 YuhinaZosterornisSterrhoptilus などの属の鳥は和名にメジロがつかない。全長 10~15cm。羽色は上面が黄緑色か褐色を帯びたオリーブ色,下面が白または黄白色で,脇は紫褐色を帯びるものが多い。大部分の種は眼のまわりに白色の環がある。灰色,濃褐色の羽色をもつ種や,黄色の眉斑のある種もいる。は細く,舌の先端がブラシ状になっていて,花蜜を食べるのに適している。アフリカや,ヒマラヤ山脈から南アジア,東アジア,オーストラリア温帯から熱帯に分布する。また,インド洋や西太平洋の島々にも生息する。大部分の種が留鳥で,非繁殖期には小群になって動き回る。明るい疎林に生息し,液果や花蜜,昆虫類,クモ類などを食べる。

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