これらのやりとりが持つ意味
確かに時間の節約にはなった。通常、インターネット上でプログラミングをする際には、コーディングとデバッグ環境の間を頻繁に行き来しつつ、何度もウェブを検索して少しずつ手がかりをたどり、掲示板の議論やコメントを読んでいくことになる。
必ずしもそれが悪いことだと言っているわけではない。その過程では非常に得がたい情報が得られることもあるし、コメントの中には多くのエピソードが埋もれている。チャットボットからはそうしたものは絶対に得られない。しかしそれは、急いでいるときや重要な締め切りに追われているときには、効率的な時間の使い方とは言い難いことも事実だ。ChatGPTにコーディングに関する質問をすることは、非常に効率的であることが分かった。
どんなAIにも言えることだが、AIの知識には穴があり、まったく間違った答えが返ってくる可能性もあることは認識しておく必要がある。しかし、ChatGPTを手軽なツールとして仕事道具の1つに加えておくのは、非常に有効だと言えるだろう。
ただ、筆者は、ChatGPTはその知識をどこから得たのかと考えてしまった。extractやcreate_functionについて非常に詳しく説明した記事を書いたライターがいるのだろうか。ライターは出典として示されることなく、金銭的な見返りもないまま、記事の内容がChatGPTの回答として「紡がれている」のだろうか。その回答には、誰かが苦労して得た知識がその人の功績として明示されないまま情報源として使われているのだろうか。
それについてはとても心配になる。少なくともGoogle検索では、書き手が情報を共有する見返りとして、その記事がトラフィックを得るチャンスがある。しかし、ChatGPTのようなチャットボットの場合、元になった情報の文脈は失われてしまう。確かに筆者は、すぐに答えが手に入るというメリットを得ることができた。しかしそれによって、どこかの誰かが、自分の仕事の成果が評価される機会を失ってしまったのではないだろうか。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。