親のストレスが子孫に遺伝 理研、ハエで仕組み解明
理化学研究所は、親が受けたストレスが子供に遺伝する仕組みの一端を解明した。高熱などのストレスを受けると、たんぱく質の作用で遺伝子の働き方が変わり、その変化が子孫まで伝わることをハエで確かめた。ストレス関連疾患と遺伝との関係を解き明かす手掛かりになる成果。詳細は24日、米科学誌セルに掲載される。
親のストレスが子孫に影響を及ぼす現象は、植物を中心にいくつかの例が知られるが、その仕組みはほとんど分かっていない。
理研の石井俊輔主任研究員らは、DNA(デオキシリボ核酸)に結合して遺伝子の働きを調節するたんぱく質「ATF-2」に注目。ATF-2はショウジョウバエの目の色の決定に関わり、ATF-2がDNAから外れると目の色が白から赤に変わる。
ハエの卵を高熱にさらしたり、幼虫に塩分の強いエサを与えたりしてストレスを加えると、ATF-2がDNAから外れ、目の色が赤くなることがわかった。さらにこのハエの子孫でも目の色が赤くなっていた。2世代続けてストレスを与えた場合は、その後3世代にわたって目の色が変わった。
DNAを作る塩基の配列は変わらず、ATF-2による遺伝子の働き方の変化が何らかの仕組みで子孫に伝わっていると考えられる。マウスでもATF-2に似たDNA結合たんぱく質が知られ、ヒトを含めた哺乳類にも同じ仕組みがある可能性がある。今後、より詳しい仕組みの解明を目指す。