相次ぐ異常気象…マンション住人を襲う「設備トラブル」の悲劇
幻冬舎ゴールドオンライン / 2023年2月19日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
バイク置き場の不足や駐車場代の問題、ゲリラ豪雨による駐車場の冠水といった自然災害、インターネット接続の不具合など、複数の住人が生活する集合住宅にはさまざまなリスクが存在しています。では、こうした諸問題にはどのように向き合っていけば良いのでしょうか。マンショントレンド評論家として数々のメディアで発信を行う日下部理絵氏が、事例を交えて解説します。
全国のマンションで見られる「バイク置場不足」
【事例:空き駐車場問題に理事長として奮闘】
・物件概要…3LDK 81.08m2/10階建て4階/築32年54戸/最寄り駅 徒歩6分 ・資金概要…住宅ローン完済済み ・家族構成…夫66歳、妻62歳の2人暮らし、子供は独立
・あらすじ……定年退職した陣内さん(仮名)は、自身の住むマンション管理組合の理事長に就任。すると、住民の「車離れ」などさまざまな理由から駐車場には空きが目立ち、それにより管理組合が「破綻寸前」に陥っていたことが明らかになった。
というのも、住民の駐車場使用料が管理費の収入源のひとつとなっていたため、利用率低下がその収支に大ダメージを与えていたのだ。
そこで、理事長になった陣内さん率いる管理組合は住民にアンケートを実施。その結果をもとに、貼り紙や空き情報の「見える化」、外部の駐車場使用者への声掛けなど数々の改善策を行い、さらに人気のない3段の機械式駐車場を思い切って2段に交換することで、長きにわたる「空き駐車場問題」を解決に導いた。
全国のマンションでバイク置場の不足もまた深刻である。近年の新築マンションでは、バイク置場が設置されているが、少し前まではバイク置場が設置されていないマンションが多かったからだ。
停めるところがなくエントランスに停めたら、出入りしづらく景観が乱れる、駐輪場の空きスペースに停めたら子供がケガをしそうになったなどのトラブルに発展しているのをよく見かける。
また、車の駐車場や駐輪場は使用料を支払っているのに、なぜバイクは無料なのか、無断駐車へのクレームも多い。
バイク所有者も外部にバイク置場を探そうにもバイク用の月極駐車場は少ない。マンションとしても時代にあわせて、「バイク置場」の新設を検討すべきであろう。
車の駐車場や駐輪場の空きスペース、陣内さんのマンションのように、機械式駐車場であれば固定装置をつけて転用したり、受水槽を撤去したスペース、広い通路、植栽の一部などが活用されるケースもある。くれぐれも避難通路の有効幅など消防法に配慮しながら検討したい。
またマンションの建築許可条件に、「緑地面積の確保」がある場合も注意だ。敷地面積の数パーセントの確保を義務付けられることがあり、勝手に変更できない。立ち枯れした樹木の伐採撤去などをし、植栽の緑地面積を変更する場合は気をつけたい。
なお、平面式とピット式3段の上段は、出庫のしやすさ、車高に融通がきく点から人気が高い。
中段は出し入れの手間はあるものの地下に格納されるため、直射日光で車内が暑くなりにくい、雨露が直接あたらない、塗装やカバー等の劣化がしにくい、防犯上有利などの理由から、主に週末などに使用する、乗る頻度が少ない人に人気がある。
ただし、機械式駐車場で屋根がないタイプだと、上段パレットの隙間から雨やホコリ、上段車両の泥やオイル、ブレーキダストなどが垂れてくる等のデメリットがある。
人気が高い平面式とピット式3段の上段でも、直射日光や雨露、防犯上の不安やイタズラ、子供遊びのボールが当たるなどのデメリットがある。
ピット式3段の下段は、一般的に使用料が安いのがメリットだが、出庫に最も時間がかかり、ゲリラ豪雨などで冠水リスクがある。
なお、屋外にある駐車場や駐輪場に屋根の設置を検討する際も注意が必要だ。屋根を設けることが、建築面積や床面積にカウントされ、増築行為になり役所への申請が必要な地域があるためだ。
豪雨の際に重要な「インターロック解除キー」
2008年には流行語大賞のトップテンにもなっていたが、ここ10年ほど毎年のように、局地的な集中豪雨(ゲリラ豪雨)が全国各地で発生し、管理組合を悩ませている。
すぐにできる対策として機械式駐車場の使用者向けに、一斉にパレットが上昇し冠水リスクを軽減する、「インターロック解除キー」の操作方法の勉強会を実施するのは有効である。
もう10年以上前の話になるが、あるマンションで、インターロック解除キーの存在を住民が知らず、夜中に突然ふりだしたゲリラ豪雨のなか、機械式駐車場と車両が冠水するのを住民がただじっと見守っていただけということがあった。
結果として機械式駐車場は壊れ、異様な臭いのする車両がたくさん廃車されるという悲惨な状況になった。
もちろん、24時間緊急対応する設備業者や機械式駐車場のメーカーに現場にくるよう連絡し業者も向かってはいたが、ゲリラ豪雨が起こるような状況では街の道路も冠水し、迂回などして思うように現場にいけないことも多い。
その時もいつもの何倍もの時間を要していたし、他のマンションでも同様の呼び出しがあることも多い。
せめて気が付いた住民が、インターロック解除キーの存在を知っていれば、土嚢(どのう)やゴミ袋などの代用品を積んでいれば結果は違ったかもしれない。
解除キーを「ぬいぐるみ」に入れたワケ
そのマンションでは、事故後、管理事務室内の見えやすい場所にぬいぐるみを置きその中にインターロック解除キーを入れる運用をしている。解除方法は念のため、写真で手順を写しラミネート加工したものを管理事務室内に掲示してある。
なぜぬいぐるみなのかといえば、管理事務室のキーボックスの中では、鍵の本数がありすぎ(一般的に100本前後ある)、あわてて探すとわからないこともあるため、住民のアイデアでそのような運用になったという。また事故後、管理組合で土や砂が不要な水で膨らむ土嚢を購入し保管している。
おすすめしたい「機械保険」への加入
おすすめしたいのが、「機械保険」への加入だ。
管理組合では一般的に共用部分で起こるさまざまな事故に対応する「マンション総合保険」に加入していることが多いが、保険料が上がるため、水災害は不担保としていることも多い。
そもそも水災害は支払い条件が厳しい。河川の氾濫や高潮だけでなく、ゲリラ豪雨の損害も対象とされるが、床上もしくは地盤面より45cmを超える浸水などの条件がある。
もし水災害を担保する契約にしていても、今回の事例のように、地下ピットのある機械式駐車場で被害があった場合、地下で起こっていることなので支払条件から外れてしまう。
そのため、機械式駐車場を専用とした機械保険に追加で加入することで、機械式駐車場の水災害はカバーできることが多い。
実際に先ほどの被害に遭った管理組合では、事故後、年間約5万円で別途、機械保険に加入した。当時としては別途加入するケースは少なく、マンション総合保険の会社も含め複数社に掛け合い、ようやく加入できた保険(マンション総合保険とは別の保険会社)であった。
最近、そのマンションではまたゲリラ豪雨による冠水に見舞われ、機械式駐車場が故障した。さすがに車両の冠水被害はなかったが、その故障に対して1000万円の保険金がおりた。10年間で約50万円支払いはしているが、まさに備えあれば憂いなしとはこのことであろう。
さらにこのマンションでは、以前から地下の下段を使うことを怖がる人が多く空きが続いていたが、時代の流れでより空き駐車場が増えたことにより、撤去し埋め戻しを検討しており、数ヵ月先の通常総会に議題としてかける矢先の再冠水であった。
そのため、奇しくもこの保険金を撤去と埋め戻し費用の一部にあてることができた。なお、機械保険もさまざまな条件があるので比較検討すること、個々の車両保険への呼びかけも忘れずに行うようにしたい。
苦情が寄せられがちな「インターネット接続」問題
事例でも、苦情が寄せられているマンションのインターネット接続だが、陣内さんのマンションでは、管理組合の一括契約タイプである。
このタイプは、新築時に決められた事業者のインターネット回線が引かれ、プロバイダーの選択はできない。各戸で使用の有無にかかわらず、毎月戸数×使用料が請求され管理組合で一括払いが多い。
その費用は管理費会計、つまり管理費の中から負担していたり、別途インターネット使用料として請求されていることが多い。全戸で契約するため、使用料が安いのが特徴である。
しかし、工事不要で自宅のコンセントに差し込むだけで使えるホームルーターや、小型で持ち運びもできるポケット型Wi-Fiなどの普及、そもそも自宅ではスマホやタブレットで足りるため、インターネットは使用しないなど、使用していない住戸から不満の声があがることがある。
実際に一括契約する10棟近くのマンションでアンケートをとったことがあるのだが、使用率は平均すると60%前後、低いマンションでは30%台というところもあった。
意見としては回線の速度が遅い、ドメインの関係でアドレスの@アットマーク以降の表記によってマンション名が特定されるのが嫌などという意見があがった。
一方で在宅ワークをしている人からは、仕事でこのアドレスを使用しているため、一括契約を解除されると困るという意見もある。
管理組合で一括契約している場合は、インターネットの使用状況について一度アンケートをとることをおすすめしたい。
じつは使用していない住戸が多く無駄な費用負担をしている可能性もある。また管理組合とインターネット事業者との契約書もよく確認したい。契約期間の縛りや違約金などがある場合もある。
なお、マンションには、集まって住むからこそ豪華な施設や設備などを使用できる、いわばサブスクリプション的な要素があるが、駐車場にしろインターネットにしろ、使用していない住民からすると不満が内在しやすい。
しかし、それら施設や設備も含めて、あなたのマンションなのである。
部屋の中ばかりにとらわれず、マンション全体に使用頻度の低い施設や設備はないか、「金食い虫」はないか、それはマンションの売り(魅力)なのかよく確認すべきだ。
使用頻度の低い施設や設備があるなら、陣内さんのマンションのように改修や撤去なども有効である。このようになるべく管理費の値上げはせずに、管理の質を下げない範囲で、経費を削減するというのも収支バランスを解決するひとつの方法である。
日下部 理絵
マンショントレンド評論家
オフィス・日下部 代表
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