「最低賃金引き上げ=中小企業倒産」の図式が神話に過ぎない理由
9月26日(木)6時0分 ダイヤモンドオンライン
最低賃金引き上げの議論で必ず出る「中小企業の倒産誘発論」だが、実はどこにもエビデンスはない Photo:PIXTA
最低賃金引き上げを巡る論争が本格化し、様々な意見が飛び交っている。相変わらず「中小企業の経営が厳しくなる」と難色を示す人も多いが、実はイギリスでは最低賃金を引き上げても廃業率は上がらず、むしろ労働生産性が上がったとする調査結果が明らかになっている。(ノンフィクションライター 窪田順生)
最低賃金労働者は
「無能」なのか?
いよいよ「最低賃金引き上げ」を巡る論争が本格化してきた。
さまざまな専門家の方がそれぞれの立場で意見をぶつけ合うということは、社会にとっても良いことなので、ぜひ侃々諤々でやっていただきたいところだが、頭の上をビュンビュンと飛び交う意見の中には、思わず二度見してしまうようなダイナミックなものも散見される。
例えば、“最低賃金引き上げ慎重派”の、とある著名な評論家の方。ざっくりまとめると、こんなことをおっしゃっていたのだ。
最低賃金で働いている人というのは、スキルが低いので一度職を失うと再就職ができない。最低賃金を上げることは結果として、こういう人を苦しめることになる。だから、最低賃金を引き上げて中小企業を倒産させるような愚かなことはするな、生産性向上のためには、低スキル労働者の教育に力を入れるべきだ――。
「ん?」と引っかかった人も多いのではないか。そう、確か日本は「深刻な人手不足」だったはずなのだ。コンビニはバイト確保ができず24時間営業もままならない。物流も深刻なドライバー不足で現場が疲弊している。建築や介護の現場にいたっては、外国人労働者に頼らないと回らない――という話になっていなかったか。
一方、平成27年の内閣府の資料には「最低賃金程度の時給で働く労働者は300万~500万人程度」とあり、もっと多いという指摘もある。
つまり、この専門家の方は、日本人労働者の数%を「人手不足でもう限界だ!」と悲鳴を上げる事業者でさえも採用を見送るほど、「使えない人材」だとおっしゃっているのだ。
そんな考えをベースにして、最低賃金の引き上げは慎重にすべきと主張するというのは、中小企業はどこにも行くあてのない無能の人を雇ってあげている篤志家なんだから、「時給1000円」なんて無理難題を押し付けず、自分たちのペースでのんびりやらせてやれよ、と言わんばかりなのだ。
もちろん、立派な専門家センセイなので当然、我々素人には計り知れない深いお考えがあるのかもしれないが、素直に受け取れば「労働者ディスり」にしか聞こえない。なかなかシビれる発言ではある。
関連記事(外部サイト)
注目されているトピックス
-
「エアコンの調子が悪くて大変」にはどう返すべきか…なぜか妻を怒らせてしまう夫が勘違いしていること
感じがいい人は何が違うのか。セブン‐イレブン限定書籍『感じのいい人、悪い人人間関係がうまくいく「話す技術」』を上梓した心理カウンセラーの五百田(いおた)達成さん…
2月20日(月)15時15分 プレジデント社
-
20年後に"食える子"の親は今何をしているか…経営学者が示す食いっぱぐれないための"最低限のスキル"
目まぐるしく変わる社会の中で子供が自立し稼げるようになるために、親はどんな力を身につけさせたらいいのか。『プレジデントFamily』編集部が世界のビジネスを研究…
2月20日(月)14時15分 プレジデント社
-
こんなに暴落したのだから、そろそろ買いのはずだ…投資で損をする人たちが誤解している「お金以前」の常識
投資で資産を失ってしまう人の特徴とは何か。ファンドマネージャーの土屋剛俊さんは「キャベツを10万円で買う人はいない。ところが株になると、適正価格を調べずに『言い…
2月20日(月)14時15分 プレジデント社
-
全機体の3分の2に墜落リスクがある…ロシア人が飛行機での移動を極力避けるようになっているワケ
ロシア機の墜落事故が急増しているロシアの航空業界に深刻な異変が起きている。ある機では離陸後の上昇中にドアが開き、乗客の荷物が機外へと消えた。また、ある軍用機は特…
2月20日(月)13時15分 プレジデント社
-
「いい」「すごい」という言葉が文章をダメにする…うまい文章を書くために必要な「形容詞の知識」とは
うまい文章を書くには、どうすればいいのか。ブックライターの上阪徹さんは「『いい』『すごい』といった形容詞を使うと、文章がダメになる。「事実」「数字」「エピソード…
2月20日(月)13時15分 プレジデント社
-
3月10日(金)東京ミッドタウン八重洲に「GELATO PIQUE HOMME(ジェラート ピケ オム)」初の単独店がオープン!
三井不動産株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社:菰田正信)は、2023年3月10日(金)に八重洲二丁目北地区市街地再開発組合の一員として開発推進する商業施…
2月20日(月)13時0分 PR TIMES STORY
-
発売直前「考え直し!」の指令で消えた幻のキャラ公開…カントリーマアムを"チョコまみれ"にした男たちの奮闘
「カントリーマアムチョコまみれ」は全国発売から2年がたち、好調に売り上げを伸ばしている。しかし、現在のパッケージやキャラクターは発売前の直前2週間で一から考え直…
2月20日(月)11時15分 プレジデント社
-
致死量は食塩ひとつまみ以下、原料は中国産…アメリカで銃よりも若者を殺している"史上最悪の麻薬"の怖さ
アメリカで、違法に製造された「フェンタニル」と呼ばれる薬物の被害が広がっている。国際ジャーナリストの矢部武さんは「年間7万人がフェンタニルの摂取によって死亡して…
2月20日(月)11時15分 プレジデント社






