秋月電子で販売している、10W+10WステレオD級アンプモジュール(USBI/F付き をDACとして使用しました。
因みに、何かしらの改造が必要です。改造しないと、ステレオミニジャックのみから出力できますが、音量が小さいです。
改造の方向性として、
D級アンプのTA1101Bのみを使用する為の改造か、
DACのUAC3552Aのみを使用する為の改造か、
TA1101BとUAC3552Aの両方を使用する為の改造が考えられます。
今回は、DACのUAC3552Aのみ使用する方法を考えます。UAC3552Aの出力がデータシートによると12mW(32Ω時)ですが、結局外付けアンプを追加しました。外付けアンプを付けなくても音は出ますので、利便性を求める方や手持ちのヘッドホンアンプを使用する場合は、ゲイン調整だけでいいかと思います。
D級アンプのTA1101Bを使用したい方は後述のリンク集を参照してください。
ゲインの調整
冒頭で述べた通り、改造しなければステレオミニジャックのみから出力できますが、音量が小さいです。
UAC3552Aのデータシート (左の図)を見るとUAC3552Aにはローパスフィルターが実装されていることが分かります。右の図は、サンプル回路図でのローパスフィルター部分になります。ローパスフィルターはUAC3552Aの内蔵のオペアンプで構成されています。
オペアンプのローパスフィルタの遮断周波数(Hz)は、
で表す事が出来ます(R2をFOPL(R)とFINL(R)の間にある抵抗の15KΩとする)。
従って、入力抵抗(FOUTL(R)とFOPL(R)の間にある抵抗)を変更しても、遮断周波数に全く影響しないので、入力抵抗(15kΩ)を交換してゲイン(利得)調整する事が出来ます。これは、コンデンサー(330p)を無視すれば一般的なオペアンプの 反転増幅回路と見なすことができるからです。
出力を2倍にしたいならば、入力抵抗(15kΩ)を7.5kΩに
出力を3倍にしたいならば、入力抵抗(15kΩ)を5kΩに
出力を約4倍にしたいならば、入力抵抗(15kΩ)を3.6KΩに
赤色で囲んでいるチップ抵抗(入力抵抗)を交換します。5kΩ(ゲイン3倍)がお勧めです。
上の写真では、すでにチップ(抵抗5kΩ(ゲイン3倍))を交換してあります。
ヘッドホンアンプを外付けしない場合はこれで改造は終わりです。あとは、三端子レギュレーター端子を切断して、そこにバスパワーの5Vを接続してください(下の写真を参照)。USB端子(D+、D-)とGNDは付属の実体配線図を参考にしてください。
ヘッドホンアンプの外付け
UAC3552Aの最大出力がデータシートによると12mW(32Ω時)です。このままでも実用上差し支えありませんが、バスパワーで動作するヘッドホンアンプを外付けしました。ところで、オペアンプを使用する場合は両電源を使用しますが、DACと同じ電源で仮想GNDを作ることはできません。これは、DACのGNDと仮想GNDが構造上ショートしているためです。そこで、チャージポンプIC LT1054を使用すれば負電源ができ、先ほどの問題は発生しません。ただ秋月電子で400円もするので、ほかの方法を考えます。(後で分かったことですが、チャージポンプIC ICL7660のセカンドソース品TJ7660が秋月で60円で販売されているようです。この価格なら、オペアンプ式のアンプでもいいかと思います。)
今回は、単電源式のアンプをディスクリート設計することにします。回路図は、誠文堂新光社から出版された 奥沢 清吉/奥沢 煕【著】「はじめてトランジスター回路を設計する本」とMini Watters project を参考に設計しました。
差動式アンプではありませんので、ペア選別が不要です。「はじめてトランジスター回路を設計する本」では、Tr3のベースの付近にブートトラップ用*1の電解コンデンサーがありましたが、音質劣化を招くため*2設置しませんでした。トランジスターは、2N3904(NPN) 2N3906(PNP)を使用していますが、2SC1815(NPN) 2SA1015(PNP)を代替使用しても構いません。
電源は利便性を考えヘッドホンアンプはバスパワー(5V)で動作するようにしました。電源回路は、ノイズ対策としてLCフィルターと10Ωの抵抗を使いました。LCフィルターはL-chとR-ch共通ですが、R10Ωの抵抗はL-chとR-chそれぞれ独立していますので留意してください。Tr1のバイアス抵抗の近くに0.1uFのコンデンサーがありますが、ノイズ対策用のバイパスコンデンサーです。なるべくバイアス抵抗の近くにバイパスコンデンサーを配置してください。
なお、ヘッドホンアンプ部分の電源を外部電源にするとノイズが激減すると思います。因みにこのアンプの利得は約3倍です。1kΩと250Ωの並列抵抗は200Ω(200=1/(1/1000+1/250))で、gain=1+(200/100)=3 [倍]となります。
回路図中のUAC3552A analog out は下の図のL-ch out put、R-ch out put に相当します。L-ch out put、R-ch out put を外付けアンプの入力に接続してください。DACの電源は三端子レギュレーター端子を切断して、そこにバスパワーの5Vを接続してください。USB端子(D+、D-)とGNDは付属の実体配線図を参考にしてください。
UAC3552Aは24bit48kHzで一応ハイレゾということもあって、音質は600円のDACにしてはなかなかの高音質だと思います。
リンク集
秋月の10W+10WステレオD級アンプモジュール(USB I/F付き)を活用
D級アンプを使用するための基本的な改造方法を詳細な図解で紹介。秋月のモジュールを改造する場合は必ず閲覧したほうが良い。
USB接続ヘッドフォーンアンプを作ってみる - Biglobe
電源周りの回路、DAC(UAC3552A)周りの回路が詳細に紹介されている。また、opアンプを使用た外付けアンプの改造も併せて紹介してある。
秋月のモジュールをアンプとdacの両方が使用できるように改造した記事。
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TA1101Bにショットキーバリアダイオードを追加し安定性を向上させる改造や、TA1101B UAC3552A の利得アップの改造。それに伴う改造によりLPFの遮断周波数が変わるため、コンデンサーの変更も併せて変更している。
秋月USBオーディオ(D級アンプモジュール) : 趣味の覚書(Junk_Audio)
秋月の10W+10WステレオD級アンプモジュールの部分的な回路図が掲載されている。
バスパワーでTA1101BとUAC3552Aの両方を使用した事例。
秋月TA1101B D級アンプ基板の改造 その1 : TYO.STDのおきらく写真生活
TA1101B D級アンプのみを使用した事例。
USBアンプモジュール-喪失のメロディー : すみません、取り乱しました。