ホロライブを運営するカバーの決算が公開されました。
2022年度の決算で見ると売り上げについてはえにからとカバーはほぼ同じくらい「に見える」一方で、利益を見るとえにから側がカバーの2倍の営業利益となっています。また、2023年度業績予想では売上でもえにから側が2割上回り、カバーの4倍の営業利益予想を出しています。
急に差が開いていてびっくりしたので、いろいろと比較してみたいと思います
①こちらがホロライブのカバー。
②こちらがにじさんじのえにから。
これは2022年度の決算までの業績ですが、2023年度はさらに差が開いています。
似たようなビジネスをやっている二社ですが、細かく見ればビジネスモデルに差があることがわかります。
まずYouTubeの再生数・再生時間に関する数字比較
上位だけ見ていると圧倒的にホロライブの方が上だが、トータルではにじさんじのほうが上?
明確に比較できる資料はなかったのですが、少なくとも国内VTuberの総再生時間を比較すると再生時間ではにじさんじのほうが上となっています。
https://tyn-imarket.com/pdf/2022/6/8/140120220607572910
※この資料の数値はお互いに「EN」が含まれていないので注意が必要です。
より具体的な資料がある人がいたら教えてください。
売り上げに関する比較
にじさんじはコマース事業の売り上げが圧倒的に強いのに対してホロライブはまだスパチャ依存が強い?
この資料、にじさんじENがスパチャもコマースも一緒くたにしているのでわかりにくいのですが図で比較するとにじさんじよりカバーの方がスパチャの割合が大きいように見えますね。
スパチャはGoogleが35%持って行ってしまうので実際のファンが使ったお金が大きくロスしてしまいます。にじさんじもホロライブも、お互い別の道を模索している最中でしょう。
ちなみに公式オンラインショップの開始タイミングはANYCOLORの方がまるまる1年早かったようです。
ANYCOLOR:2020年9月 「にじさんじ」専用のオンラインショップである「にじさんじオフィシャルストア」を開設
カバー:2021年9月 公式オンラインショップ「hololive production OFFICIAL SHOP」の運用を開始
現時点でにじさんじストアの会員数はすでに70万人を突破しています。ホロライブの方はどのくらいなんでしょうね(資料では非開示でした)
にじさんじの公式ショップの展開が早かったのはソニーMに運営を委託したからで、カバーは自社ECを構築中だがキャパシティ的にはまだ改善の余地あり?
にじさんじはBOOTHを利用する以外はソニーミュージックに委託する形での音楽やボイス販売が盛んなようです。
cocotame.jp
グッズの売り上げに対して仕入れ金額はわずか23%。原価厨的なことを言うととんでもなくマージンが取れていることになりますね。手間をかけずにどんどん安価で大量生産が可能なデジタルコンテンツを提供している、と。
一方、ホロライブは公式オンラインショップについては自社ECを目指しているようです。(決済プラットフォームにShopifyを利用)
公式ショップのHPを見比べると一目瞭然ですが特に音楽やボイスなどのデジタルコンテンツはあまり数が出ていない感じですが、その代わり、イベント時に高単価のグッズを受注生産で販売することが多いようです。
結果として、売り上げに対する仕入れ額の割合は31%と少し高くなっています。なおユーザーによると受注生産ということもあり「注文してから商品が届くまでの期間が長い」という特徴があるようです。(受注生産品以外も遅いという意見もあるらしいですが…)
ホロライブはECの「受注生産」が多く前受金がたまっている(期ズレ)
ホロライブは45億円もの前受け金が負債として計上されています。これは当然売上として計上されていません。つまり期ズレですね。
こちらが売り上げ計上されれば来期は一気に売り上げが伸びることになると思われます。
一方にじさんじは前受け金は「その他」で処理できてしまうくらい少ない。デジタルコンテンツ販売が主体だからでしょう。(これは間違い)
えにからはソニーMにECの委託をしているため商品を納品した際は、その計上は資産の「売掛金」に上がります。(前受け金はソニーM側で発生している)
2023年度の業績予想を比較してみると、ホロライブの方は2023年度は売り上げが60億伸びる想定になっていますが、2023年度も同じように前受け金を多く積むことになってると思うので、サプライチェーンが効率化されればいつか売り上げが前倒しになってサプライズ上方修正とかあるかもしれませんね。
なお、にじさんじの2023年度売上予想は225億円、営業利益は77億円となっています。
にじさんじは「金を出す女性ファン」がすごく多い
VTuber業界は全く知らない私でも、ホロライブは今の時点でメインが女性ライバーしかいないということは知ってる。(ホロスターズはカバー社全体のシェアでいうとわずか4%程度)
別に女性ライバーだから男性ファンしかいないというつもりはないけど、それでも男性ファンの方が多く女性ファン比率は低いと思う。
一方でにじさんじは、少なくとも金を出すファンに限って言えば圧倒的に女性ファンが多いのですね。
本当に不思議なんですが、女性は男性と違って推しのためなら金を惜しまないという人の割合が明らかに高い。ホロライブはこれからグッズ展開を進めるにしても女性ファンの掘り起こしをどうするのだろうって思ってます。
利益率に関する比較
とはいえ、2022年時点での売り上げ自体はにじさんじとホロライブはだいたい同じ。また、売り上げから「売上原価」を引いた粗利の段階ではにじさんじとホロライブはほとんど同じです。
むしろホロライブの方が抱えてるVTuberの数は少ないです。
なのに、なんでこんなに利益率に差が出るのでしょう?
VTuber一人当たりの売り上げ自体はホロライブが圧倒的に上回る
一人当たりの売り上げを比較してみた結果がこちらです。
明らかにホロライブメンバーの方が強いですよね。
つまり一人一人のメンバーを同じコストで管理できるならホロライブの方が儲かってるはずなのです。
その分コストがかかっているということなのですが……その内訳をみるとホロライブのことが好きになってきました。ホロライブはめっちゃ応援したい。
演者への配分がにじさんじより大きい?
どのくらいのペースで清算しているかはわかりませんが、演者報酬の買掛金が4300万というのは明らかににじさんじより多いです。にじさんじはその他事業者などへの分すべて含めて6000万だったので、倍くらいあるんじゃないでしょうか。
もともとはホロライブは収益の多くを演者と配分するという話をしていたそうなので、今でもにじさんじより多く支払ってる可能性はあります。
にじさんじはスタジオが賃借なのに対し、ホロライブはスタジオは直接保有&ガチの投資(27億円)をしている
今までの面積が800㎡だったのに今度はその6倍以上の4900㎡!本格的なモーションキャプチャーのために内部設備もガッツリ投資してます。
新スタジオだけで内部設備と合わせて27.5億円の投資額となっています。にじさんじとは金のかけ方が全然違いますね!
news.yahoo.co.jp
現時点では年間4000万円の賃借料が発生してますがその負担もなくなります(減価償却はありますがキャッシュはもう出ていかない)
現時点でもすでにホロライブの方が技術的には上というブランドイメージがありそうですが、来年からはさらにレベルアップした映像を見せてくれるのではないかと期待できますね。
ホロライブの方が圧倒的に社員の数が多い
にじさんじの社員数は200人ちょっとです。しかも詳細は省きますが外注費もにじさんじのほうが少ないです。
一方で、ホロライブはその倍。
これだけ人が多いとそりゃ社員の給料だけで10億円の差が出ます。それだけホロライブの方がVTuber当たりのケアが厚いということになるでしょうか。
にじさんじに否定的な記事などを見ると、にじさんじ運営は少し問題を抱えているように読める部分もありますね。
t.co
ホロライブは「メタバース」ゲームを作るための開発費がかかってる
私は現時点でのホロライブの利益が低いのはここが原因だと思ってたんですが……。
少なくとも現時点で研究開発費(メタバース開発に関与する社員の給料)は2600万程度としょぼしょぼです。ほぼ外注任せといってよいでしょう。
一方外注費が2022年度に23億→56億円と急増していますが、このうちどのくらいがメタバースにかかっているのかがポイントですね。
(追記)Twitterで補足いただきました。
p29を見ると仮勘定として6.7億円計上していました。現時点ではこれがホロアースに費やした費用のようですね
kai-you.net
「ホロアース」の開発が終われば一気に利益率が改善してくると思います。
www.youtube.com
この記事で書いてる内容を動画でもしゃべってみました。
id:gnoname
dlsiteの時点でクソガバ考察だったのでこいつは信用してないんだすまない
なんかそのまんまBOSSのCMに出演できそうな人キテンネ。この方のはてなブックマークページを見るに、この話題に限らずすべての話題において自分の方が詳しいという最強なオーラが出てるので、今後気になる話題はすべてこの人に聞いてみるといいんじゃないでしょうか。何歳になってもこういう中二病的振る舞いが許される素敵なSNS、それがはてなブックマーク!