これだけ見ていると、証券化商品をつくって売却する投資銀行(証券会社)は、つまりリスクを他者に押し付けて自分は手数料をもらうだけなので損はしなさそうですよね。日本のバブルのとき、大量に不良債権を抱えた銀行やその系列のノンバンクが大損してしまったのとは根本的に違うはずです。

 では、なぜ損をしたのでしょうか。

 それは、サブプライムローンを証券化して転売するまでの間に、いったん自分で危ないローンを大量に抱えなければいけないからです。その、「転売目的でとりあえず持っている」間に市場がこわれてしまって、大損してしまったというのが投資銀行が損をした一因です。

世界の一流金融機関が次々と破綻しそうになる

 こののち、さまざまな金融機関が破綻の危機に見舞われます。どこがどのように損したかを細かく説明することは省きますが、アメリカ政府が税金を大量に投入して金融機関の救済に奔走するという、これまたバブル崩壊のときに日本で見られた光景が繰り返されました。

 大手証券会社であったリーマン・ブラザーズは、国が救済しなかったことから法的に倒産します。大手が倒産したことから「次はどこだ」という展開になりました。

 銀行業界では、毎日余ったお金を銀行間で融通しあいます。銀行は信用力が高いので、安心して世界中の銀行がお金をやり取りするのです。銀行間の取引なので、インターバンク市場などと言われます。

 ところが、どこかが潰れそうだとなると、そこに対してお金を融通することを避けるようになります。そうやって、全員が疑い始めると銀行間でお金が回らなくなります。その結果世界中の金融機関の資金繰りが悪くなりました。こうして、グローバルベースで金融システムがかなり危なくなったのです。

 バブル崩壊のときの日本は間抜けな国として世界から笑いものにされましたが、日本は世界の最先端だっただけだという意見もあるほどです。

リーマン・ショックの教訓とは

 リーマン・ショックに関しては、日本のバブルほどわかりやすくなく、商品が巧妙につくられていたので、投資する側としては見抜くのが難しいところがあります。

 日本のバブルのときはNTTのPER(株価が一株あたりの利益の何倍かという指標)が明らかにおかしい水準だったのは素人でもわかりました。不動産の価格もマンションひとつが年収の20倍だといわれたらそれもおかしいとわかるでしょう。

 ところが、世界の一流格付会社がAAAだといっている債券まで疑うのは相当な知識がないと難しいことです。

 しかし、ローンの返済能力がなさそうな人にバンバンお金を貸し込んだり、頭金ゼロで物件の価格以上にお金を貸し付けたり、不動産の価格が暴騰しているような状態に、おかしいと気がつくことは世の中のことを冷静に見ていたら不可能ではないと思います。

 その過ちは、人類が2000年以上も繰り返している同じような過ちであったりします。投資をする上で、過去に起きたとんでもない事件のことを理解しておくことは大変効果的です。