時々ニュースで朝鮮総連中央本部ビルの競売売却のニュース問題が取り沙汰されるので、話題としては知っているが詳しい内容までは分からないという人がいるかもしれない。
今年3月24日に香川県のマルナカホールディングスへの売却も決定したので、これまでの経緯を簡潔に纏めてみようと思う。
話はバブル真っ只中の1990年代まで遡る。
日本中がバブルに沸いた当時、投資や事業拡大で金儲けに浮かれていたのは経済人ばかりではなかった。
なんと、在日朝鮮人の親睦団体であり、政治結社、朝鮮民主主義人民共和国の大使館的役割を担う朝鮮総連もバブル景気の恩恵に預かろうと躍起になっていた。
朝銀信用組合は事実上朝鮮総連の傘下銀行であり、総連の意向を実務的に処理する金融機関でもあった。
そもそも朝銀は預金者の殆どが在日朝鮮人で、かつては日本の銀行からの融資を受けづらかった在日の事業を支え、朝鮮人が日本企業への就職が困難だった時代に朝鮮学校卒業生の有力な就職先のひとつでもあった。
また、地元出身の信組職員と顧客の多くが朝鮮学校を通じて先輩後輩の関係で結ばれており、多少の融通も効くなどして総連の関係者にとっては使い勝手の良い金融機関という側面があった。
そんな一面もあり、バブル時代には日本の銀行同様に甘い審査と査定よりも大きい金額の融資をするなどしてバブルに沸いていたのだ。
朝銀の上部組織である総連もバブルに敏感に反応し、目ざとく地上げ事業に着手。パチンコの事業展開では朝鮮大学の卒業生を店長候補生に迎えて多くの店舗を出店した。
確かに昔の在日は企業への就職が難しい時代が長く、個人事業者が多かった。朝鮮部落といわれた町には肉屋や焼肉屋、朝鮮乾物屋、カバン・サンダル製造業、喫茶店、不動産業、金融業、パチンコ業を生業とする者が多い。しかしそれらは皆わが身を削りながら必死に働いてやっとの思いで成り立っているのだ。在日ならそれらのビジネスをすれば誰でも成功させられるというものではない。
ましてやパチンコ業などでは地元の地回りとの折衝もしなければならず、不眠不休で売り上げを伸ばす努力は自分の身銭を切っているからこそ命がけで事に当たれるのであって、いくら総連が金を出し、在日社会のエリートといわれる朝鮮大学を卒業した者を責任者に添えたとはいえ、20代半ばそこそこの若者にその重責を担えるはずもなく、殆どのパチンコ店が経営不振に陥り、バブル崩壊と共に地上げやパチンコの事業展開は見事に不発に終わった。
そのような総連主導の事業で資金の調達役を担っていたのが朝銀信用組合だった。
(※資金の一部は北朝鮮に流れ核開発や長距離弾道ミサイルの開発資金に当てられたという説もあるが、やはり事業展開に失敗したというのが本当のところだと思う)
資金の調達方法として、まず総連関係施設(総連支部や学校など)の土地建物を担保に日本の銀行数行から担保評価額一杯の借り入れを起こし、そのあとですでに担保価値のない同施設を朝銀に再評価させ金を出させた。
バブル崩壊後の1997年5月の朝銀大阪信用組合の経営破綻を皮切りに不良債権問題が発覚。朝銀グループは次々に破綻することになった。
朝銀グループの不良債権を整理回収機構(RCC)が2900億円で買い、当時の預金保護法に基づく預金の全額保護のため預金保険機構から公的資金1兆1404億円が投入され、在日たちの預金が全額保護されたものの、朝銀の不良債権のうち個人・団体向けの394件、総額628億円が実質的に総連への貸付だったと東京地裁により認定されることになる。
この628億円が前述の総連の事業展開資金である。
2005年に総連が提訴され、2007年に総連側からRCCに
毎年5億円を8年間、別途4年間に30億円の合計70億円の和解案を提出。
それに対し
RCCからは毎年5億円を3年間、4年目に残債額に対する年間5%の利子(約31億円)を含めた全額を一括で支払い。
と、返済条件の折り合いがつかないまま和解交渉が決裂。2007年6月18日に東京地裁は総連に対する資産差し押さえの仮執行つきの返済命令を宣言し、総連は控訴せず、RCCは総連中央本部ビルの差し押さえ続きに入った。
総連が控訴をしないのにはわけがあった。
総連は東京地裁が上記の命令を下すことを予想していたため、命令が出される直前の6月1日付けで、元公安調査庁長官の緒方重威氏が代表取締役を務めるハーベスト投資顧問株式会社(本部ビル移転手続きの2ヶ月前の4月19日に設立)に総連関係施設内で最も資産価値の高い総連中央本部ビルを売却するという工作をしていた。
売却手続きと所有権の移転登記の実務は元日弁連会長の土屋公献氏が担当。
ビル売却の詐欺容疑で緒方氏とともに逮捕された元自民党衆議院秘書の満井忠男氏によると、4億7500万円の資金を総連から受け取り、1億5000万円は資金調達役の元銀行員に2億円は総連に返却、1億円は貸金庫に保管(あと2500万円は?)と証言。資金調達は自民党議員によってなされる手はずだったという。
2012年6月18日
ところが総連は任意団体であるため土地、建物の所有権を登記できず、総連中央本部ビルは朝鮮中央会館管理会の名義になっていた。そこでRCCは総連中央本部ビルの実質的な所有者が総連であることを確認する裁判を起こし、総連の敗訴が決定したため、RCCはようやく総連中央本部ビルの競売手続きに入れるようになった。
2012年7月上旬には、総連の許宗萬議長が野田政権の輿石東幹事長と民主党事務局幹部を招いて会食し、拉致問題の交渉再開を条件に総連中央本部ビルの競売回避を求める秘密交渉が行われていたという。
許宗萬議長は和解案の履行を約束した「覚書」が民主党事務局幹部名で渡されたと言い、輿石幹事長はこれを否定。
2012年10月
一説によると、総連はRCC側に42億6000万円の和解金を提示し、RCCはこれを一度は了承しながらも後になって全額一括返済を主張し、物別れになったという話もあるらしいが詳細は分からない。
2012年12月
金正恩第一書記の指揮の下、北朝鮮の東倉里にある西海衛星発射場から不意をつく形で北朝鮮初の人工衛星、光明星3号2号機が発射された。
この人工衛星発射によって、総連・許宗萬議長と民主党・輿石東幹事長の政府合意も吹き飛んだ。
仮に上記10月の総連の和解案をRCC側が一度は承諾しながら強行姿勢に転じて破談になった話が事実なら、この人工衛星打ち上げ問題が関係して政府からの圧力がかかった可能性もある。
2013年3月26日
第1回入札の結果は鹿児島市の「最福寺」が45億1900万円で最高額となるも、一旦は融資を引き受けてくれた銀行が「最福寺」の口座への振込み直前に監督官庁からの圧力によって融資を断られた。
結果、期日までに資金を揃えることができずに供託金5億円は没収。
2013年10月17日
第2回入札で朝青龍の兄が代表を務めるモンゴルの「アバール・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー」が50億1000万円の最高額で入札。
入札に添付する資料が公的な正式書類ではないとして売却が許可されないという決定がなされた。
(※入札後は、供託金か銀行保証が必要だが、関東の朝銀が合併・改組して新生したハナ信用組合が銀行保証したという)
最終的には冒頭で書いたように2度目の入札で第二位の高値(22億1000万円)で入札したマルナカホールディングスへの売却が決定した。
第1回目と2回目でともに最高額で入札した「最福寺」も「アバール・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー」も北朝鮮の影響下にあることが濃厚であり、日本政府の国策として北朝鮮の息のかかった相手には総連中央本部ビルを売却しないということだろうと思う。
これまでの日本政府ならば北朝鮮に対しまず譲歩をし、相手が歩み寄ってくるのを待つのが慣例であったが、その都に北朝鮮によって交渉のテーブルをひっくり返される苦湯を飲まされ続けてきただけに、今回は総連中央本部ビルを交渉の切り札としてとっておきたかったのだろうが、北朝鮮本国にとっては在日朝鮮人の本拠地など歯牙にかけるほどの価値もなかったようで、核実験と長距離弾道弾開発、人工衛星の打ち上げと矢継ぎ早に刺激されて日本も強攻策に転じることとなった。
このように、いまの日朝関係はすべてにおいて政府の方針で物事が決められていく。
今回の朝鮮総連中央本部ビル競売問題にしろ朝鮮高校の無償化問題にしろ、すべてにおいて日朝間の政治の成り行きによって決定されていくことだろう。
北朝鮮が今までどおり拉致問題は解決済みという姿勢を続ける限り、日本社会における在日特権などは国策として一つ一つ潰されていくであろうし、在日のコミュニティー自体の存続が危ぶまれて行く可能性はある。
「最福寺」の池口恵観住職にしろ、元公安調査庁長官・緒方重威氏にしろ社会から批判を浴びることを覚悟しながら総連を擁護することを池口住職は宗教観から、緒方氏は公安的国家観からそれぞれ善として個人プレーを慣行する日本人はいるが、北朝鮮や総連を敵に回してでも両国のためになると新年を貫く在日はあまり見かけない。
※実際には数多く存在するのだが、形として実を結んでいないため見えづらいというのが正確な表現だとおもう。
拉致問題に端を発し、日朝両国の関係が極端に悪化して久しいが、両国の関係改善には在日の力が不可欠だと信じている。
この時代に在日として生を受け、徒に日々を過ごしているが、自分に何かできないかと苦悩しつつブログを綴っている時がむなしく感じる今日この頃である。当ブログでは、読者の皆さんに朝鮮総連に拉致問題の解決を訴える署名への協力をお願いしています。赤色文字をクリックして、署名にご協力ください。
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