クリエーターインタビュー 01
コンシューマーでの経験を活かしているクリエーター
新規プロジェクトでリーダーを務める宮本 裕司に、前職のコンシューマーゲームの開発現場とアカツキとの違いや、アカツキへの率直な想いをインタビューしました。
01.アカツキが掲げるビジョン・ミッションとの出会い
ーー前職について教えてください
宮本 裕司氏(以下、宮本):もともと13年くらい大手コンシューマーゲーム会社にいました。最初はプランナーとして、そしてディレクターとなって自社IPの20周年タイトルや他社のIPとのコラボタイトルを開発していました。
ディレクターという職種は、会社によって役割が違いますが、端的に言うと「面白さを担保して、どんなゲームにするか」の意思決定を担っていました。
ーーアカツキへ転職したきっかけは?
宮本:前職で「ミッションとは何か、ビジョンとは何か」について研修を受ける機会があったんです。それまでも『ビジョナリー・カンパニー』などは読んでいたのですが、体系的に勉強する機会は初めてでした。それが「自分が本当にやりたいことって何だろう?」と、見つめ直す機会になったんです。
その時にわかったのが、人生ってうまくいかない瞬間が結構あるんですよね……傷ついたり、落ち込んだり、裏切られたと感じたり、私はそういうツラい状況でもがんばっている人が好きで、そういう人たちが「未来に向けて勇気づけられる作品や、世界を作りたい」と思っていることに気づいたんです。それから、マーケットがコンシューマーゲームからモバイルゲームへと移っていくのに伴って、外へと移る選択肢も含めて色々な可能性を広げて考えるようになりました。
ーーアカツキを選んだ決め手は?
宮本:ビジョンだけではなく、現実的な面もしっかり比較検討しました。
① モバイルゲームが高品質なのが当たり前になる中で、プロモーションに投入できるバジェットがしっかりとれるか(過去にランキング入りしているヒット作が1つはあるか)
② 一方で規模が大きくなりすぎず、自分が即戦力として活躍できそうな余地があるフェーズかこれらのポイントは特に重視しました。
ただ、最後はビジョンで決めようと思っていたので、本当に決め手となったのはアカツキのビジョンでした。
ビジョンを掲げている会社に入って、同じような考えの人たちと仕事をしたときに「何が起きるんだろう?」という未知の世界を見たくなりました。
02.若い会社、若いメンバーだからこその苦労と喜び
ーー入社し、最初に任された業務は?
宮本:私はソーシャルゲームの運用経験がなかったので、「まずは運用を学びましょう」と運用中のプロジェクトに入りました。プロジェクトリーダー(※1)からは「運用を学びながら、今までの経験や強みをいかして新機能開発チームで活躍してほしい」との期待値で迎えていただきました。
リーダーから少しずつ仕事をもらって運用のやり方を学びながら、積極的に仕事をとりにいき、自分が担当できる領域を少しずつ広げていきました。その後、環境に慣れてチームの状況がわかってきたら、いわゆるプロマネ(プロジェクトマネージャー)の業務に手助けが必要だとわかってきたので、進捗を可視化しながら、プロマネに近い役割も担うようになりました。最終的には、新規チームの1つで、プロマネとプランナーリーダーの両方の役割を担うようになりました。
※1 アカツキではプロジェクトリーダーが事業の最終責任者としての責務を負う。同時に多くの権限がプロジェクトリーダーに委任されている。
ーー前職と比較して若手が多い環境にギャップは?
宮本:おそらく前職と比較して10歳ほど平均年齢が若いのではないかと。最初は馴染めるか不安でした。ただ、アカツキは人に心を寄せるビジョンがあるからか、気持ちいいコミュニケーションができるメンバーが多いんです。
何かあった時に、助けを求めたら応えてくれる信頼できる人が思った以上に多いというのが、いい意味でのギャップでした。逆に戸惑ったギャップは、前職では「ゲーム会社でゲームを作りたい」という人が入ってくるので、バックボーンとしてゲームをプレイしてきているし、共通言語が多い。求めるクオリティも職人的な基準で高いです。
それに対して、アカツキはもう少しカラフルで、ゲームが主語ではなく「サービスをつくりたい」と入ってきた人たちもいます。良し悪しではなく、会社の違いだと思っています。
ーー会社の違いによるギャップをどうやってうめたのか?
宮本:若いメンバーも「こうしたらいいんじゃないですか?」とすごく提案してくれるので、そこに助けられて、色々話し合ったり、同じプロジェクトを経験することで解決していったという感じです。もちろん私自身も、当たり前と思っていることを言語化するよう、表現や伝え方の試行錯誤もしましたが、若いメンバーの「こうしませんか?」という積極的な姿勢に支えられて、コミュニケーションが完成したんだと思います。
ーー現在は新規プロジェクトのリーダーを担当していますが、入社時からリーダー職の話が?
宮本:いえ、リーダーの話をいただいたのは、入社後です。それ以前に知っていたのは運用中のプロジェクトに入ることだけで、何をやるか分かっていなかったですね。人事に「新しいことをしたいんです」とアピールはしていたんですが、それが功を奏したのか(笑)、ある日、COOの香田から呼ばれて新規プロジェクトの話をもらいました。アカツキにジョインしてまだ3,4ヶ月だったので、「新しいプロジェクトにメンバーの一人としてジョインできるのかな」ぐらいに思いながら話を聞いていました。
ーープロジェクトリーダーを任された時の気持ちは?
宮本:びっくりしました(笑)。ベンチャーだからスピード感はあるだろうなと予想はしていたのですが、それでもコンシューマーの大きな組織に比べると想像を超えたスピードと、権限を渡す思いきりのよさを感じました。また、前職の経験も含めしっかりと評価してもらえたのだとうれしかったですね。大役をいただいたので、プレッシャーはもちろんありましたが、期待に応えたいという気持ちが勝りました。
ーー当時よりも企業規模が拡大し、成長した現在のアカツキでも、プロジェクトリーダーを一任される機会はあるもの?
宮本:もちろん、当時と比べると人も増えているので、スピード感は少し違うかもしれませんが、責任あるポジションで活躍する機会が多いのがアカツキです。CEOの塩田、COOの香田二人とも「挑戦したい意思がある人たちと会社をつくっていきたい」と考えているので、根底にある「任せる思いっきりのよさ」は、変わっていないと感じています。
03.新しい挑戦! 新規プロジェクトでぶちあたった文化の壁
ーー新規プロジェクトジョインを一任される前に、未経験だった運用プロジェクトに入ってよかった点は?
宮本:新規プロジェクトを任されたといっても、最初から100%移行した訳ではなく、運用の勉強と並行しながら新規の立ち上げを進めました。運用については実体験としては初めてだったので、サーバーの知識であったり、スマホの文法であったりを学べたのがよかったです。
ーー運用での学びにある「スマホの文法」とは?
宮本:ここでの文法とは、1番はコンシューマーゲームとのモバイルゲームの違いです。すごくわかりやすく例えると、「月刊誌と週刊誌の違い」だと思いました。月刊誌がコンシューマーゲームで、週刊誌がモバイルゲームです。
掲載されている各作品の最後を想像していただけるとわかりやすいのですが、週刊誌の最後は「あいつ死んだかも!?」みたいな、「この先どうなるの?」というあとちょっと足りない、気になるという感覚ですよね。その感覚がモバイルゲームの文法だと思いました。そういう少し足りない感覚というのは、どちらかというとアーケードゲームが文法として似ているなと思っています。
一方、コンシューマーゲームは月刊誌の作品と似ていて、しっかりエンディングがあって余韻も感じられます。「ああ、終わった。スッキリしたー」みたいな。その違いを実際の感覚値として体験できたのが一番大きな学びでした。
また、特にコンシューマーの方ではキャラクタースキル一つをとっても、そのゲームで一番最適な組み合わせのスキルにするのですが、モバイルゲームだと長期的な運用を見据えて、キャラ同士のスキルの組み合わせでどうやって魅力を引き出すかといった点を重視したりしますよね。ログインボーナスやミッションの報酬の考え方など、細かいノウハウも学べたのがよかったです。
ーー新規プロジェクトでリーダーになりましたが、前職との違いで大変だったことや苦労したことは?
宮本:最も戸惑ったのは組織構造でした。当時のアカツキのフェーズでは、まだ階層化してないだろうと予想していましたが、思った以上にフラットな組織でした(笑)
それは良くも悪くもという感じで、一人ひとりの役割などが明確になっていなくて、意味なく同じボールを二人で持っていたり、ボールが落ちたりが発生していると感じました。
プロジェクトリーダーも同様で、言葉の認識ズレも合ったのですが、リーダーをしてみると、想定していたプロジェクトリーダーの業務範囲より広すぎて苦心しました。最初は「一人でやりきれるだろう」と思っていたのですが、「絶対に一人では無理じゃん!」とある程度、動き出してから気付きました。その時は、「文化の違いをちゃんと理解しないまま進めちゃったな」と反省しました。
ーー「想定を超えた業務範囲」とは、具体的にどの程度?
宮本:アカツキのプロジェクトリーダーの担当領域はかなり広く、一般的なゲーム会社のプロデューサー兼、ディレクター兼、プロマネを「プロジェクトリーダー」と呼んでいます。自分は前職の感覚で「ディレクターやるのかな」と思っていたら、そもそも人探しから始めなければならないとか、マーケのことも考えないといけないとか、予算を確保するのも、関係者や経営陣への説明も諸々を全部プロジェクトリーダーの仕事らしいということがわかりました。これは組織の規模に応じて変化していく点ですが、プロデュースはプロデューサーが、マネジメントはプロマネが、と細分化していくのが一般的です。
チームが大規模化する中でしっかりとしたクオリティでつくりあげるために、アカツキでもそれぞれ専門性がある人が各分野の担当をするようになってきましたが、当時はまだまだ未分化でした。三人分の業務範囲を一人で担うことになり、プロジェクトが走り出した当初はかなり大変な思いをしました。
ーー「役割がたくさんある苦労」を乗り越えた方法は?
宮本:転職したからには新人のつもりで、倒れてでも信頼を得るまでやる気持ちでやっていました。困っている時に、周囲が声をかけて助けてくれたことも、たくさんありました。CDO(チーフデザインオフィサー)が「コンセプトアートをまとめるところをやりますよ」と助けてくれたり、他のチームのプロマネが管理のところを買って出てくれたり、時には、他チームの若手企画メンバー7、8人が、休日返上で一緒に仕様を仕上げてくれるということもありました。
04.変わらないゲーム作りへのこだわり
ーー今、「アカツキでのゲーム作り」に取り組む想いとは?
宮本:前職で培った「職人としての厳しさ」はブレずに持ちたいと考えています。経験上、もしリーダーが基準を下げてしまうと、いとも簡単に全体のクオリティが下がってしまうことを身を以て知っています。メンバーに経験がないとしても、それはお客様には関係ないこと。クオリティはしっかり出さないといけません。その姿勢をチームに伝えられるよう意識しています。
ーークオリティを担保するために取り組んでいることは?
宮本:今までよりも「言葉にしないといけない」と感じています。ゲームの共通言語が必ずしもないので、しっかりと「こういうことなんだよ」と、目に見える、理解できる形に落とす努力を続けています。
ーーそういった「ゲームの面白さ」を社内で共有する機会は?
宮本:自分たちが興味を持って、自分たちで取り入れたものは、教えられて身につくよりはるかに多くのことが得られると思っています。ですので、若い世代がどのようにして「そういう心持ちになれるか」を我々ベテラン世代が考えていくことが大事だと思っています。
逆に知識や努力で身につけられる技術は、しっかり資料に落として伝えようとしています。たとえば「アイデアはどうやって出せるか」とか、伝わる資料が書ける「レイアウト基礎知識」とか、一定の努力で身につく技術は、目にみえて結果に出やすいため、そういう技術を中心に身につけさせてあげた方が、より若者は育ちやすいと思っています。
05.アカツキでのこれから
ーー今後の目標は?
宮本:プロジェクトチームとしては権限委譲をもっと進めたいです。権限委譲されたリーダーが育ち、次世代を育てていく。実現できたら、一段と強いチームになれると信じています。
会社としては、想いや意義を持っている人がすぐ実行できる意思決定のスピードと、情熱で突き抜けられる仕組みが必要だと考えています。「自分の人生を意義あるものにしたい」と思う人は多いと思います。
それを組織で実現するには、情熱をもった一人ひとりが小さなチャレンジをしやすい環境と、同じ志をもった人達が自然に集まるような自主決定権の高さという、2つの要素が必要です。想いと情熱をちゃんと発揮できる「仕組みや文化」という表現が近いですかね。
もしそういう仕組みと文化を作ることができたら、100年続く会社にできると思っています。
ーー今後アカツキでチャレンジしたいことは?
宮本:そうですね、今は任せてくれた香田の期待に応えるためにも、担当している新規プロジェクトをしっかり形にして、軌道にのせたいと思っています。それが落ち着いてからということになりますので、少し先の未来の話になりますが、かねてから構想を温めてきた2つのゲームに挑戦したいです。
1つは「キャラクターを使ったゲーム」です。アカツキが「ゲーム会社やコンテンツ会社として立ってきたね!」と感じられるかは、みんなが連想できるキャラクターがいるかどうかにかかっていると思っているからです。そこで「キャラクターを作る」ということを1つの軸としてやりたいと考えています。
もう1つは、自分の信念である「勇気づける」ことをゲームでやりたいです。そのための物語が頭の中で既に構想としてあって、「勇気づける」物語を軸としたゲームを作りたいと思っています。
Hiroshi Miyamoto
京都大学卒業後、新卒でメーカーに入社。その後、13年間大手コンシューマーゲーム会社で某有名IPタイトルのプランナー、ディレクターを経験。2016年にアカツキに入社し、現在は新規開発のプロダクトリーダー