26人が犠牲になった2021年12月の大阪・北新地ビル放火事件で殺人などの疑いで書類送検され、死亡で不起訴となった谷本盛雄容疑者=当時(61)=の遺骨を巡り、引き取りの申し出があったことが21日、保管する大阪市立北斎場などへの取材で分かった。
前科のある人の更生や野宿者の生活立て直し活動に取り組むメダデ教会(同市西成区)の西田好子牧師(72)が申し出た。斎場には他にも引き取り希望の声があったという。
今年8月末までに親族などの引き取り手が現れなければ、大阪市設南霊園(同市阿倍野区)で無縁仏として埋葬されることになっていた。市の規定によると遺骨の引き取り手は原則親族だが、一定期間申し出がなければ、親族以外にも遺骨を引き渡せるとしている。
大阪府警は谷本容疑者が孤独や生活苦で自暴自棄になって自殺願望を持ち、事件を起こしたとの見方を示している。西田牧師は「もし事件前に出会って手を差し伸べていたら、救えたかもしれないという後悔がある。遺骨は教会に安置し、被害者に謝罪するよう毎日声をかけたい」と話している。
谷本容疑者は21年12月17日、通院先のクリニックに火を付けて自らも搬送され、同年12月30日、大阪市内の病院で死亡した。遺体は司法解剖され、死因は重度の一酸化炭素(CO)中毒による蘇生後脳症だった。(共同)