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「料理の理屈の本」の話を始めたのは本題のマクラのつもりだったのだけど、本題に入るのがすっかり遅くなっちゃった 荷物を掘り返していたら懐かしい手書きの束が出てきて、 これ90年代末ですな メールもPCも無いから手書きだわ(恥 「漫画の描き方」をね、理屈で構築しようとして、
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元ネタにしたのは、今はわりとシナリオハウツー本が有名な、シドフィールド氏のテキストを翻訳構成した、別冊宝島の『シナリオ入門』ですな 話あっちこっち行くんですが、別冊宝島、知ってる人は知ってると思うけど、200番あたりまでは、サブカルチャー本としてきわめて真っ当な位置に鎮座してました
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僕は、『ダービージョッキー』回顧の連投前後でも書きましたが、この頃、漫画描いて生きていける人になれるかどうかの、きわきわを歩いている頃でした(ヤンサンに短期連載を得て、『ダービー』のGOサインを手にできるかどうか、の頃ね) ヒマだけは死ぬほどあって、当時“志望者仲間”のW君が江古田に
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仲間のW君が江古田に住んでて、何かというと深夜にバイクで江古田のデニーズ集合して、朝まで飽きずに漫画話をする、という生活をしてました “江古田のデニーズ”でピンとくる人もいるかもしれませんが、江古田界隈は漫画業界人の巣窟で、デニーズ行くと頻繁に、しげのさんや村枝さんなんかが、ネーム
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ネームや打ち合わせを誰かしらがやっている、みたいな、そういう異常な場所でした、江古田デニーズ W君は細野さんのアシにほぼ同じ日に入った仲間で、何年もの間、ネーム見せ合ったりケンカしたりしながら、少しずつ互いに「自分の漫画」で仕事を手にする姿を見せ合ってきた、そういう友人です で、
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その頃には、けっこう2人の間の話の内容も煮詰まってきて…というか、“漫画のムダ話”のひとつの本質とか終着点であろう、 「面白い漫画とは、どういう構造をしているのか?」 「その構造はどこまで理屈で分析できるのか?」 という主題の周辺をウロウロし始めてたんですよね たしかW君が「面白い漫
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「面白い漫画というのは、読んでいると、目を奪われるというか、目が泳がされるというか、それで催眠術にかけられる感じがある その目の動きは、漫画それぞれというか作家さんによって違う」 みたいなことを言って、その瞬間は僕も「ふ〜ん」程度の反応をしながら、夜明けと共にバイクで帰宅したのね
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その帰宅途中、明け方、AX-1で江古田から上野毛のアパートに向かって環七を南下して246を右折する頃に、“降りてきた“んですよ 帰宅して、次々「面白い漫画」を拡大コピーして書き込みをしていったのがこれらです 現在では「視線誘導」って名前が付いてるスキルです (当時は名前が付いてなかったはず
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これ既存の有名な漫画作品を好き勝手に汚して無断でアップしちゃうことになるんでずっと憚っていたんですけど、「学術利用/批評的引用」という範疇で見逃していただけないでしょうか…という感じで、紹介したく思います(怒られたら削除しますので 赤で「文字(ネーム)の流れ」 青で「目の流れ」
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漫画のひとコマって、その中に必ず絵とフキダシの「中心」があります ・絵だと、「キャラの目」や「パースの消失点」や「明暗の明るい(暗い)場所」 ・フキダシだと文字どおりフキダシの中心ですね それらをコマで跨いで線で繋げていくと、「作家によって計算された流れ」が見えてきます(赤と青の線
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1ページや見開きの中にも「目」があります 左1枚目40pだと3コマ目のアキオ、 41pだと1コマ目のZと描き文字 右2枚目196Pだと右下7コマ目のブラックバードのアニキ、 197Pだと1コマ目の黒いポルシェ 遠くから見てもこれが「誰の漫画か」がすぐにわかります
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絵の流れと描き文字の流れが鏡像の構図でぶつかり合って、目線を右下に逃すことなく、ページをめくりたくなる左下に誘導している
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右ページ5コマ目のクルマは「キャラ」として計算されて、アゴを上げて左上を向いています そのことによって、左のページの上の方に目線が導かれることになる(ほとんど全ての読み手はもちろんそんなことには気がつかない) 計算されてる証拠に、左ページのクルマはアゴを下げて「左下」を見ています
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「左下」に頻繁にこだわっているのは、そこが雑誌や本をめくるための場所だからです 読み手は、目を泳がされて無意識レベルで左下に指を運んで、「早く次のページをめくりたい」となります めくると、右上の絵やセリフが、ひと呼吸置かせてくれる寸法です その緩急で読み手の呼吸をコントロールする
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数人の作家さんの構成力を読み解いた時点ですでに、「描き手ひとりひとり、全然構成のリズムが違う!」ということに気が付き驚きます 僕は、漫画に関しては、作家の個性とは「絵柄」以上に「ネームのリズム」なんじゃないかと思います 誰ひとり似ていない
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いやらしく分析して分解してみて、ようやく本当に、自分がお師匠の創作のいったい何を好きだったのかがわかった 長いこと、流麗な絵柄に魅了されていた気がしていたんだけど、「尋常じゃない漫画の構成力」に惹かれていたんです
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作り手の脳内を歩ける…という意味合いでは、漫画は、ものすごく作り手と受け手の距離が近い表現なのではなかろうか
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「下手なアニメ化や実写化をされるくらいだったら断りたい 元の、自分が描いた漫画を読んで欲しい」 という意味のことを言っていたのを聞いたことがあるのですが、本当にそうだよなと思います
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この人の個性の深淵にも分け入ってみようと思うも、最初ちょっと構図の構成とかもよく分からなくて、「あれなんか上手くなくない?」とか思いそうになっちゃったんですが(続く
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フヂタさんの漫画、キメの中心の絵は、カメラ目線、いや、ものすごい目ヂカラで読者を見つめてくるんですよね 読み解いていくと、その度合いは他の作家さんとはまったく異なっています 読み手は作者とガンの飛ばしあい殴り合いをするみたいなことになる
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何人かの作り手さんの「呼吸とリズム」を理解できるようになってくると、もうなんかそれぞれを音楽ジャンルに例えることができそうな気がしてくる
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フォークソングやバンドサウンドを浴びていたところに、いきなりテクノポップやヒップホップの文法が飛び込んでくる、くらいの落差が、ただ理由もわからずどれも好きな漫画だったはずなんだけど、実はそれぞれまったく異なる「音楽」だったくらいの驚き
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このときの漫画家さんの脳内巡りはこの作家さんで最後 音楽に例えるならまさに「プリンス」でいいじゃないかとマジで思いました
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カンケーないけど、第三部、ジャンプ連載リアタイで興奮できたのはシアワセだったなあと思います これと次の画面構成は白眉
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1コマ目の道路標識の矢印を含めて、「漫画の視線誘導の構成を読み解く」目線を獲得して見直した時に、この見開きは度肝を抜かれました 当たり前のことに気が付くわけです 「全部考えて計算して作られているんだ」 と 「感性」とか「感覚」とかの逃げ道に逃げたら、えてしてそのままになっちゃうんだ
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ついでにアンドリューワイエスの絵なんか引っ張り出してビックリしておく 当時「ハイパーリアル」「写真みたい」とか言われてたけど、よく見ると全然写真じゃなくて、部分を見たらドライブラシのテクスチャーの「手抜き」なんですよ それがなぜ、目と心を奪われることになるか…という、「催眠」の話
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こんな読み解きを、明け方に自分の部屋に帰るなり、たしか何時間もかけて、一心不乱に数十枚描いた もちろん、終わった時には、まったく違う自分になってしまった 「漫画を読み楽しむ」事ができる自分は永遠に死んでしまって、あとには、下手でも何でも自分でも漫画を描くしかない自分しか居なかった
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勢いで、ネーム構成に加えて、先の「シナリオの書き方」の本を分解して全ページコピーして注釈を書き込み、「漫画のストーリーの書き方」に改竄してみた お師匠や友人たちと交わした多くの言葉が実を結んだ感じがあった 連載の仕事に突入する直前にこの「準備」ができたのはよかったなあと思います
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