マンション管理に関する国家資格であるマンション管理士・管理業務主任者になるには、年1回実施される試験に合格する必要があります。
今回はマンション管理士試験・管理業務主任者試験に合格するために、必要な勉強時間や学習スケジュール、各科目ごとの勉強方法、問題を解くコツ等について詳しく解説します。
目次
合格に向けた基本戦略
出題範囲
マンション管理士試験 | 管理業務主任者試験 | ||
法令 | 民法・その他法令 | 約6問 | 約10問 |
区分所有法等 | 約12問 | 約6問 | |
標準管理規約 | 約8問 | 約8問 | |
マンション管理適正化法 | 5問 | 5問 | |
管理実務 | 標準管理委託契約書等・会計 | 約4問 | 約9問 |
建築・設備 | 約15問 | 約12問 | |
合計 | 50問 | 50問 |
合格に必要な勉強時間
合格のために必要な勉強時間については、全くの初学者の人で、マンション管理士試験は500時間、管理業務主任者試験は300時間が目安と言われています。
500時間となると、1日2時間の勉強で8ヵ月以上。
300時間でも、1日2時間の勉強で約5ヵ月かかります。
両試験とも決して簡単な試験ではありません。
とは言え、この勉強時間はあくまで目安です。
当然個人差はありますし、重複科目の多い宅建士の資格をすでに持っている、法律関係の学習経験者で民法の理解がある程度できているとった方であれば、学習時間はより少なくて済むでしょう。
また、マンション管理士と管理業務主任者は試験科目の範囲がほぼ同じです。
そのため、計画的にダブル受験を目指せば、500時間程度の勉強時間で2つの合格を勝ち取ることも不可能ではありません。
おすすめの学習スケジュール
マンション管理士試験・管理業務主任者試験の合格のためには、計画的な取り組みが欠かせません。
そこで、モデルとなる学習スケジュールをご紹介します。
事前に学習スケジュールをしっかり組み立ててから、勉強に取り組みましょう。
基本的な勉強の流れは以下のようになります。
- 基本事項の確認(テキストの読み込み、講義視聴)
- 繰り返しの過去問演習で知識の定着
- 8月頃から予想問題、模試受験で弱点の発見、克服
- 10月末~直前仕上げ
毎年マンション管理士試験は11月下旬、管理業務主任者試験は12月上旬に実施されます。
必要となる勉強期間は個人差がありますが、基本的に学習のスタートは早いに越したことはありません。
ただし、マンション管理士と管理業務主任者のダブル受験で、独学&初めての挑戦であれば、2月ぐらいを目安にスタートできると理想的。
理由としては、2月頃から市販のテキストが発売されるためです。
ただし、通信講座(予備校)を活用する場合は、より短期間でも十分に合格することができます。
しっかりと解説してもらえることから、あれこれと考える時間を省くことができるためです。
合格するための勉強法(総論)
マンション管理士、管理業務主任者試験の勉強法としては、まず、基本テキストの読み込みから始めます。
そのあとは、ひたすら過去問を解いて理解を深めることが基本になります。
インプットとアウトプットをジグザグのようなイメージで行ってください。
「問題演習でわからなかったところはテキストに戻って確認する」を繰り返せば、合格に必要な知識を定着させることができるでしょう。
直近10年分の過去問を、少なくとも5回は繰り返し解いて下さい。
試験直前には、予想模試で実力の確認し、苦手な科目をチェックすることが大切です。
このような学習は全くの独学でも不可能ではありませんが、わからない問題を1人で考えて解決していくには、思わぬ時間がかかってしまうことがあります。
独学が苦手な人や、とにかく効率的に最短合格したい人は、資格試験講座を活用することを推奨します。
隙間時間に自分のペースで学習することが可能な通信講座などは、通学する手間もかかりません。
ただテキストを読むだけよりも、映像と音声による解説を視聴することで理解も一気に進むでしょう。
宅建や賃貸不動産経営管理士の知識は活かせるか
宅建の「権利関係」で出てくる民法は、管理の現場に置き換えた形で(マンション管理士試験や管理業務主任者試験に)出題されます。
そのため、宅建で勉強したその権利関係の知識は活きてくるでしょう。
他には、宅建の「法令上の制限」の一部は、マンション管理士試験にも関係します。
同じく宅建業法は、管理業務主任者試験の方で毎年1問出題される傾向にあります。
また、賃貸不動産経営管理士に出てくる設備の内容は、両試験と同じ管理です。
管理の対象は異なるものの、非常に親和性があり、学習しやすい部分となります。
マンション管理士試験の分野別勉強法
試験内容は「区分所有法・民法・マンション管理適正化法・標準管理規約などの法令系分野」と「標準管理委託契約書等や会計の実務に関する分野」、「建物の建築・設備系の分野」に大きく分けられます。
実務や設備系の分野に比べ対策が立てやすく、出題数が全体の約6割を占める法令系の分野でしっかり得点を稼ぐことが重要です。
また、合格のためには多くの受験生が苦手とする設備系の分野でも、ある程度得点を確保することが必要です。
法令系
(1)民法・区分所有法等
区分所有法はマンション法ともいわれ、マンション管理士試験においては最も重要度が高く、標準管理規約等他の項目にも関連していますので、しっかり克服することが必要です。
そのためにもまずは、民法の基本的理解が必要となってきます。
(2)標準管理規約
標準管理規約とは、マンション生活の基本ルールを定めるための標準モデルとして国土交通省が作成したものです。
区分所有法で定めている原則を、標準管理規約で変更している部分、また区分所有法には規定がない部分を押さえることがポイントです。
(3)マンション管理適正化法
マンション管理適正化法は、マンションの資産価値を維持し、快適な住環境が確保できるようにとの目的から定められた法律です。
出題傾向は難しくないので、過去問を中心に基礎を押さえておけば得点源とすることができます。
管理実務系
(1)標準管理委託契約書
標準管理委託契約書とは、マンションの管理委託契約についての標準的な契約指針として策定された契約書の雛形です。
近年の出題はあまりありませんが、内容はさほど難しくはないため条文等の知識を身につけていれば得点につながりやすくなります。
(2)会計
簿記になじみがない場合、苦手とする受験生も多いですが、まずは過去問を中心に学習し、応用力を身につけることが大切です。
建築・設備系
範囲が広く、細かな知識を問われるため、苦手分野となりやすく得点しづらい分野です。
基本的知識と、過去問で問われたところは確実に押さえたうえで、細かい知識をできるだけ身につけることで差がつきます。
管理業務主任者試験の分野別対策
管理業務主任者試験は、マンション管理士試験に比較して難易度も低く、基本的な問題も多いため、まずは法令系分野で基本知識を正確に理解して得点をしっかりかせぎ、得点のしづらい建築・設備系分野では過去問に出題された基本的な問題はしっかり理解し、普通レベルの難易度の問題は得点できるようにすることが大切です。
法令系
(1)民法・区分所有法
マンション管理士試験と比較すると、民法の出題数が比較的多い特徴があるので、民法の基本的知識の理解が重要となります。
区分所有法は標準管理規約とも関連してくるため、基本をしっかり押さえることで差がつきます。
(2)標準管理規約
区分所有法で定めている原則を、標準管理規約で変更している部分、また区分所有法には規定がない部分を押さえることがポイントです。
(3)マンション管理適正化法
出題傾向は難しくないので、過去問を中心に基礎を押さえておけば得点源とすることができます。
管理実務系
(1)標準管理委託契約書
管理事務や、管理委託契約書についての基本的な知識だけではなく、細かい知識も問われますので応用問題でも得点できるようにすることが大切です。
(2)会計
簿記の仕訳に関する問題が例年2問出題される傾向にあります。
簿記を苦手とする方でも仕訳は比較的得点しやすいところですので過去問レベルは解けるようにしましょう。
建築・設備系
範囲が広く、細かな知識を問われるため、苦手分野となりやすく得点しづらい分野です。
基本的知識と、過去問で問われたところは確実におさえたうえで、細かい知識をできるだけ身につけることで差がつきます。
【Q&A】マンション管理士試験・管理業務主任者試験の問題を解くコツと勉強法
アガルートアカデミーによく寄せられる質問に工藤美香講師が回答。
問題を解くコツや細かな勉強法について解説していますので、是非参考にしてみて下さい。
Q:マンション管理士試験の問題の読み方や引っ掛け問題への対処法を教えて下さい。
A:問題文の表現に慣れるまで繰り返すのが一番です。
合格なさる方は過去問を5~8回は繰り返す方が多いです。
問題を解けるようになることももちろん大切ですが、解説と見比べて、「この表現はこの意味か」と、言葉の意味としても紐づけしていくことが大事です。
※アガルートのFacebook質問制度では、「問題文の意味」の質問も大変多いのでお答えしています。
Q:マンション特有の意地悪問題ってどうやったら解けるの?
A:4肢すべてが意地悪なことはまずないです。
基本をしっかり押さえて、まず切れる肢がないか探すこと(確実に正しい、又は誤りのもの)、そして頭文をしっかり読むことです。
頭文の前提を意図せず読み飛ばしていることがあります。
Q:ありとあらゆる問題集をやりました。だけどいつもマンション管理士試験合格まで1点か2点足りません。何をしたらいいのでしょうか?
A:マン管の出題は、区分所有法と標準管理規約で約20問を占めています。
この二つの違いをしっかり理解して、得意科目にすることが合格の近道です。
Q:マンション管理士試験のその年に出た問題って、翌週の管理業務主任者試験に向けてやったほうがいい?
A:勿論全く同じ問題は出ませんが、傾向としては、比較的論点が似た問題が出題されることがあります。
学習範囲自体がほとんど重なっていますので、ざっと目を通されると、忘れていた部分や曖昧だった部分の直前期の確認になるかもしれません。
関連記事:マンション管理士と管理業務主任者のダブル受験を目指すには?難易度の違いは?
マンション管理士・管理業務主任者試験の合格カリキュラム
マンション管理士試験・管理業務主任者試験は、けっして簡単な試験ではありません。
それなりの勉強時間を確保して、計画的にコツコツと勉強を続ける必要があります。
独学でも合格できないわけではありませんが、独学に不安を感じる方は、資格講座などを検討してみましょう。
アガルートアカデミーでは、マンション管理士試験・管理業務主任者試験に合格できるよう、独自のカリキュラムを提供しています。
なお、アガルートの受講生の令和3年の合格率は34.9%となり、全国平均の3.52倍となります。
ダブル受験にも対応していますので、マンション管理士試験・管理業務主任者試験を目指されている方は、是非こちらをご検討下さい。