2012年10月29日、今回の取材はバリ島のおいしいコーヒーを訪ねます。歴史あるコピ・バリのコーヒー工場と、上質な豆を扱う専門店のUCCIにお邪魔しました。
インドネシアのコーヒーで最も注目を集めている銘柄といえば、ジャコウネコの糞から採集される最高級品「コピ・ルアック」です。珍味に目がないスタッフ・ムナコが、さっそくレポートしてきました!
コピ・バリ 工場見学


コピ・バリのコーヒー工場はデンパサールにあり、渋滞がなければジンバランからは車で20分ほど。
1935年創業の「バタフライ・グローブ」は蝶がトレードマークです。広い敷地内にはトロピカルツリーが植えられ、花が咲いていたり果物が生っていたりと明るい雰囲気です。
本日工場内を案内してくれるのは、大学で日本語を学んだというネティさん。
笑顔のかわいい小柄な女性です。
この工場で唯一の日本語ガイドだそうです。
コーヒーの三大品種は、アラビカ種・ロブスタ種・リベリカ種。
工場の敷地内には、サンプルとしてアラビカ種とロブスタ種のコーヒーの木が植えられていました。
品種によって葉っぱのかたちも、実の大きさもまったく違っています。
味わいも香りも優れているのはアラビカ種。
バリ・コピで焙煎しているコーヒーは、すべておいしいアラビカ種を使っているそうです。
そして、このアラビカ・コーヒーを好んで食べる動物がジャコウネコです。
コーヒーの木の傍で、ケージに飼われていました。
同じコピ・ルアックでも等級があり、最上級は野生のジャコウネコの糞から作ったもの。
なぜなら、野生のジャコウネコがもっともグルメで、いい実を選んで食べるからだそうです。
その次が、人間が飼育しているジャコウネコを使って人工的に作ったコピ・ルアックです。
工場で飼われている2匹のジャコウネコは、夜行性のためか眠たげに横になっています。
毛皮がふかふかで可愛かったですよ。
コピ・ルアックを飲む目的で取材に訪れましたが、まさか生産者(生産猫?)本人に会えるとは思っていなかったので、嬉しい誤算でした。
こちらのカゴに入っているのが、ジャコウネコの糞です。糞はコーヒー豆のかたまりになっていて、匂いもありません。
洗浄後はこんなかんじになります。
コピ・ルアックの起源は、オランダ植民地時代に遡ります。地元の農民たちは輸出用のコーヒーを栽培するばかりで、自分達で楽しむことは禁じられていました。そんなとき、森でジャコウネコの糞に残っていた未消化の豆を発見し、焙煎して飲むようになったのが始まりだそうです。
確かにこういった糞なら、抵抗なく飲んでみようという気になるかもしれませんね。
コーヒー倉庫
敷地内には大きな建物がたくさん建っていますが、ネティさんに案内されてそのうちのひとつに入ります。
中には、大きな袋の山がぎっしり。これがすべてコーヒーだそうです。
2年ほどここに備蓄したのち、美味しく焙煎できる頃合をみて加工したり、輸出したりするそうです。
その量は年間約800トン!!
インドネシアのコーヒー豆生産量は現在世界3位だそうですが、その勢いの一端を目の当たりにしました。
この倉庫の一角は、ちょっとしたコーヒー資料館のようになっています。
コーヒー製造に関わる古い器械や、雄豆・雌豆のサンプルを見ることが出来ますよ。
コーヒー豆には雄と雌の区別があるということを、ネティさんの解説で初めて知りました。
ピーベリーと呼ばれる雄豆は貴重で、全収穫量の5パーセント程しかとれないそうです。
焙煎部門
倉庫を見学した後は、いよいよ工場の心臓部へ。
コーヒー豆の袋の谷を抜けて、焙煎部門へと入っていきます。
ここではコーヒー豆を焙煎する機械と、焙煎済みの豆を加工する機械が絶賛稼働中です。
大きな釜でローストされた豆が、ダクトからザザーッとなだれ落ちてきます。
こちらが、たった今焙煎されたコーヒー豆。
出来立てほやほやの豆はまだあたたかく、
てのひらにその温度が伝わってきます。
鼻を近づけると、ほんのりと香ばしい香りがしました。
2台目の機械では、ローストした豆を荒引きや粉末に加工しています。
パウダースノーのように細かく粉砕されたコーヒーは、インスタントではありません。
粉末コーヒーはバリで一般的に好まれている飲み方で、
粉に直接熱湯を注いで作ります。
挽きたてのコーヒー粉から、何ともいえない芳香が漂ってきます。
選別とパッキング
コーヒー豆を焙煎したからといって、そのままパッキングして終りではありません。
ここで、大粒の良い豆と割れたりしたクズ豆をよりわけています。
びっくりしたのが、先ほど説明を受けた雄豆、雌豆も彼女たちが手作業で選別しているということ。
たしかに機械任せには出来ない仕事ですが、コーヒーを一袋作るのにこんなにも手間暇かけられているのか、と頭が下がります。
選別に通ったものだけが、商品として出荷されていきます。
コピ・バリのこだわりの高品質を一身に担う部門ですね。
選別を経てコーヒー豆はそれぞれのパッケージに詰められ、バリ島内の免税店や、アメリカなどの海外に送り出されていきます。
化粧箱はバリ島らしい可愛いものばかりで、
おみやげにもぴったりですね♪
コーヒーのアートギャラリー
さてコーヒー工場には、コーヒー生産の作業場の他にも、ちょっと変わったスペースがありました。
こちらは、コーヒーにまつわるアートギャラリーです。
まず目を惹くのは、コーヒーの茶色を彩色に生かした大きなキャンバス作品です。
コーヒーの濃淡だけで、動物や人物が生き生きと描かれていました。
他にもコーヒーの木の根を使った彫刻など、コーヒー工場ならではの加工品がたくさん展示してあります。
コーヒー豆をただ摘んで焙って売るのではなく、こういう遊び心があるのはいいですよね。
専用スペースでテイスティング
ギャラリーの奥の扉を入ると、そこがコーヒーの試飲スペースです。
今日はコーヒー工場に足を踏み入れてからというもの、
コーヒーについて学び、豆に触り、香りをかいできました。
こちらの試飲スペースではようやく舌でコーヒーを味えるので、嬉しい限りです!
試飲スペースはブラックとホワイトでシンプルにまとめられ、ちょっとした喫茶店のようになっています。
作業場の喧騒から遠ざかり、落ち着いて飲み物を楽しめる雰囲気は嬉しいですね。
席に着くと、かわいらしいカップが3つ目の前に並びます。
試飲させていただくのは、バタフライ・グローブのゴールデン(雌豆)のホットとアイス、そしてピーベリー(雄豆)です。
ゴールデンは、コーヒーの王道!といった安心感のあるお味。
しっかりとしたコクは、アイスコーヒーの中でもきちんと生きていました。
取材日はとても暑かったので、おいしいアイスコーヒーで生き返るようでした。
初体験のピーベリーはというと、コーヒーの味をさらに凝縮したような、独特の風味がしました。
ブランデーや葉巻と相性がよさそう・・・
そんなイメージです。
ここでコピ・バリの方から、「コピ・ルアックを飲んでみますか?」という願ってもない申し出をいただきました!
ゴールデンとピーベリー同様、エスプレッソでいただきます。
一応動物の糞から出来たコーヒーということでドキドキしながらカップに口をつけましたが、
意外にもさらっとしたお味。
エスプレッソにもかかわらずスルスルと飲めるので、
お砂糖を入れなくても平気です。
コーヒーっぽくないといえばコーヒーっぽくないのですが、
いつものコーヒーに比べてまろやかなので、私はとっても気に入りました。
しかしここでちょっと不思議なことが起きました。
「コピ・ルアックはクセがなくて飲みやすい!」というムナコに対して、「すごくクセがある」と真逆の感想を持った撮影担当のサトゥー氏。
コピ・ルアック独特の風味というのは、ジャコウネコの体内で消化液が豆に染み込み、
化学変化を起こした結果生まれるものだそうです。
ケモノ由来の旨味成分を美味しいと感じるか否かが、コピ・ルアックを気に入るかどうかの分かれ目なのでは・・・と勝手に考察するムナコでした。
これを誰かに飲ませるなら、ジビエやモツ料理が好きな友人を選んで勧めてみようと思います。
ところで、コーヒーをたくさん飲むと利尿作用でトイレが近くなりますね。
工場の敷地内にはちゃんと見学者用トイレが設置されているので大丈夫です。
室内は清潔で、個室のトイレットペーパーも完備されていました。
ツアーの途中でコピ・バリに立ち寄る方は、
安心して利用してくださいね。
バリ・コピの工場見学はこれにて終了ですが、バリのおいしいコーヒーを訪ねる取材はまだ続きます。
コーヒー専門店UCCI
工場を後にし、サンセットロードを一路UCCIへ。
UCCIは1945年の創業以来、親子3代でコーヒー事業に携わっている老舗店。
原産地での豆の見極めから焙煎方法まで、社長の厳しいこだわりで品質を守ってきたそうです。
UCCIクタ店にて、現社長のリリスさんが出迎えてくださいました。
彼女は東京の音楽大学に通っていたこともあり、日本語が堪能です。
店舗には彼女の他にも日本語がペラペラなスタッフが常駐しているので、
日本人ツーリストはいつでも納得のいく説明を受けながらコーヒーを買うことができます。
UCCIの店内は、とにかく試飲と試食に重きを置いたレイアウト。
U字型のテーブルで、お店で扱っているすべての銘柄を試すことが出来ました。
コーヒーはトラジャ、バリキンタマーニ、ピーベリー雄豆(幻コーヒー)、百年樹齢コーヒーガヨマウンテン、
そして紅茶のオレンジペコです。
ピーベリー雄豆のパッケージにジャコウネコのイラストが描いてあると思ったら、これもコピ・ルアックなのだそうです。
ただでさえ高級なコピ・ルアックの中から、さらにピーベリーだけを選り分けたという逸品!
このピーベリー・ルアックに、「幻コーヒー」という商品名がつけられているのも納得です。
コピ・バリで試飲したピーベリーはクセが強く感じたのですが、
UCCIのピーベリー・ルアックは味がやわらかくて飲みやすいと思いました。
一日に2種類のコピ・ルアックを飲んだことで、ジャコウネコの消化液が起こす化学反応を実感しました。
このお店で幻コーヒーと双璧をなすのが、100年樹齢コーヒーガヨマウンテン。
スマトラ島のガヨ山でとれた、どっしりとした風味が特徴でした。
バリ島でお馴染みのキンタマーニコーヒーも
デイリーにぴったりと名高いトラジャコーヒーも
好きなだけ試せるので、コーヒー通にはたまらないお店ですね。
4種類の銘柄はどれもテイストが違っていて、
同じコーヒーでもこんなにも違うのかと目から鱗です。
スマトラ産のオレンジペコも、
日本の新茶のようにおいしいですよ、とリリス社長のお墨付き。
そしてUCCI に行ったらぜひ食べたいもうひとつの商品が、幻ピーベリー雄豆チョコレート。
上記のピーベリー・ルアックが、まるごと練りこまれた手作りの板チョコです。
乳成分を使用していないので、常温でも溶けたり風味が変わったりすることがないそうです。
カリッとローストされた豆がビターチョコの絶妙なアクセントになった、大人のおやつ。
赤ワインのおつまみにも合いそうです。
UCCIはピーベリーチョコレートの他にも、
オリジナルのお菓子を取り扱っています。
ピーナッツクッキー、ココナッツクッキー、
チーズクッキー、すべて試食が出来ました。
店内でコーヒーとお菓子をいただいていると、
家でひとりで飲むときはこの銘柄、とか、
友達とおしゃべりするときはこのお菓子と組み合わせて出そう、なんて楽しい想像が膨らみます。
またUCCIでは、店舗のそばに小さなゲストハウスも建設中とのこと。
完成すれば、バリ島一おいしいコーヒーの飲める宿泊施設になるのではないかと楽しみです。
最後に
普段は紅茶派の私ですが、インドネシアのコーヒーの魅力を堪能した一日でした。
貴重なコピ・ルアックを味わえたのはいい経験になりました。
コピ・バリのコーヒー工場は世界遺産ツアーで立ち寄るスポットのひとつですが、ツーリストを受け入れる体制がととのっているので楽しく見学できるでしょう。作業中のスタッフも、みなニコニコと迎えてくれます。
バリ島旅行のおみやげにコーヒーを、と考えている方は、
UCCIは必見ですね。
自社の焙煎機を使って、毎日新鮮な豆を店頭に並べています。
さまざまな銘柄を惜しげもなく試飲させてくれるので、コーヒー好きの方も初心者の方も、インドネシアコーヒーの世界を深く知ることが出来そうです。
※本レポートは体験時の情報に基づき作成しております。 金額、内容、スケジュール等は予告無く変更される可能性がございますのでご了承ください。 また、レポート内容には体験者の主観的な意見・感想が含まれていますが、全ての方にこれを保証するものではありませんので、あくまで参考としてご利用下さい。