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(史子)今 梅津先生は 歌人として一番大事な時期です。
すばらしい第一歌集を出していただくために私も精いっぱい支えたいなって思ってます。
そやから 先生のそばにおること悪く思わんといてくださいね。
(久留美)何て?貴司君に近づくなってこと?
(舞)ただ 貴司君の力になりたいだけやと思う。
舞も舞やで。
何で黙って引き下がんの。
秋月さんな 貴司君の短歌のことよう分かってはんねん。
けど私は…今の貴司君に できることないねんな。
何言うてんの。
どんな時でも自分にできること 探すのが舞やろ?
うん…。
♪~
♪「公園の落ち葉が舞って」
♪「飛び方を教えてくれている」
♪「親切にどうも」
♪「僕もそんなふうに」
♪「軽やかでいられたら」
♪「横切った猫に」
♪「不安を打ち明けながら」
♪「ああ 君に会いたくなる」
♪「どんな言葉が 願いが景色が」
♪「君を笑顔に幸せにするだろう」
♪「地図なんかないけど歩いて探して」
♪「君に渡せたらいい」
♪「道のりと時間を花束に変えて」
♪「君に渡せたらいい」
♪~
(鼻歌)
どうぞ。
(史子)どうぞ。(貴司)ありがとう。
(鼻歌)
(北條)何でいんの?
見学させていただきます。 後学のために。
本音は?
尊敬する先生を 俗物から守りたい?
ご明察です。
10首 読ましてもらったけどさぁ。
駄目だね。(史子)駄目って…。
これまでの歌と変わってない。
あまりにも地味。
失礼ながら読み取る力がおありにならないのでは?
秋月さん…。私には 伝わりました!
じゃあ 2人だけで通じ合ってればいい。
梅津さんはさぁ本当に歌集を出したいと思ってる?
はい。何で?
歌集を出したいんならさちゃんと大勢に伝わる歌を書いてよ。短歌を作るってことは自分の中の本当の気持ちを差し出すってことでしょ。
梅津さん 何か…伝えることを諦めてる気がするんだよね。
自分だけの狭~い世界で満足してる。
僕が出版したいのは 売れる歌集なんだよ。
このままじゃ 梅津さんの歌集は出せない。
それじゃ ごちそうさま。
失礼。
♪~
先生。
元気出してください。
北條さんは 歌集を売ることしか考えてへんのです。
たとえ ほかの人に理解してもらえなくても先生の歌のよさは私がちゃんと分かってます。
自信持って先生らしい短歌を作ってください。
ありがとう。
♪~
(めぐみ)舞。ん?
どないしたん。
あ… フフフ 何もない。
御園さん 来はんの忘れんといてな。
舞に もっと話聞きたいねんて。
うん 3時やっけ。うん。うん。
(御園)そう お父さんが残してくれた工場を なんとかしたかった。はい。
偉いなぁ…。
でも もったいないよね。
パイロットになれるとこだったんでしょ?
後悔してない?してません。
本当に?本当です。
ふ~ん。
みんなで力合わせて ねじ作んの楽しいんです。
うちは ええねじ作ってるって誇りに思えるのも うれしいですし。
この工場も 私自身ももっともっとできること増やしていきたい。
そう思うと ワクワクするんです。そっか。
実はね 私の実家も町工場だったの。
そうなんですか?うん。
もう だいぶ前に 閉めちゃったんだけどその時 工場を残したいとか継ぎたいとか思わなかったから舞さんのことが気になる。
今 28歳だっけ?はい。
仕事以外は どう?仕事以外?
つきあってる人 いる?ああ… いません。
じゃあ 好きな人は?好きな人…。うん。
(久留美)貴司君のこと 好きなんやろ?
ええ友達やなぁ思て。
舞さん?あっ いや…好きな人もいないんです。
今日さ 仕事のあと時間ある?
アハハハハハハ!
で? 好きな人は どんな人なの?
せやから いません。
あのね ごめんね新聞記者ってうそを見抜くのも仕事のうちなのね。
やっぱり!
両思い?いや… 違います。
何… 向こうは気持ち知らないの?
はい。 けど… これでええんです。どうして。
ちっちゃい頃から何でも話してきた人なんで。
その関係変わってしまうん怖いんで…。
まあ いいけどね。
大事なのは 恋愛だけじゃないし。
そう思います?うん。
私は もう恋愛も結婚もしない。
何でですか?身軽でいたいから。
私の人生だし 自由に好きなことをしたい。
でもさ 舞ちゃん。
後悔しない?
夜遅いし 帰った方がええよ。
座敷わらしやと思って 無視してください。
フフ…。
やっと笑ってくれはった。
北條さん。
もういっぺんだけ 話そうか。
あと10首なんだよ。
たった10首だけ書いてくれれば本を出せる。
これまでの300首とは毛色の違う10首をね。
それって 人目を引くための10首ですよね。ああ そうだよ。
本を売るために書かせるなんてあなたのエゴです。
梅津先生のよさは 野の花のような歌を書かれるところにあって…。
君の方が エゴイストだよ。どこがですか!
自分好みのきれいな短歌だけ書いててほしいんでしょ。
美しいソプラノを聞きたいがために少年の成長を止めるような残酷さを感じるね。
梅津さん。 自分の殻を破って初めて歌人は成長する。
自己満足の歌は もう要らない。
一人でも多くの人間に伝わる歌を書いてほしい。
梅津さん 成長しないと。
いつまでも同じではいられないんだ。
分かりました。
よし。 じゃあ まずどんな歌が欲しいかだけどさ。
はい。
恋の歌を書いてくれ。
伝えたいけど 伝えられない思い胸の奥で燃えている恋心それを歌にするんだ。
みんな 飢えてんだよ そういう歌に。
情熱的な恋 経験あるでしょ?
まあ なければ フィクションで。
♪~
(ため息)