大阪市西成区の木津川で2009年11月、群馬県高崎市出身の医師、矢島祥子さん=当時(34)=の水死体が見つかった事案を巡り、矢島さんの遺族が9日、上毛新聞の取材に応じた。大阪府警は殺人事件も視野に捜査を進め、府議会でも取り上げられたが、事態は進展していない。矢島さんの父、祥吉さん(77)は「遺体の状況などから自殺とは考えられず、警察の対応には歯がゆい思いがある。12年がたつが、引き続き真相究明に努めてほしい」と訴えている。

 捜査状況などに関し、8日の府議会本会議で川岡栄一氏(公明)が一般質問。答弁に立った井上一志府警本部長は「『犯罪の疑いあり』と考えて捜査しているが、『犯罪である』ということを明確に断定できる状況には至っていない。事件と事故の両方の観点から捜査している」と述べた。

 川岡氏は、医師でもある矢島さんの両親の手紙を紹介し、「死体を発見した2人の釣り人について捜査したのか、西成署から私たち遺族は何も聞いていない。捜査の結果を教えてほしい」と読み上げた。

 遺族は矢島さんが事件に巻き込まれた可能性が高いとして、現在も大阪でのビラ配りなど情報提供を呼び掛ける活動を行っている。8日の府議会本会議を傍聴した母の晶子さん(76)は「真実が明らかになるまで、活動を続けたい」と語気を強めた。

 府警は当初、自殺の可能性が高いとしていたが、12年に矢島さんの両親が「何者かに殺された可能性が高い」として、容疑者不詳のまま殺人と死体遺棄容疑の告訴状を西成署に提出。同署は受理し、死体遺棄の疑いについて容疑者不詳とする捜査結果を大阪地検に送付した。同容疑については同年に時効が成立した。