1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

裁量労働制で過労死ライン超え、労組も頼りにならない職場…対処法は? 労働弁護士が徹底解説

弁護士ドットコムニュース / 2023年2月13日 9時59分

対象業務が不明確なので濫用されやすく、一度適用されれば、労働者にとって大きな不利益がありうるという点が、第一の問題点なのです。

●裁量労働制が適用されたらどうなるの?

一番問題なのは、「労働時間」が「みなされる」ということです。

具体的にいいますと、実際には月100時間の時間外労働をするような仕事であっても、「時間外労働は20時間とみなす」と決めてしまえば、労働基準法上、20時間しか働いていないことになります。20時間分の残業代を払えばOKという制度なのです。

労働基準法では、36協定の上限規制というものがあり、100時間の時間外労働(休日労働を含みます)をさせると「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科されることになっています(ただ、自動車運転業務など一定の業務は適用除外となっています)。これとの関係でも、20時間しか働いていないことになりますから、刑事罰を免れるために濫用される危険もあります。

20時間分の残業代で100時間も働かせることができるなら、多くの雇い主はこれを導入したくなりますよね?しかも、適用対象が不明確なら「とりあえず適用してしまえ!!」という雇い主が出てきたって不思議ではありません。

●雇い主が自由に企画業務型裁量労働制の適用を決められるの?

雇い主の一存で企画業務型裁量労働制が適用されてしまうと、さすがに危険ですので、労働基準法では、労使委員会という組織で企画業務型裁量労働制を適用するか、適用する場合の健康福祉確保措置、苦情処理措置などを決めなければならないことになっています。

この委員の半数は、事業場の過半数労働組合があればその組合から選ばれた人、ない場合は労働者の過半数を代表する者から選ばれた人でなければなりません。

これにより、企画業務型裁量労働制を取り入れて大丈夫なのか、労働者にとって、また、会社にとってメリットがあるのかなどが、労働者の目線で検討されることになります。

しかも、労使委員会では5分の4以上の多数による決議が必要とされていますので、労働者にとって不利益が大きいと判断されれば、企画業務型裁量労働制が採用されることは通常考えられません。

●福岡銀行では労働組合が機能しなかったの?

しかし、九州有数の企業であり、労働者の利益を代表する労働組合もしっかりしていそうな福岡銀行において、企画業務型裁量労働制が適用され、過労死ライン(月80時間の時間外労働)を超える残業が発生してしまいました。

あなたにオススメ

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング