国防の危機 日本の「無抵抗主義」では中国「気球」に攻撃すらできない いくら防衛費を増やし反撃能力持とうが…乏しい「ウクライナの教訓」
zakzak by夕刊フジ / 2023年2月14日 6時30分
まもなくウクライナへの侵略から1年がたつ。この間、多くが語られてきた。私も昨年、「夕刊フジ」で「ウクライナの教訓」を連載した。連載をまとめた同名の単行本(扶桑社)は昨年、「咢堂ブックオブザイヤー大賞」(外交・安全保障部門)に選ばれた。関係者に感謝したい。
拙著の副題は「反戦平和主義が日本を滅ぼす」。反戦平和主義には「パシフィズム」とルビが振られている。拙著「まえがき」でこう書いた。
「最大の問題は、命と平和の大切さだけが語られる日本の現状だ。昭和、平成、令和と、戦後日本を、そうしたパシフィズム(反戦平和主義、反軍平和主義、護憲平和主義、絶対平和主義)が覆っている」
このとおり日本語に訳しづらいが、『リーダーズ英和辞典』(研究社)は「反戦論」「平和主義」といった訳語に加えて、「無抵抗主義」とも訳す。今から思えば、この訳語のほうが的確だったかもしれない。
米軍は4日、中国の「偵察気球(スパイ気球)」を、最新鋭ステルス戦闘機「F22ラプター」で撃墜した。同様の事態が起きた場合、日本はどうするのか。自衛隊法はこう定める。
「防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる」(84条)
対領空侵犯措置を定めた条文である。一般的な語釈でも国際法上も、気球は右の「航空機」に含まれる。ならば「着陸」も「退去」も無理な場合、米軍同様、撃墜できるのか。2月6日付「日経新聞」朝刊記事を借りよう。
《2020年6月に宮城県上空などで気球のような物体が漂った。当時の河野太郎防衛相=顔写真=は「レーダーなどで警戒監視を続けている」「安全保障に影響はない」と述べるにとどめた。他国による領空侵犯だとは認定しなかった》
そのほか、「これまで気球による領空侵犯について確認して公表した事実はない」(防衛省報道官)という。右記事は「気球の早期の撃墜を探っていた米国と比べると、武器使用には抑制的に対応すると想定される」とも報じたが、そもそも、「領空侵犯」でないなら、武器使用すらできない。
いくら防衛費を増やし、どんな「反撃能力」を持とうが、これでは気球にも〝抵抗〟できない。この1年、日本が「ウクライナの教訓」を学んだ形跡は乏しい。
うしお・まさと 評論家・軍事ジャーナリスト。1960年、青森県生まれ。早大法学部卒業後、航空自衛隊に入隊。第304飛行隊、航空総隊司令部、長官官房勤務などを経て3等空佐で退官。拓殖大学客員教授など歴任し、国家基本問題研究所客員研究員。著書・共著に『誰も知らない憲法9条』(新潮新書)、『尖閣諸島が本当に危ない!』(宝島社)、『ウクライナの教訓 反戦平和主義(パシフィズム)が日本を滅ぼす』(育鵬社)など。
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