メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

Colabo叩きは旧統一教会に代わるサイバージェンダーバックラッシュだ

膨張・巨大化する陰謀論の刃から国民の安全を守ってほしい

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

「女子トイレ不正利用疑惑」という筆者へのデマ

 私自身も、ネット右派から「不正をしている!」というデマ・バッシングの被害に数え切れないほど遭っています。その中で最も多いのが、女装して女子トイレを不正に利用しているという疑惑です。

 私は男性の身体に違和感がない「無性型」のノンバイナリージェンダーであり、女性性は存在しません。そのため、トイレは男子用を利用しています。ところが、私が(男性の割には)やや濃いメイクを好むようになったここ数年、「女子トイレを利用している」というデマ・バッシングが悪化の一途を辿っています。

 他にも、「実績不正申告疑惑」は日常茶飯事です。たとえば、これまで山を2000座以上登ったことに対して、「噓松w」「(標高4.5mほどの大阪の)天保山に2000回登ったんだろw」「ネタでやっててもおもんないわ」「毎日一つ登っても6年かかるのに?」「日本国内の低山は300しかないのに」「繋がっている山を複数縦走したのを通常登ったとは言わない」と叩かれました。

 また、63.8kmのランニングをしたことについては、「本当は6.3kmだろw」「フェミニストって本当虚言癖がすごいよな」「設定が甘過ぎる作り話確定」「どうせ車使ったんだろw」「これが事実なら五輪選手になれそうだ」「適当に噓つけばいいみたいに思っているんだろうな。失礼だよね、普段から走っている人とかに」「疲労感や達成感すら知らないだろ」などと言われたこともありました。

 ちなみに、私の山登りもランニングも、GPSトラックログやそれが集計されたデータをネット上に公開済みなので、ちょっと調べれば嘘ではないことがわかります。

Shal Liubov/Shutterstock.com拡大Shal Liubov/Shutterstock.com

一人の被害者としても、陰謀論者を取り締まって欲しい

 お分かりいただけたでしょうか。いずれのケースも、ブラジル・アメリカの不正選挙疑惑やColaboの公金不正受給疑惑と発想が全く同じで、「不正をしたに違いない!」という疑惑を何の根拠もなく信じ込んで攻撃してくるわけです。

 現代は、選挙不正のような大きな話に限らず、権力者でもない一個人が、突如根拠もなく「不正だ」という疑惑に晒される時代であり、いずれあなたや身の回りの人たちが被害に遭っても不思議ではないように思います。

 私はこのような誹謗中傷を受けてもメンタル的には何らダメージはありません。ですが、取引先や顧客に対してデマをバラまく妨害行為が酷く、過激化も考慮して警戒・警備を芸能人並みに厳重にせねばならず、事業展開の非常に大きな足かせとなっています。偽計業務妨害を適応して欲しいと思っているものの、現状で警察が動くことはほぼなく、ネット社会に全く対応できていません。

 一人の被害者として、一刻も早く法改正等が行われ、ネットでデマを流す行為に対して確実に業務妨害罪を適用したり、ストーカー規制法を恋愛感情以外に基づく加害者や面識のない匿名アカウントの加害者にも適用したり、登記簿に記載された個人情報へのアクセスを一部の利害関係者(債権者等)に限定することを願ってやみません。

デマ時代にメディアに期待したいこと

 ですが、正直なところ、世界情勢を見ても、おそらくデマ・バッシング社会は今後日本でもますます進展することでしょう。それが急速に進むか、ギリギリのところで食い止められるか。Colaboバッシング問題はまさに時代の分水嶺になると思っています。

 旧統一教会が尽力した過去のバックラッシュは、日本社会でさほど大きな問題として扱われず、その結果、日本の性教育とジェンダー平等推進は数十年も遅れたと思います。その二の舞になりかねない最近の事態に、日本社会はもっと強い危機感を持つべきでしょう。

 近い将来、都議会襲撃やフェミサイドのようなより激しい襲撃事件に発展しても不思議ではないところまで時代は来ていると思います。マスメディアには、これらの問題を通じて「根拠なく不正だという“疑惑”を生み出す人たちが膨張する時代の到来」について、警鐘を強く鳴らして欲しいものです。

全ジャンルパックなら21100本の記事が読み放題。


筆者

勝部元気

勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家

1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

勝部元気の記事

もっと見る