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Colabo叩きは旧統一教会に代わるサイバージェンダーバックラッシュだ

膨張・巨大化する陰謀論の刃から国民の安全を守ってほしい

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

バックラッシュを起こすのは陰謀論者だけではない

Nubefy拡大Nubefy/Shutterstock.com

 ここまで過激な例をあげましたが、このバックラッシュに参加しているのは、必ずしもそのような過激な匿名アカウントとは限らず、知的階層の人々も多数います。

 「不正をしている」というシナリオを信じるのは、陰謀論者でなくても誰しも陥りかねない落とし穴ですから、陰謀論者とそうではない人の境界はあいまいです。また、陰謀論に基づいたデマやバッシングに対する拒否感よりも、「被害に遭っている側の人間のほうが気に食わない」という感情を優先させた結果、バックラッシュに加担する人もいます。

 たとえば、普段はファクト確認の重要性を訴えている研究者や医療系のインフルエンサーの中には、Colaboバッシングが起こった経緯、委託業務の常識、Colabo側の主張、女性支援の実態等を知らずに、Colaboや仁藤氏に対して否定的な発言をしている人が少なくありませんでした。

仁藤夢乃氏を「過激だ」というのは典型的トーンポリシング

 また、仁藤氏に対して「発言が過激」「攻撃的」「もっと穏便にやればいいのに」などと評する「トーンポリシング」も目立ちました。例えば「クズ」「頓馬」「ウヨ豚」「ノータリン」等の暴言を多用する男性論者を「辛口トーク」と評価する人が少なくないのに対して、その手の暴言を吐かない仁藤氏が過激だと評価されるのはアンバランスです。

 そもそも、仁藤氏の言動は、男性たちからのセクハラ発言、マンスプレイニング(女性が無知だと決めつけて上から目線で相手が望まぬアドバイスをすること)、買春という性搾取の肯定など、「自身や女性全体の尊厳が何かしらの被害を受けたことに対して反発する心情の表明」が大半です。ただ口が悪いだけの人とは比較すらしてはならないものなのです。

 加害者の批判をせずに被害者の口調や態度にあれこれアドバイスするのは、典型的な「victim blaming(被害者非難)」であり、自己責任論の一種です。自分は被害者の味方だと思っているのかもしれませんが、彼らに自己責任論をぶつけているに過ぎません。

 このように、本人は不正疑惑の陰謀物語を信奉していなくとも、ミソジニー、ジェンダーバイアス、自己責任論等、別の理由により、結果的にバックラッシュを側面支援する人が少なくありません。ですから、Colaboバッシングを陰謀論者の問題に終わらせてはならないと思うのです。

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筆者

勝部元気

勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家

1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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