日本人が金を稼ぐため、収容所から特殊詐欺を続けているというのだ。

場所は、「VIPルーム」と呼ばれる個室。携帯を使って、詐欺を行っているという。告発者がひそかに撮影したという映像には、出資をよびかける携帯のメッセージ画面が捉えられていた。

<いくつか案件ありますが資金調達は返済不要で海外から100~5000万を調達します。ただ弁護士を通して行う手続きがあるので>

儲け話があると持ちかけ、手数料をだまし取るというのだ。

さらに、警察官を名乗り、電話をする映像も寄せられた。「あなたは詐欺にあった可能性があります」と言って、銀行口座などの個人情報を聞き出すのだ。詐欺グループの数人がここで詐欺を続けているという。

グループの1人が、韓国人の男に説得され、電話取材に応じた。

「オレオレ詐欺をやっている仲間の業者が日本にもいる。だまし取ったお金を、雇った日本側の人間に受け取ってもらってこっちに振り込む、送金するというやり方」

施設の中で詐欺が行われるのには、理由があるという。

「この中に(A)という日本人がいるんですよ。みんな恐怖心をもっている。その人に対して。そいつが監視している状態なんで。いま携帯をいじるのもぶっちゃけ、自分がリスクを負いながら電話している」

入れ墨、小指欠損の男(A)の恐怖支配

報道特集のもとに寄せられた映像には(A)という日本人の男の姿があった。施設にいる一部の日本人を脅して、詐欺をさせているという。

証言をした詐欺グループの1人によると、入れ墨姿のこの(A)は暴力団関係者と名乗り、小指が欠損しているという。詐欺でだます相手とのやりとりを「仕事」と呼び、「仕事」が進んでいないと(A)の機嫌を損ねるという。

スプレー缶で頭を殴られる、首にタバコを押し付けられる、といった暴行も頻繁にあるという。

「看守の人たちも金さえもらえば、なんでも結構まかりとおるところがある」
詐欺グループの1人はそう証言した。

収容所内部から送られてきた映像には、職員に金を払い入手したという、ヒロポンと称する薬物を打つ映像や写真も含まれていた。

不法滞在で過去にビクタン収容所に入所していたというルポライターのキム・ユンニョン氏は収容所に5年以上いる韓国人や日本人に出会ったという。

「フィリピン人を雇って、自分を告訴させるのです。すると、フィリピンの法律で裁かれることになり、告訴が取り消されない限り収容所生活を続けられます。日本国内で問題を抱えた人が、フィリピンで時間稼ぎをしているのです」

(A)自身も「フィリピン国内で何件も裁判を抱えているため、日本には送還されない」と周囲に話していたという。

2020年の時点で、警視庁に連絡した人物がいた

収容所内で日本国内にいる人への詐欺行為が行われているらしいーー。この情報を2020年の時点で警視庁に知らせたという女性がいる。