単に2回線を持つのとは違うナゾの取り組み”の先…au&ソフトバンクの「デュアルSIM料金プラン」って何?
文春オンライン / 2023年2月12日 6時0分
た記者会見で通信障害について頭を下げるKDDIの高橋誠社長(右)ら(2022年7月)©時事通信社
昨年7月、KDDIが起こした大規模通信障害により、スマートフォンの通信ができなくなった。電話やメール、LINE、SNSが使えなくなるだけでなく、緊急通報もできなくなるなど、社会的に大きな影響を与えたのは記憶に新しい。
そんななか、通信業界では「万が一、障害が起きたときにも通信を維持できる取り組み」を進めつつある。
KDDIとソフトバンクではじまる「デュアルSIMサービス」って何?
2月2日、KDDIとソフトバンクは「デュアルSIMサービス」を3月中にも開始すると発表した。
「デュアルSIM」とは2つのSIMカードを使えるというものだ。SIMカードとはスマートフォンの内部に格納された契約情報が記録されたICチップのことを指す。
通常、一台のスマートフォンにはひとつのSIMカードしか格納できない。しかし、最近のスマートフォンでは2つのSIMカードを格納できる機種が増えてきた。
そこで、KDDIとソフトバンクは、au回線を契約しているユーザーにはソフトバンク回線、ソフトバンク回線を契約している人にはau回線を追加で契約できるようにすることにしたのだ。
つまり、一台のスマートフォンでau回線、ソフトバンク回線、両方使えるようになる。万が一、au回線が通信障害になってしまえばソフトバンク回線、ソフトバンク回線が通信障害になったらau回線が使えるというわけだ。
これにより、昨年起きたような大規模通信障害や災害でどちらかの通信回線が使えなくなっても、もう1回線で通信や通話を持続できるというわけだ。
気になる料金だがソフトバンク宮川潤一社長は「数百円の下の方にしたい」と語っている。
デュアルSIMには今でもすでにできるのでは…?
ただ、最近では、KDDIが月額ゼロ円で回線を維持できる「povo」というオンライン専用プランを提供していたり、それこそ数百円で電話とインターネットが使える格安スマホ会社も数多く存在する。わざわざ、KDDIとソフトバンクがデュアルSIMサービスを提供する意味はあるのだろうか。
ソフトバンクの宮川社長は「ソフトバンクショップの店頭でauの通信保険を販売、また逆にauショップでソフトバンクの通信保険を販売するイメージ。他のサービスとは似て非なるものではないか」という。
オンライン専用プランや格安スマホ会社は「ハードルが高い」と思う向きも多いが、ソフトバンクやauのショップで、オプション感覚で契約できるところがミソというわけだ。
通信会社の障害に備えて2つの携帯番号をもつのはユーザーの負担が大きいような…?
とはいえ、通信会社が障害を起こし、通信ができなくなった時に備えて、数百円のオプション料金を支払い続けて、2つの携帯電話番号を持つというのは、金銭的な負担が大きいような気がする。
しかし、宮川社長は、単に2回線を持つのとは違うサービスにしたいと抱負を語る。
「(いつも使っている番号とは別の)全然知らない番号で電話がかかってきたら、身内でも電話をとってもらえないのではないか。自分でも、息子からの電話と気がつかず、とらない可能性がある。
できれば発着信は同一番号でできるようにしたい。例えば、いまなら、iPhoneとApple Watch、これは同一番号で提供しているし、テクノロジー的には不可能ではない」と語る。
つまり、普段、auを使っている人がauの通信障害になってしまった場合、ソフトバンクの回線を使うことになるのだが、別の番号ではなく、普段使っているauの携帯電話番号でそのままかけられるし、着信できるようにしたいというわけだ。
ユーザーは、別の回線で発着信しているということを意識することなく、通常通りに電話やネットができるようになるのだ。
ただし、宮川社長は「どこまで現場が準備しているかは置いておいての話。こうした話し合いを現場でしていないのであれば議論を詰めないといけない。いまのところは僕の思いつきだ」という。おそらく、3月時点では同一番号での提供は難しいのは間違いない。サービス開始当初は2つ番号を持つことになるだろうが、将来的にはひとつの場号で2つの回線を使えるようになる方向性を目指すようだ。
ドコモや楽天のユーザーはどうなる?
今回のKDDIとソフトバンクの取り組みは、KDDIの髙橋誠社長がソフトバンクとNTTドコモに働きかけたという。ソフトバンクの宮川社長は「KDDIの髙橋社長から本気でやる気はあるか」と問いかけられ、トップ同士の交渉によりサービス提供が実現したという。
NTTドコモや楽天モバイルと交渉を進めているかについては「協議しているかも含めて、お答えできない」(宮川ソフトバンク社長)とのことだ。
ただ、宮川社長は「条件次第でどのキャリアともやる」とも言及している。NTTドコモとしても、絶対に自社のネットワークが通信障害を起こさないということはあり得ないので、今後、KDDIやソフトバンクとも交渉を進めていくことは間違いないだろう。ただし、サービス提供時期がいつごろになるのかは、いまのところは全くわからない。
iPhoneなら5年前の端末でも出来るデュアルSIM、仕事で使う人は…
ちなみにデュアルSIM対応機種だが、iPhoneの場合は2018年に発売されたiPhone XRやiPhone XS以降の機種で対応しているので、意外と「自分が持っているiPhoneでも使える」という人が多いのではないだろうか。
一方で、NTTドコモやau、ソフトバンクが販売するAndroidはこの1、2年でデュアルSIM対応になったばかりで、対応機種は少なめだ。
「スマホがないと仕事にならない。通信障害が起こっても、絶対に仕事を中断できない」というようなビジネスパーソンは、万が一の保険として、デュアルSIM対応スマホとデュアルSIMサービスは検討してもいいのではないだろうか。
(石川 温)
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