【再び人口集中、首位の座へ】
【転出超過(社会減)36エリア、83%が女性減>男性減】
またエリア格差が著しく、北海道は男性が-123人に対し、女性が-3353人となり、格差は27.3倍である。この大きな格差は北海道の「通常モード」であり、北海道の人口の社会減は「女性問題でしかない」といっていいだろう。ところが、残念なことにこの事実に直面した地元の政策立案に携わる関係者からは「そこまで酷いという実感がなかった。衝撃だ」という声を伺っている。地方創生に関して、なぜか男性の移動が女性よりも課題ととらえるアンコンシャス・バイアスが大きな影を落としている様子がうかがえる。北海道に続いて10倍を超える男女格差を見せる大分県、女性のみ転出超過のため社会減エリアとなっている群馬県、熊本県、栃木県などは、「人口減少対策を100%女性に振り切る」くらいの覚悟がないと、統計的にはエリアの人口減問題は解決しない、と断言してもいいだろう。筆者の前稿とも繰り返しになるが、出生数の増減と女性の社会増減は強い正の相関関係にあり、もはや都道府県間の合計特殊出生率の高低(地元女性の出生力)では、出生数の増減レベルの比較はできない状況にあることを強く確認しておきたい1。
【東京都への女性集中、コロナ禍で加速へ】
そして、その周りの通勤圏も含めた1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉=東京圏)で見るならば、男女ともに地方から消えた10人中9人が東京圏へと住み替えた。若い女性が激増すれば、当然、東京都の未婚女性割合は高まるので、合計特殊出生率2は低下する。しかし、若い女性が増え続けているので、婚姻数も出生数も地方よりもはるかに減少度合いは低く、全国で最も高水準の出生数を維持し続けることから、東京都は出生数の減少率が最も低い「非少子化エリア・ナンバー1」なのである。
とはいうものの、日本全体で見た若年男女の居場所アンバランスが生み出す未婚化社会は加速する一方である。
「沈まぬ東京、沈む地方」の人口動態メカニズムをしっかり把握し、
「少子化問題の主因が未婚化?既婚者の産む子どもの数が減ったからではないの?」
「未婚化って、いったいどうしてなの?」
といった、足元の実態を過去の価値観からくるバイアスで正確に読むことができないがゆえに発生している「日本の人口減少の背景を十分に理解できていないような致命的な質問」がなくなる日はいつになるのだろうか。
2 誤解が多いが、合計特殊出生率は夫婦が持つ子どもの数の平均値ではない。そのエリアに居住する全ての女性(未婚女性と既婚女性)の年齢別出生率の累積合計である。ゆえに未婚割合が高まれば、当然、合計特殊出生率は低下する。夫婦がもつ子どもの数の平均数が不変でも、この指標が独身割合の増加で低下することを看過してはならない。