首相秘書官の差別発言、なぜ毎日は「オフレコ破り」できたか 過去に「首相の頭が悪いから」「放射能つけたぞ」など
NEWSポストセブン / 2023年2月8日 11時15分
これまでも、政権幹部のオフレコ取材の内容が報道され、騒動になったケースはあった。
1995年10月、防衛施設庁長官が記者団とのオフレコの記者懇談で、沖縄の米軍基地強制使用問題について「(当時の村山富市)首相の頭が悪いから」と発言したことが報じられ、辞任した。同年11月にも総務庁長官がオフレコ懇談で「植民地時代、日本は韓国に良いこともした」と発言し、長官を辞任した。
2002年には福田康夫官房長官(当時)がオフレコの記者懇談で「非核三原則」見直しに言及したことが「政府首脳」発言として報じられ、後に自身の発言だと認めた。
続く2009年3月、漆間巌官房副長官(当時)がオフレコ懇談で西松建設の巨額違法献金事件の捜査について「自民党議員に波及する可能性はないと思う」と発言した。
2011年はとくにオフレコ取材に関する議論が活発化した年でもあった。同年7月、松本龍復興担当相(当時)が宮城県庁で知事と会談する際、先に応接室で待たされた格好になった松本氏が「お客さんが来る時は、自分が入ってからお客さんを呼べ」と発言した後に報道陣に「今の最後の言葉はオフレコです。いいですか? 皆さん。書いたらもうその社は終わりだから」と“オフレコ恫喝”した。東北放送(TBS系)が先陣を切り、連日大きく報じられる事態となった。被災地訪問での「知恵を出さないやつは助けない」発言などの問題もあり、就任してわずか9日で引責辞任となった。
同年9月、福島第1原発周辺の視察を終えた鉢呂吉雄経済産業相(当時)が東京・赤坂の衆院議員宿舎玄関ホールで記者団に「放射能をつけたぞ」という趣旨の発言をし、フジテレビが最初に報じた。鉢呂氏は会見での「死の町」発言もあり辞任した。
同年11月には、当時の沖縄防衛局長が飲食店での記者懇談で、米軍普天間飛行場の辺野古移設に関して「犯す前に、犯しますよと言いますか」と発言したことを、翌日に琉球新報が報じた。オフレコ発言だが、事前に沖縄防衛局に通告した上で、報道に踏み切ったという。その後、全国紙が裏付け取材などをして同日夕刊で報じた。
前出の元政治部デスクが語る。
「今回の秘書官の発言を報じた毎日新聞といえば、『桜を見る会』をめぐり安倍晋三元首相が追及を受けていた2019年11月と12月に飲食店で行なわれた安倍首相と内閣記者会(首相官邸記者クラブ)の記者との懇談会に、朝日新聞、読売新聞、共同通信など大半の社が出席するなかで欠席したことが話題になりました。その理由については紙面(2020年1月4日付)で〈懇談会は完全オフレコが条件です。懇談会での説明で少しでもメディアの追及が弱まればとの狙いがあったと思いますが、我々は説明を求めている立場なので出席することはできないと判断しました〉と当時の政治部長が語っていました。毎日新聞は、オフレコを理由に言論を封じるようなことに否定的な姿勢です。
どんなに公共性、公益性にかなう、報じるに値するような問題発言があったとしても、“オフレコ破り”はそれまで記者たちが築いた信頼関係を壊す可能性が高く、今後の取材にも影響するため、社内でも強い反発が出てきます。それでも行けという局の了承がないとなかなかできません。オフレコでも報じるべきか否か、今後もこの議論は続くでしょう」
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