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魚が獲れない日本「養殖でいい」は甘すぎるワケ 世界人口80億人、供給が追いつかない水産資源

東洋経済オンライン / 2023年2月9日 8時0分

一方で、増えた分をすぐに獲ってしまえば、元の木阿弥です。以下で資源をサステナブルにするセーフティーネットの有無と、その明暗がはっきりしている残念な結果の例を挙げてみます。

上のグラフはニシンの漁獲推移です。1980年代半ばに一時的に漁獲量が急激に増えていたことが読み取れます。もしも、この時に漁獲枠で数量規制をしていたら、規制で漁獲を逃れたニシンが産卵を続け、今よりもっとよい資源状態であったことに疑いの余地はありません。

上のグラフは、マダラ(北部太平洋系群)の資源量推移です。東日本大震災で、放射性物質の問題で漁獲圧力が大幅に下がり、一時的に資源量が急激に増えました。しかしながら漁獲枠がなく、幼魚まで獲り続けた結果、資源量は震災前の状態に逆戻りです。実にもったいないことをしましたが、時計の針は元に戻りません。

ノルウェーでは、マダラに関しては科学的根拠に基づく漁獲可能量(TAC)が設定され、40cm以下の漁獲は禁止となっています。一方で、わが国では手のひら程度のマダラまで漁獲されてしまっています。スピードを上げて資源をサステナブルにする制度を作らないと間に合わなくなってしまいます。

最後にこちらのグラフをご覧ください。極めて少ない資源増加のチャンスを確実にものにしている例です。ズワイガニは、もともと大西洋のノルウェーとロシアには生息していませんでした。しかしノルウェーとロシアの北部に位置するバレンツ海で、1996年に初めて資源が確認されました。ところがすぐに漁獲をせずに「15年以上」待って、ロシアでは2011年、ノルウェーでは2012年からようやく漁獲を開始したのです。

日本では遠い昔から生息していたズワイガニ。それが10年もしないうちに、日本の漁獲量を大幅に上回っているのは驚くべき事実です。

ズワイガニには、成長すると大きくなり価値が高いオスと、成長しても大きくならないメスがありますが、ノルウェーとロシアではメスは漁獲しても海に戻して産卵させる一方で、日本ではオスでもメスでも関係なく水揚げしてしまいます。資源管理の違いと将来に影響している大きな結果の差異に気づいてほしいところです。

誤っていた日本の水産資源管理

2020年12月に70年ぶりに漁業法が大きく改正され、国は資源管理に舵を切ろうとしています。しかしながら「国際的に見て遜色がない資源管理の導入」は、まだなかなか進んでいません。上に挙げたニシンでは、漁獲可能量(TAC)が設定される予定にさえ入っていません。

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