魚が獲れない日本「養殖でいい」は甘すぎるワケ 世界人口80億人、供給が追いつかない水産資源
東洋経済オンライン / 2023年2月9日 8時0分
すでに養殖物の生産量は天然物を上回っており、その差が広がっていることがわかります。必要な水産物の供給量を維持していくためには、養殖物の生産量増加は不可欠です。
クロマグロ、サーモン、エビなどすでに天然物を養殖物の水揚げ量が上回っている水産物は少なくありません。ただ、これらの養殖物は、コンブやワカメといった海藻類と異なり、大量の「エサ」が必要になります。クロマグロを1kg育てるには15kgものエサを与えなければいけません(ちなみに牛は8kg、豚は3kgのエサが必要とされています)。
一方で、アトランティックサーモン(ノルウェー)については、1.15kgのエサで1kg成長させるまでに技術が進み、エサの成分の7割が魚ではなく、植物由来の原料になっています。しかしながら魚由来の原料が必要なことに変わりなく、全体の養殖量が増えるにつれ、エサ確保の問題が重要になってきています。
サーモンとエビに関しては伝染性の「ISA」「AHPND」といった病気が急拡大して大量に死んでしまい、生産量に大きな影響が出たことが幾度もあります。今でも病気の拡大阻止には細心の注意が払われています。
また、養殖で生産量を拡大していくためには、養殖をするための場所の確保も重要です。アトランティックサーモンの養殖量で世界一を誇るノルウェーでは、すでにフィヨルドでは、これ以上養殖量を増やさないほうがよいという配慮から、新規に養殖場を増やす許可を出していません。このため、陸上や沖合での養殖という新しい展開が始まっています。
まずは天然魚の資源回復が必要
養殖物の生産量が増えても、天然物の重要性は依然として高い中で、北欧、北米、オセアニアなど、漁業で成長を続けている国々(漁業先進国)は、すでに資源管理に大きく舵を取ってから20~30年は経過しています。漁業の歴史を調べていくと、ノルウェーではニシン、カナダではマダラ、ニュージーランドではホキなどで、各国ともほぼ一様に乱獲で資源を大きく減らした苦い経験を経ています。
ところで、資源管理において、日本は特別で海外とは違うなどということは、まずありません。日本との違いは「乱獲」を認めて禁漁を含んだ厳しい措置を取ったかどうかです。資源量が減って魚が獲れなくなっているのに、「大漁祈願」で次回の漁に期待!などという、神だのみの漁業を続けているのは日本くらいです。
水産物の供給がままならなくなっている状態で、限られたチャンスを逃し続けている余裕はないはずです。水産資源は環境や規制などの影響で一時的に増えることがあります。「卓越級群」と呼びますが、その資源を大切に保護しながら増やしていけば、将来の大きな財産になっていきます。
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