ラヴロフ外相「ロシアは清廉潔白ではないし恥じてもいない」 BBC単独インタビュー

スティーヴ・ローゼンバーグBBCロシア編集長、モスクワ

動画説明,

ラヴロフ外相「ロシアは自分の姿を恥じずに見せる」 BBC単独インタビュー

4カ月ほど前にロシア軍がウクライナへの攻撃を始めてから、何千人もの市民が殺され、複数の街全体ががれきと化し、何百万人ものウクライナ人が住む家を追われている。

しかし、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は16日、私の目を見て、事態は見かけとは違うと言った。

「私たちはウクライナに侵攻していない」と、外相は主張した。

「私たちは特別軍事作戦を宣言した。ウクライナをNATO(北大西洋条約機構)に引きずり込むのは犯罪行為だと、西側に説明する手段が他に全くなかったからだ」

2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以来、ラヴロフ氏が西側メディアのインタビューに応じたのは数回しかない。

外相は、ウクライナにナチスがいるというロシア政府の公式見解を繰り返した。ロシア当局は自国軍についてたびたび、ウクライナを「脱ナチス化」していると主張してきた。ラヴロフ氏は最近、ユダヤ系のウクライナ大統領をナチスに絡めて中傷し、それを正当化するために、アドルフ・ヒトラーには「ユダヤ人の血」が流れているというばかげた主張を展開。騒動を引き起こした。

私は外相に、ウクライナ・チェルニヒウ州ヤヒドネ村に関する、国連の公式報告書の内容を紹介した。「子供74人と障害者5人を含む住民360人が、ロシア軍によって学校の地下室に28日間とどまることを強いられた。(中略)トイレ設備も水もなく(中略)高齢者10人が死んだ」とするものだ。

「これが、ナチスと戦っていることになるのか」と私は聞いた。

ラヴロフ氏は、「非常に残念なことだ」と言った。ただ同時に、「国連人権高等弁務官や国連事務総長、他の国連代表といった国際外交官は、西側の圧力を受けている。そうした人たちは、西側が流すフェイクニュースの増幅に利用されることがとても多い」と述べた。

またしてもロシアには何の落ち度もなく、清廉潔白なのかと尋ねると、「ロシアは清廉潔白ではない。ロシアとはそうしたものだ。そして私たちは、自分たちの姿を見せることを恥じてはいない」と外相は答えた。

ラヴロフ外相(右)はローゼンバーグ記者に対し、BBCはウクライナの親ロシア派地域の実態を伝えていないと非難した
画像説明,

ラヴロフ外相(右)はローゼンバーグ記者に対し、BBCはウクライナの親ロシア派地域の実態を伝えていないと非難した

72歳のラヴロフ氏は、過去18年間にわたり国際舞台でロシアを代表してきた存在だ。しかし今、西側は彼と娘に制裁を科している

アメリカはラヴロフ氏について、ウクライナが侵略者だとする誤った言説を推進していると非難。さらに、国連安全保障理事会の常任理事国ロシアが隣国を侵攻したことについて、外相が直接的な責任を負っているとしている。

私は続いて、ロシアとイギリスの関係に話題を振った。イギリスはロシアの公式な非友好国リストに載っている。両国関係を「悪い」と言うのは、かなり控え目な表現ではないかと、私は投げかけた。

「工夫する余地すら、すでにないと思う」とラヴロフ氏は言った。「(英首相のボリス)ジョンソンも(英外相のリズ)トラスも、ロシアを打倒すべきだ、ロシアを屈服させるべきだと公言しているのだから。それならどうぞ、やってみなさい」

英外相は先月、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領について、世界の舞台で恥をかいていると述べ、「彼が絶対にウクライナで敗北するよう、私たちはそれを確実にしなくてはならない」と発言している。

<関連記事>

現在のイギリスをどう見ているか問うと、ラヴロフ氏は「政治的野心のために、またしても国民の利益を犠牲にしている」と答えた。

私はさらに、ロシアの分離主義者が掌握しているウクライナ東部で最近、イギリス人2人が死刑宣告を受けたことについて尋ねた。

西側から見ると、2人の運命について責任はロシアにあるように思えると、私は指摘した。すると、ラヴロフ氏はこう答えた。「私は西側の見方には全く興味がない。私は国際法にしか興味がない。国際法では、雇い兵は戦闘員とみなされない」。

イギリス人2人は以前からウクライナ軍に所属しており、雇い兵ではないと、私は述べた。ラヴロフ氏は、それは裁判所が判断すべきことだと言った。

それから外相は、ウクライナ東部の分離主義者の支配地域について、BBCが実態を明らかにしていないと私たちを非難した。「キエフ(ウクライナ語でキーウ)の部隊によって8年間、市民らは爆撃されていたではないか」と彼は言った。

私は、BBCが過去6年間に何度も、分離派が掌握する地域の指導者に接触し、現地取材の許可を求めてきたと強調した。BBCはそのたび、現地入りを拒否された。

ロシアはウクライナについて、集団虐殺(ジェノサイド)を犯したと非難している。しかし、自称親ロシア派「当局」によると、反政府勢力支配地域で昨年は民間人が8人、一昨年は7人殺害された。どんな死も悲劇だが、ジェノサイドには当たらないと、私は言った。

もし本当にジェノサイドがあったのなら、ルハンスクやドネツクの分離主義者たちは、私たちにそこで取材してほしいと思ったはずだと、私は言った。なぜ私たちは入れてもらえなかったのかと、私は尋ねた。

「分からない」。ラヴロフ氏はこう言った。

(追加取材: ポール・カービー)