~Commemorating the release~
※2023年2月17日までの期間限定公開。
※公式通販にて同内容のSSを特典としてお付けしております。
『Each other』
著・マキタ桜子
「あの子さ。マコにはめっちゃ甘えるよね」
「んん?」
朝食の用意をしている輿野真琴は、背後に突っ立っている宗像誠司の言葉に首を傾げた。
日曜の朝。
二人が暮らすシェアハウスのキッチンには、珈琲の香りが漂い、野菜を洗う水が流れ続けている。
「どーした。唐突だな」
「だって、何かあったら何でもマコに聞くじゃない。俺も頼られたいのに」
「お前、それ本気で言ってる?」
輿野が笑いながらサニーレタスをちぎり、サラダスピナーに入れていく。
「じゃなきゃわざわざ言わない」
「こればっかは普段の行いだろ」
「俺、仕事はデキる方だけど?」
「あのなー」
輿野は抜き取ったペーパーで手を拭くと、宗像に向かって軽く手招きをする。宗像は輿野に従って手を洗うと、渡されたサラダスピナーのハンドルを握りクルクル回しだした。
「オレから言わせると誠司はあの子に甘えてばっかりだろー。そして彼女もお前に甘い。ならwin-winじゃん」
「んー、否定できない」
「それじゃダメなのかよ」
「うーん」
宗像がスピナーを輿野へ突き出すと、輿野はそのまま受取り、蓋を開けてプレートに盛り付けていく。
「まだ眠いんだろ? 二度寝してきな」
「俺がすぐ甘える原因の九割は、マコにあると思う」
「安心しろ。百パー生まれつきだ」
輿野が追い払う仕草をすると、宗像は少しむくれつつも、あっさり離れていった。
寝室に入った宗像は、真っ直ぐベッドへ向かうと静かに布団を捲る。その中には、後輩が気持ち良さそうに寝息を立てて眠っていた。宗像は彼女を起こさないようにベッドへ上がると、そっと体を寄せて布団をかぶる。
(うちにこの子がいるのも、当たり前になってる)
それくらい何度体を重ねても、三人の関係は変わらない。
(俺がもし頼りがいのある男になれば、俺だけを好きになってくれるのかな)
「……いやぁ」
考えたところで、頼りがいのある自分を想像できない。すると、そっと体を抱き寄せられる。宗像は起こしてしまったのかと思わず体を強ばらせたが、すぐ寝ぼけて抱き締められているのだと気付く。温かく柔らかな心地よさにだんだんと微睡んでいき、思考を手放した。
「気持ち良さそうなことで」
朝食を作り終えた輿野は、二人を呼びに寝室に入ると、眠っている二人を見て溜め息を吐いた。
(まだ寝させるか? 昨夜は結構疲れさせたしなぁ)
可愛い後輩のために作った料理を出来たてで食べて欲しいが、ムリはさせたくない。輿野は逡巡していると、宗像が少し身じろいで、後輩をぎゅうっと抱き締める。後輩もそれに対して当たり前のように受け入れ、無意識に頭を撫でている。
(オレからすれば、とことん甘えられるお前が羨ましいわ)
輿野は甘え方を知っているし、それで関心を引き愛される方法も知っている。けれど、根っこの部分ではとことん構って甘やかしたい欲求があり、それが後輩の前ではつい出てしまう。
(無自覚レベルで甘えられるようになれば、オレだけを好きになってくれるのかねぇ)
輿野はエプロンを脱ぎ、床へ落とすと、ベッドの反対側へ周り、布団の中へ潜り込む。そして宗像から引き剥がすように抱き寄せると、ふと目を覚ました彼女に耳元で囁く。
「起きた? 二人で気持ち良さそうに寝て、ズルいなぁ」
体を指で探るように触れられ、驚く彼女が堪らず身じろぐと、宗像もつられて目を覚ます。
「ん? ……なに? するの?」
宗像も寝起きにかかわらず、舌先で目の前の肌をくすぐると、後輩は拒めなくなり、徐々に体を熱くする。
「オレが作ったご飯より先に、後輩ちゃんとイチャイチャしちゃだめ?」
「俺も。終わったらちゃんと食べさせてあげるからねー」
後輩は二人に少し違和感を覚えるも、快感が増していき、何も考えられなくなる。彼らは彼女がもっと甘く蕩けて、より自分を求めるよう。何度も愛を囁くのだった――。
END
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