勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
攻撃を主導する家父長制的な2つのクラスタとは
同じく、「(2)新自由主義×(5)家父長制」の要素を強く持った右派に「性売買クラスタ」があります。女性が性を売ることを「性的自己決定権」として捉え、売買春の合法化を目指す人々の運動です。
この勢力も、「女性の性的自己決定権」という言い回しを使っていますが、「行間」を補うならば、「(女性をモノのように見る家父長制的な考えの男性にとって都合のよい)女性の性的(行為=売買春を女性自身が)自己決定(する)権(利だと見なして社会的要因を考慮しない考え)」であり、(2)新自由主義×(5)家父長制の要素を強く持った右派にほかなりません。
実際、彼らは、多くの女性が日常で最も性的自己決定権の侵害を受けている性暴力、DV、セクハラ、盗撮、中絶への規制(配偶者同意の義務やセーフアボーション=安全な中絶・流産の不認可)等の問題にはほとんど関心を示しません。あくまで、女性の性を消費・搾取したい男性たちにとって都合が良い「性」に関する話にだけ、女性の自己決定権を主張しているに過ぎないのです。
この層はかつて「性の解放」をスローガンに掲げたことから、女性に貞操を押し付ける「(3)権威主義・パターナリズム×(5)家父長制」という保守的な層と対立した時期もありました。
ですが、女性の性を社会的強者として都合よく利用したい側の男性か、女性に貞操を押し付けたい側の男性かという立場の違い、つまり(2)新自由主義、あるいは(3)権威主義・パターナリズムのいずれかに重点を置くかの違いであり、(5)家父長制的であることには全く変わりません。あくまで右派運動内での対立に過ぎないと思います。
ちなみに、「セックスワーク論」のように、性売買を肯定する女性・フェミニストもいます。彼らは必ずしも右派ではないのかもしれませんが、その主張が女性の性を都合よく利用したい家父長制的な男性たちを利することをどう思っているのでしょうか。私には理解できかねます。
Colaboや仁藤氏は、若年女性の被害を構造的に生み出している性売買や性搾取の問題を世に強く訴えており、買春や性売買業者を禁止する「北欧モデル」の導入を提唱していることから、「性売買クラスタ」にとっては厄介な存在に違いありません。2022年の大型連休前後に政治的争点となった「AV新法」でも、両者は激しく対立しました。
そして、2つのクラスタの結節点になり、Colaboバッシングの端緒となったのが、2022年7月の参議院選挙に出馬した野党候補のツイートであろうかと思います。2つのクラスタと近しい主張を展開する彼は、2022年8月にColaboバッシングの犬笛とも捉えられかねないツイートを投稿しました(現在は削除済み)。
それ以降、2つのクラスタが母体となって「公金チューチュースキーム」のような類の「疑惑」が無数に噴出したわけです。次回はこのColaboバッシング問題が政治的な「ジェンダーバックラッシュ」であるという話をしたいと思います。
Colaboへ委託をした東京都福祉保健局に対して住民監査請求が行われ、2023年初めに監査結果が公開されました(「東京都若年被害女性等支援事業について当該事業の受託者の会計報告に不正があるとして、当該報告について監査を求める住民監査請求監査結果」2023年1月4日)。
これを読むと、請求された(ア)~(ケ)の9点のうち、大半は「請求人の主張は妥当でない」と退けられており、「適切でない」としたのは、(ク)人件費に関してのみでした。Colaboは委託金約2600万円を超える金額を支出しており、差額分は自主的な負担となっています。
要するに、「概ね問題はないもののごく一部に軽微なミスが見つかり、他の項目もチェックすることになった。万が一修正額が見つかり、差額分を超えることがあれば、一部返還が生じる可能性もゼロではない」というレベルの話であり、「公金チューチュースキーム」という“陰謀的シナリオ”とはあまりに乖離していると言えるのではないでしょうか。
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