勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
攻撃を主導する家父長制的な2つのクラスタとは
次に、なぜこの一連の騒動が、議会襲撃事件と同様に、「ネット右派」の運動なのかについて解説します。
データ解析をして「反Colaboクラスタは保守系アカウントが多い」と結論付けた記事を鳥海不二夫東大教授が公開していますが、ここではそれを概念的に分類しながら論証します(「女性支援団体Colaboの炎上分析」Yahoo!ニュース、2023年1月4日)。
まず、(右と左という概念をどう定義付けするかによって変わると思いますが)「右派」とは以下5つの要素を持っている人々だと私は捉えています。
(1)政治体制=権威主義・国家主義
(2)経済財政=新自由主義・反共・小さな政府
(3)社会や人間関係のあり方=権威主義(意識)・パターナリズム
(4)国際関係=ナショナリズム・レイシズム
(5)ジェンダー=家父長制・セクシズム・ミソジニー
分かりやすい例が旧統一教会でしょう。「反共」や保守的な家族観で一致した自民党の数多くの議員と密接な関係を築き、平成の時代では、性教育バックラッシュやジェンダーバックラッシュに尽力したこともありました。
政府に批判的な言説や行動を「反日!」と叩くような「ネトウヨ」と呼ばれる人々は、主に(1)権威主義×(4)ナショナリズム・レイシズムの要素が強い運動を展開していますが、近年勢いを増しているのが、漫画・アニメ・ゲームに関する「表現の自由」を主張する層です。
「表現の自由」というワードを用いているため、一見すると右派には見えにくいのかもしれません。ですが、「温泉むすめ」に限らず、その手の作品や広告が女性蔑視・女性差別だとして炎上した際に、彼らが「守れ」と主張するものの大半は、「表現の自由」「思想・良心の自由」というよりも、出版・広告PR等の「経済活動の自由」です。
つまり、その「行間」を補うならば、「(女性蔑視・女性差別)表現の(新)自由(主義的肯定論)」であり、(2)新自由主義×(5)家父長制の要素を強く持った右派にほかなりません(※よって以下「女性蔑視表現クラスタ」と称します)。
このクラスタのオピニオンリーダー的存在であり、自身の著書等で「行きすぎたジェンダー論」を唱えている山田太郎議員(全国比例区)は、2019年の参議院選挙で約54万票を獲得し、全国郵便局長会出身の候補に続く自民党第2位で当選しました。同様の主張をしても他党から出た候補が伸び悩む傾向にあるのは、このクラスタが右派である証左と言えるでしょう。
彼らは女性蔑視表現を含む作品や広告への批判に対抗して、「表現の自由を侵害するな!」「規制には反対!」と主張する一方で、「報道の自由」の世界ランキングが下がり続けている問題や、それ以外の表現規制(とりわけ自民党政権が主導する規制)にはほとんど興味を示しません。
たとえば、2022年12月に政府が打ち出したステルスマーケティングの規制は、公権力による規制強化策ですが(「ステマ広告、法規制へ 明示しない宣伝、依頼主を処分 消費者庁方針」朝日新聞、2022年12月25日)、Twitterで「ステマ 規制 表現の自由」と検索しても、この規制を懸念するアカウントは1件しかヒットしませんでした(2023年2月7日現在)。
あくまで、「自分の好きな(女性蔑視的)表現をフェミニストに批判されたくない、社会から好ましくないものと認定されたくない」という“気持ち”を「表現の自由規制反対」という言葉を使って言い表しているのだと思います。
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