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長引く咳の原因は心臓にあった 心臓移植が実現に至るまで

2023.02.07 公開

1989年、広島県広島市に生まれた森原大紀さん。小学5年生からレスリングを始め立命館大学では西日本大学選手権団体連覇に貢献。大学卒業後は広島市内の高校で教師になり、女子レスリング部の監督も任されていた。

そして教員1年目のある日、高校で英語を教えているリンジーさんというイギリス人女性と出会い、交際がスタート。

その1年半後、森原さんは咳が止まらない症状に見舞われる。それは、1ヶ月経ってもおさまらず、大きな病院で検査を受けると特発性拡張型心筋症と診断された。

収縮・拡張を繰り返すことで全身に酸素や栄養を含んだ血液を送り出すポンプの役目をする心臓だが、特発性拡張型心筋症は左心室の収縮する筋肉が弱まり血液をうまく送り出せなくなる。そのため心臓はどんどん大きくなり、腎臓や肺、肝臓などさまざまな臓器の機能が落ちてくる。咳はそれが原因だったという。全身の水分調整機能をもつ腎臓の機能が落ちると水分が尿としてうまく排出されず肺に水が溜まり咳や息苦しさを引き起こす。

国指定の難病で、森原さんは症状がかなり進行していたため、投薬による治療は見込めないという。まずは心臓の働きを促進する薬が投与され呼吸症状はやや改善したが、根本的な治療にはならず心臓移植しか方法はないという。

長期的な入院が必要で教員も辞めざるを得ず、心臓移植を考え始めた。その中で、リンジーさんに「イギリスに帰った方がいいよ。俺の移植でリンジーの人生を邪魔したくない」と打ち明けた。しかしリンジーさんは「私の人生なんだから。ずっとあなたの隣にいる。」と伝え、森原さんは移植に向けて大都市の病院に転院した。

だが、医師から「(心臓移植は)3年くらいは待機になると思っておいてください」と告げられる。日本は、本人の臓器を提供する意思表示がある場合や、本人の意思が不明でも家族が承諾をすることで、臓器提供が可能になる。臓器提供件数は他国に比べて圧倒的に少ない。心臓移植の場合、希望者約900人に対して提供件数は毎年80件程度、待機期間は3年~5年と言われている。

医師は、通称「バド」 と呼ばれる体の中に埋め込むタイプの補助人工心臓を設置することを提案。

バドは、心臓の近くに血液ポンプを埋め込み、機能が弱まっている左心室から血液を抜き取り全身に血液を供給する大動脈へとポンプから直接血液を送り出す装置。バッテリーやコントローラーが入ったバッグを常に持ち歩く必要はあるものの、社会復帰が可能となる。

こうして、森原さんは心臓移植をするまでバドによって命を繋ぐことになった。2ヶ月後には退院できたが、その後の生活は、バドが入ったカバンが引っ張られると装置の故障に繋がる危険があるなど、常に気を張っていなければならなかった。

また、体重の増減があると見つかった移植する心臓と合わなくなるリスクがあるため、移植待機者には5kg以上の体重の増減があってはならなかった。

森原さんはバドを装着して8ヶ月後には広島の高校で教職に復帰。リンジーさんと結婚。

そして「日本の臓器提供が増えないのは、無関心な人が多いからじゃないか」という課題意識からイベントを主催するなど、臓器移植を世に広めるため動き出していた。

バドを装着してから約4年が経過、医師から「森原さんに適合するドナーが見つかりました」と連絡が。「移植を受けるかどうか、10分で決めてください」という。心臓移植はスピードが絶対条件、その日のうちに移植手術を行わなければならないのだ。

心臓移植は心臓の全てを交換するわけではなく、人工心肺を繋ぎ、一度、血流を止めた状態で右心房・左心房の一部だけを残し心臓を切除し、ドナーから提供された心臓を、残っていた心臓、大動脈や肺動脈といった血管と縫合する。

縫合を終え血液を戻すと心臓は一人で動き出すことが多いのだという。手術を決めた森原さんは9時間に及ぶ手術に成功。目を覚ますとドナーからもらった心臓が強く鼓動を打っていた。

その後、2020年11月には長女・創ちゃんが誕生。去年3月には第2子となる長男・凰心くんが誕生。今はレスリングクラブで子供たちを指導できるまでに回復しているという森原さん。「妻の故郷・イギリスに行きたいなと思っていて。僕の元気な顔とか、子供たちも見せたいなっていうのが今の一番の目標ですね」と語った。

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