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お師匠様に腕を折られてからかなり長い時が経ち、外出許可も戦闘許可も頂いてから大分経ち、鈍っていた体も元に戻ってきた頃。
時期は年の瀬、海灯祭。この時期は人の熱気に当てられるのか、妖魔が溢れ残滓が満ちてお師匠様が妖魔退治でさらに忙しい時期になる。
お師匠様はそうそう祭りに自ら参加する事は無い。だからやる事はいつもと変わらないのだが……
…少しでもお師匠様の役に立てればと気張ってしまうのがこの時期の私だ。まだ太陽が燦々としているうちから槍を片手に璃月を走り回っていた。お師匠様とは別行動だ。……先日、自由の都の風神バルバトス様とお会いしたらしく…少しは業障の辛さが和らいだらしいが、心配が尽きることは無い。前に聞いたあの方の笛の音はとても素敵だった。なにかの機会でもう一度聞ければいいなと思います。
妖魔を屠る時に汚れたからだを山の中の池に入って洗い流す。…冷たい……せめて日当たりの良い池探して入ればよかった。あー…空が青い。……ちょっと、疲れたかも。
「……海灯祭…今年は…………」
「…凜……!?」
「うふぁ…んぶはっ……お、お師匠様…!急に、驚かさないでください…溺れるかと思いました……」
「す、すまない……」
どこか焦った様子で現れたお師匠様につい驚いてしまい、水に浮かせていた体がバランスを崩してしまった。私を水中から引きあげたお師匠様が、顔から滴る水を拭ってくださる。お気持ちはありがたいけれど少し痛い。
何も水浴びの姿を見られるのは初めての事ではないのだけれど……溺れていると勘違いしたらしく、苦い顔をしているお師匠様が珍しく何かあったのかと問うて見れば、つい先刻も同じような出来事があったらしい。
蛍さんと甘雨姉様がとある仙人を探していて、誘き寄せる方法として溺れたフリをしていたそうな。
「…何故こうも、揃いも揃ってお前たちは我の気をおかしくさせるような事ばかり……」
「えっと…申し訳ございません……身体の汚れを落としていたのです…それに、水の揺らぎは安心しますから」
「…あぁ、こればかりは我の早とちりと言えよう。……ところで、お前は音楽を奏でられ、溺れたものを救う事ができる仙人に覚えがあるか?」
「いえ……残念ですが、蛍さんたちのお役には立てそうにありません……。……ところで、その、お師匠様?」
「なんだ」
「……もう顔は乾いたのですが…いつまでお触りに……?」
会話の間、ずっと私の頬を指で撫で続けていたことを指摘すればハッとしたようにその手を止めた。…なるほど、無意識でしたか。……全くもう、このお方は…
身体の方も少しづつ乾いてきていたが、再び背中から池にバシャりと入り込む。…また驚いたお顔。
「何をしてるんだ」
「…熱かったので」
「何…?……お前、熱でも出たのではないか…それに、最近休んでいなかっただろう。凡人の体は疲労に弱い、直ぐに望舒旅館に戻るぞ」
「……」
鈍い方ではないはずなんだけれどな。好都合というか、少し残念な気もしますが…
前々から貴方だけはこの想いを知ってはいけない、なんて思っていますがそろそろ正直辛いです。なぜ気づいて下さらないのこの方は、んもう。
今だってそう。私が頭を冷やす為に池に入ったというのに、再び水中から引き寄せて私の体を抱えるのだ。
「そんなに力を入れて我を掴むな、落としはしない」
「…」
「……凜?」
「…なんでもありません……」
「…なんだその顔は」
怪訝そうなお顔を向けないでくださいまし。
どうして私ばかりがこんな思いをしないといけないのか、なんて思考に至ってしまうのもお許しください帝君様。
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あれからまた数日、海灯祭の熱も最高潮。花火の音や時折聞こえる音楽の音を背に夜から朝にかけて妖魔を屠り続けて流石に身体の疲労を認めざるを得なくなった頃。太陽の位置はすっかり天高くなり、また少しつづ沈み始めてきた頃。
望舒旅館で軽く食事をしていたらドタドタと覚えのある気配が駆け寄ってきたのを感じた。
相変わらずどうしてそう、元気いっぱいなのか。もちろん良いこと。
「凜姐〜!ひっさしぶり〜!!元気だった?私は見ての通り超元気!」
「えぇ、お久しぶりです胡桃さん。ふふ…本当に貴方はいつも元気ね。…それにしても、望舒旅館に来ているなんて珍しいですね」
「ふっふっふ……まぁねっ!それで凜姐、今から暇?暇だよねっ!少しここで待っててくれる?すぐに戻ってくるから!」
「あぇ、ちょっ、胡桃さん…!」
まるで嵐のように去っていってしまった。上に行ったということは…あの子、まさか。
聞こえてきたお師匠様の事を呼ぶ元気な声。点心を口に運びながらお師匠様がどんなお顔をなさっているのか想像するも、彼の疲れた顔しか浮かばなかった。それにしても一体、あの子は何をしようと…
暫く経った頃、ほんの少し困惑した顔のお師匠様を連れて満面の笑みを浮かべた胡桃さんが階段を駆け下りてきた。……お師匠様をこうして連れ歩くなんて…やっぱりこの子大物ですね…。
「さっ、凜姐お待たせ!行こ行こ〜!」
「ふ、胡桃さん…?私たちは一体どこへ連れて行かれるのですか……?」
「今から新月軒で私主催の宴会をするからそのお誘いに来たの!ほらぁ……降魔大聖も参加するんだから、凜姐ももちろん来てくれるよねぇ…?」
お師匠様がいらっしゃっても、いらっしゃらなくても胡桃さんのお誘いを断る事はしないのだけれど。何なのでしょう、この圧力は。絶対に逃がさないと言わんばかりの力で手をきゅうっと握られる。
逃げないという意思表示をするために自分からも握り返せば笑顔が咲き誇る。…あぁなんだろう、暖かい。満たされる。
「おい、何をしている。行くなら早く行くぞ」
「分かってる分かってる〜!なに、そんなに楽しみにしてくれてるのぉ…?」
「なっ…別にそういう訳では無い…!」
「ほらほら、降魔大聖も凜姐と手繋いだらぁ?」
「なぜ」
振り回されてるお師匠様、凄く珍しい。
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「……」
「……」
「何?2人して急に押し黙っちゃって…まぁ気持ちはわからなく無いけどね。…綺麗だよね〜…海灯祭の璃月は、本当に綺麗だよね」
毎年、見ているはずなのに。
海や空に浮かぶ明霄の灯、美しく飾られた街並み。どれも昨年と何か変わりがある訳では無いのにどうしてこうも心惹かれるのだろう。
「みんな待ってるんだし、早く行こうよ〜」
「……胡桃さん、お師匠様、先に行ってて下さらない……?」
「……わかった。でも!なるべく早く来てよね!料理が冷めたら元も子もないんだから、それ以前に私達だけで食べきっちゃうからね!じゃあ行こうか、降魔大聖」
我を一人で行かせるのか、という念が伝わってくるけれど…ごめんなさいお師匠様。私はこの街で少しゆっくりしていたいのです。
先を行く胡桃さんの後を渋々歩いていったお師匠様から目を離し、なるべく気配を薄くさせる。
これでも何年も璃月で生きている。私を知ってくださっている人も少なくは無い。変に気を使わせたくないし、今は少し1人で過ごしたいから。今だけは陰透かしの一族に生まれてしまって、良かったと思えるかもしれない。
海沿いを歩きながら、明るい夜の街を歩いて行き交う人々の笑い声や話し声を耳に璃月は変わらないとどこか安心を得る。…岩王帝君が逝去なさったあの日、私は璃月にいなかった。
スメールの森の隅で一人修行に勤しんでいた。まさか、国を離れている間にあんな大事件が起きているなんて全く思っていなかった。なぜ私はあの時この璃月にいることが出来なかったのか、人々の為に戦うことが出来なかったのか。今となっても悔やまれる。
神がいなくなったこの国は、今や人の国。
私も一人の凡人として、今の璃月とどう向き合うべきなのか。……凡人として、向き合っても良いのか。人の国に私は人として数えられるものなのか。
考え出したら止まらないのだ。私は自分が思っている以上に思い悩むところがあるらしい。
…少しだけ、前の甘雨姉様のお気持ちが分かるかもしれない。
これ以上考えるのは止しましょう。胡桃さん達が、待ってくれているかもしれないから。
新月軒の前まで来て、中からする声につい扉に伸ばしていた手を止めてしまう。……今から、この中に入る?…ちょっと嫌かもしれませんね。私がいてもいなくても変わりはしないでしょうし、誰がいるかも知らないゆえにこの場の雰囲気を壊しかねない。
幸いにもお師匠様が心の底から嫌がっているようには感じませんし…
……お師匠様が休んでおられるなら、その間私がお師匠様の代わりに妖魔退治をすべきなのでは?そのほうがお師匠様の助けになれるかもしれませんよね。
誘ってくれた胡桃さんには申し訳なくも思いつつ、新月軒に背を向けて璃月港から出る道へと足を向ける。今、私に出来ることはこれくらいしかないのですから。
橋を渡ろうと足を進め続けていた時、思わず誰かとぶつかってしまった。私が気配を消しながら歩いていたのが原因だろう、ぶつかってしまった人に申し訳なさでいっぱいになる。謝ろうとそのほうを向けば、その人は見えていないはずの私の姿を捉え、愛らしい笑みを浮かべていた。
「こんな素敵なお祭りの日なのに、それに似合わない寂しそうな顔をしてるね」
「…バルバトス様……!?なん、なぜ璃月に……あっ、その、今はウェンティ様とお呼びするべきでしょうか……?」
「あははっ、そんなに焦らなくてもいいよ。久しぶりだね、凜。…今のボクはただの吟遊詩人だからお堅く呼ばないでくれると嬉しいかな。それで、なぁに悲しそうな顔しながら出ていこうとしてるの?君には行くべきところがあるでしょ?」
「……、…その、お恥ずかしい話なのですが…どうも場の空気を変えるようにどうしても目立ってしまうようなことが不得手でして…」
「それで扉に手を伸ばしたり引っ込めたりオドオドしてたんだ」
「み、見ていらしたのですね……」
なら、と私の手を掴みながら本物の少年のように可愛らしく、どこか悪戯っぽく笑ったウェンティ様が私の体を再び璃月港の方へと引く。
「ボクも一緒に行ってあげるよ!…気がついていながら、なんの反応も示してくれないじいさんとも久しぶりにお話したいし、ね?」
「…その、私誰にも気付かれていないつもりだったのですが……」
「じいさんや魈に気づかれないんだから大した実力だけど…ボクを騙せると思っちゃダーメ」
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「ふむふむ…どうやら、今はボクの話をしているみたいだね。丁度いい時に来れたみたいだよ」
「ほ、本当に今行くのですか…もうしばし心の準備をしたいと私は考えているのですが…」
そんなのお構い無し、という感じに笑って扉に近づくウェンティ様を止める術などなく。私に残った選択肢は、この方の後ろについて行くことだけ。
「『風が物語の種を運び…』」
「『時間がそれを芽生えさせる』!…あ!つい続きを口にしちゃったぞ!」
最大限に力を引き出して気配を消す。意味は無いけれど、お師匠様にどれだけ今の力が通じるのかを試したい。
「面倒はかけないよ、お邪魔しま〜す!」
風で扉を開いたウェンティ様がなんの躊躇もなく中へと足を進めていく。…流石は2000年も生きている方、その図々しさは尊敬すらしてもいいのかもしれませんね。
…これは、お師匠様とても気まずいでしょう。鍾離様と仲があまり宜しくないウェンティ様がここにいらして…さらに御二方とも身分を隠しているゆえに滅多な事は出来ないが不敬を働くわけにもいかない。……まぁ私も同じ状況になるのでしょうけど。
話がまとまったのか、ウェンティ様の席も用意される事になった。…このまま扉を閉めて下さればいいものを、ウェンティ様が黙ってこちらを見続けている限り…私は逃げられない。
「ほら、いつまでそこに隠れてるの?出ておいでよ、君はボクと違って元々歓迎されている子なんだから」
そう声をかけられてしまえば私は術を解くしかできない。力を抜いて脱力すればお師匠様の圧がぐっと強まった。
「あっ、凜姐やっと来た!みんな待ってたんだよ〜!二人目の大物ゲストは璃月で知らない人はいない…凜姐〜!ほらほら、降魔大聖の隣座って!」
「…遅くなってごめんなさいね。それと、鍾離さんもお久しぶりです」
「あぁ、暫く見ない間に元気になったようで何よりだ」
何となく気まずさを感じながら、じいっと睨んでくるお師匠様の隣にしれっと座る。
「おい、なぜもっと早く来なかった」
「その…あはは……確かにこうも人が沢山いるとは思いませんでしたが、蛍さんもいらしてくださっていたのですし…」
「確かに堂主から元素力に関係している者しか呼んでいないと聞いて旅人がいることは分かっていたが…我が参加した決め手はお前の有無だぞ」
「……」
「だからなんだその顔は」
〜蛍ちゃまと魈さま一時退室まで割愛〜
「あ〜もう!旅人のやつ!なんでオイラを置いて行っちゃうんだよ!」
「まぁまぁパイモンさん、落ち着いて…?」
「むぅ〜…お前はその、なんか嫌じゃないのかよ。好きだろ?魈のこと」
「パイモンさん、お口チャックですよ。めっ」
この場の空気に耐えかねたお師匠様を蛍さんが外へと連れ出してくださった。少しありがたいと思いつつも、その役目は私に担うことは出来ないのだろうと少し落胆。
何故か私より拗ねてしまったパイモンさんに料理を進めても、まだ落ち込んでいた。珍しい。
「凜姐、ご無沙汰してます」
「行秋さん…なんだかほんの少し見ないうちに大きくなったように感じますね」
「見ないうちって…前回顔を合わせてからまだ2ヶ月ほどしか経ってませんが…」
「…あら、そんな時間しか経ってなかった…?じゃあ、その二ヶ月であなたはより成長したって事ね」
褒め上手だと言われるけれど、心から思ったことを言っているだけで世辞のつもりは毛頭ないのだ。2人で話していると重雲さん、香菱さんと胡桃さんも寄ってきてすっかり囲まれてしまった。
…あんなに小さかったこの子達が、こうして大きくなった今も共に同じ時をすごしているという…これもまたひとつの奇跡と言えるのでしょう。
「そういえば、重雲はよく凜姐と顔を合わせるんだろう?」
「あぁ。さっきも言ってたけど降魔大聖と方士一族に関係があるように、降魔大聖のお弟子の凜姐とは妖魔退治の時に顔を合わせることも多々あるんだ。言わば、僕達方士と仙人の鎹みたいな」
「なるほどね。つまり君にとって必要不可欠な存在と…」
「間違いじゃないけど、なんだよその言い方は……そもそも凜姐さんは降魔…」
「重雲〜、凜姐はその事を気にしてるからあんまり大きい声で言わない方がいいよぉ〜?」
「…凜姐、大丈夫?さっきからぼうっとしてるみたいだけど…?」
香菱さんに顔をのぞき込まれて、ハッと意識が戻る。…2日ほど寝ていないと言える時間ですから、流石に疲れが溜まってるみたいですね。
大丈夫だと答えるも、香菱さんは納得がいかないよう。本当に優しい子。
凜姐、凜姐と寄ってくる優しい子の子達に……今年一年、健やかで安泰な生活が送れますように、なんて気休めにもならない加護を。
心配してくれる子達の後ろから鍾離様とウェンティ様がこちらによってきているのが見える。
「無理もないだろう、どうやら凜姐殿は昨晩から本日の夕方まで妖魔との戦いを繰り広げていたみたいだからな」
鍾離様がそんな事を言ってしまうからぎょっとしたように重雲さんがグリンと首をこちらに回す。お師匠様のためと思ってやりすぎてしまっただけだから、お気になさらず…と言いたいところだけれど……身体の疲れは本物。
鍾離様になぜバレているのかは、あまり考える必要は無い。それはこの方が神だから。
「そんな、私の事はお気になさらず…その、余計な心配をさせて申し訳ありません。…誘ってくれたのにごめんね、胡桃さん。流石に少しばかり疲れちゃってるみたい…」
「謝らなくていいよ凜姐!ほらほら、疲れてる時はやっぱり甘いものでしょ!店員さんに点心頼んでくるから座って待ってて!」
鍾離様とウェンティ様が何故か微笑ましそうにしている中、ほかの四人に半ば強制的に座らせられる。ふらぁっと飛んできたパイモンちゃんが座った私の膝にぽすんと収まった瞬間、喉の奥から出ない声が出た気がした。あまりにも愛い。
元気の無いパイモンさんには悪いけど、いつもより癒しの効果がありそうです。
「凜姐、あんまり無理しちゃダメだよ?アタシが美味しい料理を沢山作って待ってるから何時でも万民堂に来てよ!」
「君は昔から変なところで無理しがちな所があったみたいだからね。あんまり疲れてるなら、ボクが子守唄を弾いてあげようか?」
「ありがとうございます、おふたり共。……その、子守唄は遠慮します…ウェンティさんの奏でる音は、ほんとうに落ち着いて寝てしまいますから」
ぐでぁ……と溶けているパイモンさんを撫でながら胡桃さんが頼んでくれた点心を待つ。…それにしても、本当にお師匠様たち遅いですね…別に何かが心配とかそういうのはありませんけど…
あまりにも慣れない場に疲れて先にお帰りになってしまっては居ないでしょうか。そんな事されたら…勝手に挫けちゃいそうです。
「……なぁ凜、この点心……しょっぱいぞ」
「え?…十分甘くて……美味しいですけれど…パイモンさん、大丈夫?味覚が…ちょっと変になってますね」
「うーん…パイモンちょっとパニック気味なのかな…アタシそろそろ旅人たち呼んでくるよ!」
なんの症状か、パイモンさんの舌がダメになってしまった。…流石に何かあったのかと心配になってまう。蛍さんと少し離れるというだけで、こうなってしまうなんて。これまでの旅で、何かあったのでしょうか。
まるで、離れ離れになることを恐れているかのような。
ふわぁふわぁと、覚束無い飛び方をしているパイモンさんが心配になり目で追っているも、なぜだか急激な眠気に襲われる。身体の限界が来てしまったようで。
それでもこのような場で寝てしまうのはいささか問題がある。親しいものが多いとはいえ、礼儀に反する気がするのだ。ガクンと落ちそうになる首を何とか必死に力を入れて抑え、紛らわせようと甘味を口に運ぶ。
あぁ、まずい。
本当に寝てしまいそう。
「……凜、やっぱりお眠かな?」
「だ、大丈夫です……まだ、耐えられま……す…」
「無理しなくていいんだって。ここに居るみんなは君を心配してるんだし…君が疲れて寝てしまっても誰もそれを咎めたりなんてしない。ほら、ゆっくりおやすみよ。君の夢が、安らかで暖かいものになりますように…」
ウェンティ様の優しい声に促され、ゆっくりと瞼が閉じてしまった。
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「あれっ、凜姐寝ちゃってる?よっぽどお疲れだったんだねぇ…いつもは私が撫でられてるけど、今日くらい私が凜姐の事撫でてもいいよね?……んふふぁ〜…こうしてみると歳が近い女の子みたい」
「胡桃、あまりしつこくして起こすなよ。……何か掛けてあげたいけど…なぁ行秋、なんか掛けられるものないのか?」
「急に言われても、流石に用意してないよ。お店の人に聞いてみるかい?」
凜の周りを囲みながら静かに話している少年少女の姿を見て、鍾離はふっと柔らかい笑みを浮かべる。それを見逃す風神ではない。ニヤリと普段しないような顔をしながら鍾離に近づいて行く。少し嫌そうな顔を隠さないところを見ると、仲が悪いとはいえ長い付き合いにより無意識に変なところで素直になれる相手なのだろう。
誤魔化すように茶をひとくち。
「全く、誰に似てあんなに無茶する子になっちゃったの?…まぁ凜がいつも見てるのは魈しかいないと思うけど」
「……魈も凜も…お互いを思いやる気持ちが強い故に無茶をする。今更言って直るような事ではないだろうからな…だからこそ、堂主達のような友人…寄り添える仲間があいつらには必要だ。…今のこの風景が、十数年先も変わらずにいてくれたらと思う」
「うげ、話長くない?……まぁじいさんの気持ちはわからなく無いけどね」
しばらくして香菱が呼びに行った魈と蛍が中へと戻ってくる。ツンツンとした態度のパイモンが怒ったように蛍と話す中、机に伏せっている己が弟子の姿を捉えた魈はまた1人でギョッとしていた。せっかく外へ連れ出してくれた蛍のおかげで少し落ち着いたというのに、再び変な声が漏れ出た。
仙力を飛ばし軽く圧をかけるが全く反応がない。かなり熟睡していることを悟った魈は一人で内心大きなため息を吐いた。あのバカをどうしようかと思っていたら肩に手が置かれる。その手の主はウェンティで、凜を見る魈に向かって首を横に振る。
起こさなくていいよ、という意味だと魈はすぐに理解したが少し納得がいかないような気もしていた。本当に起こさなくて良いのか。
その後、胡桃の発案により新年を迎える儀式を行い、パイモンの機嫌もすっかり直った頃。まだ盛り上がりを見せる店内で眠り続ける凜の横に座っている魈が彼女の顔を突き始めた。
人差し指で頬をツンと押したままにしても起きる気配がない。
無理しているのは分かっていた。
魈は、無理矢理にでも寝かせればよかったと起こさない程度の力で凜の頭に触れた。
彼女が赤子の頃、よく頭を撫でて欲しいと強請ってきたのを思い出したからだ。今こそなかなか自分から甘えてくる事はないが…甘やかし上手なところもあるが凜は基本的に甘えたがりだと魈は分かっていた。
その本質は昔から変わることは無い。
嬉しそうに細められた目がそれを物語っている。
「……ねぇ降魔大聖」
「ぅっ……な、なんだ……」
「……やっぱり何でもな〜い。降魔大聖が凜姐の事大切にしてるのは今に始まった事じゃないもんね。……でも、あんまり余裕があると思っちゃダメだからね?…凜姐、璃月では色んな意味で人気の女の子なんだから♪」
「は…?…それはどういう……」
「さぁね〜」
意味ありげにそんなことを言って香菱たちの輪に加わった胡桃に顔をしかめる魈。その言葉の意味が分からないほど鈍感ではない。
だが魈は、何故それを自分にわざわざ言いに来たのかが分からなかった。
自分がこんなにも困惑しているのに、隣ですよすよと呑気に眠り続ける弟子に少し腹立つ師匠。その鼻を摘んでみるも、起きる気配が一切ない。どんな時でも警戒は怠らないように教えていたつもりなのだが、と説教したい気持ち。
だがそれ以上に、自分が凜にとって安心して眠れる…ひとつの拠り所になれているのだろうという暖かい気持ちもあった。自分が彼女の居場所になれているのだろうと。
宴会もお開き。
結局最後の最後まで起きなかった凜は魈に背負われたまま望舒旅館まで戻ってきた。
魈の為に用意された部屋の布団に寝かせ、綺麗に整えられていた掛け布団を乱雑にとり凜の周りにぐるぐると巻き付ける。
……魈の仙獣としての本能的にそのほうが落ち着くのであろう。一通り巣作りを終えた魈が、寝ている凜の隣に腰掛ける。
どうしてこうも、傍に置いておきたいという思いが日に日に強くなっていくのか。
巣の中で眠る凜。
食事も睡眠も、してもしなくてもあまり影響が出ることでは無い。それは魈が凜とは違う仙人だから。
それでも、その隣に寄り添って寝ようと思うのは親としての愛情のようなものなのか…
それとも、新たな感情を芽生えさせようとする魈の心の変化から生まれたものなのか…
「…お前の事は、我が守ろう。ゆっくりやすめ」
溶けるような優しい声に、凜の苦しそうな息遣いが少し和らいだ気がした。
どうか安らかな夢を。我のように苦しむ必要なんてないのだから。
海灯音楽祭で見事に魈様に沼った故に、エピローグに夢主を絡ませたくて…!胡桃の口調が難しい…勝手に、次回は伝説任務みたいなオリジナルのストーリー書けたらなって思ってます。夢主について触れていきたい…
novel/19163816の続き。
個人的なご報告。
魈さま単発でお迎え出来ました…!びっくりしました!Love is 𝑷𝑶𝑾𝑬𝑹_
そして夜蘭今のところ50連して、赤い夜蘭の旦那が…まだ19日あるので諦めず原石集め頑張る!
!!Attention, please!!
✤捏造でしかない。妄想劇へようこそ。
✤ネタバレあるのか無いのか曖昧
✤自分の書きたいこと書いて終わってる。
✤原神始めたばかりで知識の浅い女の自己満足夢小説。
✤なんでも許せる人向け。読んだ後の個人的な苦情は受け付けません。なんたって自己満小説。
✤この界隈の歴がまだまだ浅いので、ルール違反してたらそれは教えて下さるとありがたい…