「エヴァ」という名称は旧約聖書の創世記に出てくる最初の 女性「イブ」のラテン語発音である。 「エヴァンゲリオン」というのは、これから派生した英単語「福音evangel」からの 造語らしい。 エヴァンゲリオンを直訳すれば「キリスト教による世界救世の申し子」と でもなろうか。 この作品はキリスト教関連の用語が山ほど出てくる。 敵の呼び名も「使徒」。 国連下の特務機関NERVが密かに保管していたアダムを 奪還するため人類と敵対しているようだが、その正体は不明である。
作品を「新たなる創世記Neon Genesis」と銘打ったのは、 「人類の新たな段階への進化の始まり」を描きたかったのであろう。 アーサーCクラークが、映画「2001年宇宙の旅」や SF小説「幼年期の終わり」で取り上げたテーマであり、 「機動戦士ガンダム」での「ニュータイプの覚醒」も類似のテーマといえる。 結末の描写が、一般観客の理解を越えているのも、 「2001年宇宙の旅」の最終シーンを思い出させる。
操縦者は、エヴァに乗り込むと、自分の神経を直接エヴァに接続する。 つまりエヴァの身体を自分の身体と化すわけである。 これは基本的な操縦動作に熟練がいらないということで、 ガンダムで指摘した問題点を解決してしまっている。 しかし、エヴァが物理的損傷をうけると操縦者に 肉体的な苦痛も伝わるという欠点となる。 簡単にいえば、身体を巨大化して使徒と肉弾戦するのと変わらないということだ。 作品演出では操縦者を悲劇的にするのに多大な効果をもたらしてはいるが、 あまりにも、むごい感じがする。
神経接続は専用カプセルの内部で行われる。 エントリープラグと呼ばれる、このカプセルは内部が液体で満たされている。 神経接続の効果を上げ、シンクロ率を向上するためと説明されていたが、 戦闘時に受ける衝撃や急な動作に伴う高加速度への耐性をつけるためにも 有効な手だてだ。 宇宙飛行士が水中で無重力状態を疑似体験する地上訓練があるが、 あれと似た原理だ。 英国のSFTV「謎の円盤UFO」やSF小説「終わりなき戦い」でも 使われた設定である。
最初の鉄道用動力車は蒸気機関車だった。 これはエネルギー源である石炭を自分で運びながら使う。 一方、現在では多くの路線が電化され電車が走っている。 これはエネルギー源を外部に置くことで動かすべき質量を 最小限にすることができる。 蒸気鉄道では非常識な急勾配でも難なく走破できる。 新幹線やTGVなど現在の世界の高速列車は全て電気鉄道だ。
近年ではロケットですら、エネルギー源を外部に置き レーザー光線で伝送するというシステムが研究されている。 エヴァが機械式ロボットならば実に最もらしい設定で感心してしまう。 ロボットの動力源を外部に置くのは、 同じガイナックス製作のTVアニメ「不思議の海のナディア」で 「人間タンク」として登場しているから、その辺りが原点か?
ところが、シリーズ半ばで、エヴァは生体であることが判明する。 有機体だとすると外部電源は何に使われているのだろうか? 制御系にしか使っていないのならば、外部電源にするのは大げさすぎる。
巨大な生体ロボットに人間が乗り込み、 しかも操縦者は肉弾戦的戦い方になる、というのはどうも生々しすぎる。 手足を切られても操縦者は無傷でいられた「ガンダム」に比べると、 かなりゲテモノ志向だ。 それとも、戦争・戦闘の薄汚い面を強調したかったのだろうか? 小中学校で解剖が大嫌いだった私には、感性的に耐えられない面があった。
生体であるなら動力源は有機物となる。つまり食糧だ。 あれだけの巨体を維持するには、相当の食糧が必要なはず。 このことは「ガリバー旅行記小人国」でも話題にされていたが、 担当のNERVは、どうやって大量の食糧を確保していたのだろうか。 本部のある箱根の地下には大厨房があって多数の料理人が雇われていたりして…。