世田谷区長という仕事の性質上、喜多見でタクシーを降りること自体は自然だが、問題はその時間だろう。日曜の22時過ぎという時刻は、明日に控えた週の始まりに備え、夜遊びもせずにさっさと帰宅する時間帯ではないか。現に公用車の運行記録を見ると、翌20日は狛江市に公用車が迎えに来ている。つまり、保坂氏は19日夜に「喜多見」でタクシーを降り、20日朝には「狛江」から出勤しているということになる。
狛江の別宅に帰るためにタクシーを利用し、その支払いに税金が原資のタクシーチケットを充てた。降車地を区外の狛江と書いては角が立つ。だから狛江のすぐそば、ギリギリ区内におさまる喜多見で降りたと便宜的に報告しておく――これは穿った見方だろうか。ちなみに他にも、区長が「喜多見」で降りたタクシーチケットは複数確認できるが「狛江」で降りたものは見当たらない。
個人的な政治活動に公用車を用いるのは疑問が残る
保坂区長の公用車の使用状況について訝る声は他にもある。世田谷区政関係者の話。
「区長は公用車を使って、自身がかつて所属していた社民党などの政治家の応援に足を運ぶことがあります。当たり前ですが、この活動は世田谷区長としての公務ではありませんよね。あくまで個人としての保坂展人、いち政治家としての活動でしかないはずです。その個人的な政治活動に公用車を用いるというのは疑問が残ります」
2021年11月17日の公用車の運行記録を見ると、「区役所→代沢→玉川→区役所→玉川→区役所→渋谷区→千代田区→区役所」とある。末尾の「区役所」は、車が保管されている世田谷区役所に運転手だけで戻っていることを示す。使用者である保坂区長自身は「千代田区」で降りているとみられ、その後に公務はない。
質問状を送ると、回答が
この日、保坂氏は千代田区内で催された社民党党首の福島瑞穂氏の講演会に参加している。世田谷区役所には空の公用車を帰していることから「公務と公務の合間に行った」という説明は出来ないのではないだろうか。他にも、公務を終えた後に公用車を駆って、公務とは無関係の場所で政治活動をしていたとみられる日は複数あった。
文春オンライン取材班が世田谷区に質問状を送付したところ、保坂区長の名前で以下のような回答があった。
――自宅は代沢と狛江のどちらなのか。
「主たる生活の本拠地を世田谷区内の代沢に置きながら、世田谷区に隣接する狛江の自宅も利用している状況です。自治体の首長には居住要件がなく、区長就任当時の自宅は狛江市のみでした。就任後、激務であることから区内東部の代沢に私費で住居を借りています。この二ヶ所で、区内の東部と西部をカバーすることができて、効率的に利用しています。代沢と狛江のどちらにも自宅があり、公用車の使用につきましては問題ないものと認識しております。なお、狛江市と世田谷区は隣接しているほか、ご指摘の狛江市の物件は世田谷区との境界にあります」
――2021年11月17日に社民党党首の講演会に公用車で行っているが、区長としての公務ではなく個人の政治活動なのではないか。
「当日は、定例記者会見の後、公務で渋谷区にいたところ、その後千代田区まで移動する車中で区政に関する連絡及び相談をする必要があったため、公用車を千代田区まで使用しています。千代田区まで移動した後は、直ちに公用車は帰庁しており、帰路の使用はなく、適正に使用したと認識しております。今後につきましても、2022年10月1日施行の『世田谷区区長公用車の使用に関する基準』に沿って、適正な使用に努めてまいります」
――2021年12月19日に使用したタクシーチケットで利用区間が『代沢→喜多見』とあるが、これは狛江に帰っただけで税金が原資のタクシーチケットを使用するのにそぐわないのではないか。
「当日は、公用車を使用し区政に関する面会を行い、その後同様の面会を行い、帰路は時間の関係で公用車ではなくタクシーを使用しています。この際、降車場所が喜多見であったため、タクシーチケットにはその旨の事実を記載しております」
公用車とタクシーチケットの使い方に問題はなかったと考えているようだ。