INTERVIEW 2022.12.04
三浦義村役・山本耕史さんインタビュー
父・義澄が亡くなり、三浦の家督を継いだ義村は、どのような変化をしてきたと感じていますか。
かつては三浦のほうが上だったのに、どんどん北条の立場が上になってきて、昔父上も言っていましたが、「このままでいいのか三浦は」という思いは大きくなっていると思います。だから義村は、さまざまなトラップを仕掛けていくわけですよ。でもそれを感情的にぶつけるわけではないので、視聴者の方に、「この人、さっきはOKだと言っていたのに、このシーンではNOって言うんだ…」と思われるような表現のトリックみたいなものを三谷(幸喜)さんが伏線としてたくさん張ってくださっているなと。正直、僕自身も台本を読みながら振り回されています(笑)。三谷さんの頭の中ってすごいですよね。
義村は、自分の得になることのためなら何でもする人という感じがするんです。だから、幼なじみである義時はもちろん嫌いじゃないし、無二の親友だとも感じてはいるのですけれど、彼のために自分を犠牲にするかといったら絶対にそんなことはしない。そこが義村のドライなところというか、怒りを感じたとしても、それをどのようにぶつけるのかというタイミングまでもずっとうかがっているような、そんな感じがしますね。
外見的には、義村は序盤から大きな変化がないのですね。
そうですね。義時が大きく変化した人なので、僕は逆に何も変わらないようにしようかなと思って、老けメイクをあまりしていません。周りは変わっていくけれども義村だけは変わらないというのもおもしろいかなと思ったので。
そういえば第44回で、「あいつは嘘をつくとき必ず襟を触る」と言われていましたが、実はあれ最初からやっているんですよね。それがまさかあんな形で役立つとは思わず(笑)。本当は襟を触るという仕草ではなかったのですが、最初から見直したら、“心ここにあらずなとき”や“本心ではないことを言っているとき”に触っていると気がついたんですよ。なので、それを生かすことに。ぜひコアなファンの方々はいつかDVDなどで見返していただいて、登場人物たちの変化はもちろん、義村がいつ襟を触っているのかも探ってみてください(笑)。
これまで、畠山重忠、和田義盛など、かつての仲間たちとの争いが起こってきましたが、義村はそれらをどう思っているのですか。
きっと、「どうにかしないと!」って心を揺さぶられているのは義時で、こんなことを言ったらあれだけど、義村は正直そんなに…なんとも思ってない感じもあるんですよ。基本的に、自分の損得でしかチョイスしていないので。義村って、誰かに自分の深い気持ちを吐露するようなことがほとんどないじゃないですか。さまざまな人たちが思いをぶつけあう中、後半に出てきて相談に乗るみたいな役割が多い。結構人との距離感が絶妙というか、もう少し前に出てしまうと最初のぶつかり合いの中にいないといけなくなってしまうので、そうならないようにしているというかね。ある意味冷酷なのかもしれないけれど、よく言えばそれが彼の生命力の強さであるというふうに今回の義村像は描かれていると思います。僕、三谷さんに相談したことがあるんですよ。「今後、義村が自分の思いを打ち明けるシーンとかってあるんですか?」って。そうしたら、「いい質問です。ないです」と返ってきました(笑)。おもしろい役ですよね(笑)。
北条とは、娘・初が義時の息子・泰時に嫁ぐことでより関係が密になりましたが、娘夫婦のことはどう見ているのですか。
あれは保険ですね。とりあえず何かあったときのために、三浦も残るし、北条にも取り入ることができるように血を分けて残しておくというか。自分が思い描く三浦の未来のために、生きる術をパラレルワールドのようにいっぱい想像してつくっている感じがしますね。でもそれを、そこまでいやらしく見せないのが義村なんですよ。完全な悪役に見えてはダメだし、そう見せない怖さがあるというか。視聴者の方はそれを見てゾッとするだろうし、僕の好感度が上がるのか下がるのかは置いておいて(笑)、印象には残るだろうなと思います。
これまでの大河ドラマでは、“敗者”を演じることが多かったと思いますが、今回はどちらかと言えば“勝者”の人生です。今、どのようなことを感じていますか。
今回の義村はたしかに花火のようなインパクトを残すわけではありませんが、やはりミステリアスという点で魅力的な人物ですよね。
そうですね。なんだかんだ周りで起こるすべてのことを知っているのに、義村が生きている間は三浦は滅びませんからね。すごい人だったんだろうなと思います。あの時代にちゃんと生き残っていけるってなかなかだなと。最初は、「なぜ義村は13人の宿老による政治に入らなかったんだろう」と思っていたのですが、たぶん、「出る杭は打たれる」という言葉があるように、ど真ん中に行くと動きづらくなると思ったからなんですよね。そういうのはやりたい人たちにやらせておいて、道のど真ん中とはちょっと外れた原っぱから、「あっちの道のほうが良さそうだな」と眺めている感じがすごく義村っぽいなと思います。
改めて、三谷作品のおもしろさを踏まえたうえで、「鎌倉殿の13人」のラストをどう予想されますか。
僕は三谷さんの脚本にわりとまっすぐなイメージを持っているんですよ。「新選組!」(2004年)も「真田丸」(2016年)も、まっすぐな生きざまをトリッキーに描いていたと思うんです。だけど今回の「鎌倉殿の13人」のつくり方はかなり複雑で、史実として残っていることが謎だらけだからこそ、三谷さんにとっては宝庫というか。大変な作業もあるとは思うけれども、「この説もあるし、この説もあるから、これ足しちゃおうか」とか、いろんなことができているんだろうなと、演じながら感じています。その中で義村というのはミステリアスな人物のひとりだし、第1回からわりと変わらない顔でひょうひょうとしているのが怖いなというふうに最後はなるのではないかと想像しています。義時がおじいちゃんになって亡くなるところまでやるのか、何年後に義時が息を引き取ったという終わり方にするのかはわかりませんが、この物語のラストに義村がどんな顔をしているのか、僕自身も本当に楽しみです。