INTERVIEW 2022.01.16
源頼朝役・大泉洋さんインタビュー
「鎌倉殿の13人」における源頼朝はとてもモテる人物として描かれていますが、どのような印象ですか。また、三谷さんは当て書きをされる方ですが、今回の頼朝像についてご自身で何か思い当たる節はありますか。
なんて言うんでしょう…いわゆる源氏の棟梁であればもちろんモテて当然かもしれないけど、流人の身でありながら八重さんと政子さんを虜にしていくってすごいなと思いますよね。かなり地位のある人であれば惹かれるのはわかるけど、非常に立場的には厳しい状況にある中で、八重さんも政子さんもみんな頼朝を好きになっていくというのはすごいなって感じですよね。でも八重さんと政子さんと結ばれるというのは、当て書きじゃなくて史実だからね。中にはびっくりしちゃうような史実もあるけど、それを僕がやるとなったとき三谷さんは本当にうれしかっただろうなと思います。「困るだろうな、大泉は」って、その困るさまを描いて笑いたいんだろな。書きながら顔を真っ赤にして笑っている三谷さんが浮かんできましたね(笑)。
政子役の小池栄子さんとは今までも共演されていますが、頼朝と政子としてお芝居をされていかがですか。
ここ数年でたくさん小池さんと共演しているので、やっぱり安心できますよね。三谷さんの台本ですし、僕と小池さんが出るとどうしてもおもしろい空気が流れてしまう。だからあまりおもしろくなりすぎないように小池さんは気をつけているんじゃないかな。でも、やっぱりおもしろくなっちゃうけど。
それと小池さんがすばらしいなと思うところは、回を重ねるにつれて美しくなっていくんですよ。そのあたりの役作りはさすがだなと思いますね。
頼朝は政子の弟である義時のことを頼りにしていますが、頼朝と義時の関係性についてはどのように思われますか。義時を演じる小栗旬さんの印象も教えてください。
第2回のセリフにも出てきましたけど、「信頼する弟だ」という気持ちですね。本当の弟たちもいっぱい出てくるんですけれど、どこかである意味、本当の弟たちよりも信頼しているような、それは何か直感的なものなのかなと思うんですよね。初めて会ったときの誠実な感じだったり、どこか気の弱い感じだったり、そこを頼朝さんは見抜いたというか。子どものころからずっと流人生活をして、自分が生き抜くためには誰を信じて誰に気をつけなければいけないのかをものすごく見てきた人だろうから、人を見る目がものすごくたけているんだろうと思うんです。その中で、直感的に「こいつは信頼できる」という思いで義時には何でも言うし、大事な所には義時を行かせたいと思っているのかなと。
小栗旬くんは役者としてもちろんすばらしいんだけど、まずはやっぱり愛される人間力がすごい。いわゆる座長としてぐいぐい引っ張っていくタイプというより、居ると非常に空気が柔らかくなるというか、とっても現場が和む方だなと改めて思いました。僕より10歳くらい下なのかな? だからかわいいというか、いろいろと彼のために頑張ろうと思える。この人はそういう人間力がすごいんだな、と改めて思った感じかな。何なんだろうね、うまいんだよね、年上をいじるのが。誰に対しても人なつっこいというか。僕のことも突然呼び捨てにしてくるんだけど、つい笑っちゃったり(笑)。愛され力が半端ないなという気がしますね。
三谷大河の魅力はどのようなところに感じますか。
やっぱりコメディーのセンスですよね。“大河ドラマ”というジャンルで恐らくこんなに笑いながら見られるのは、三谷作品しかないと思うんです。どの大河ドラマもおもしろいんですけれど、そこに笑いの要素をこれだけ入れられるのが三谷さんだし、しかも笑いだけじゃないわけですよね。だから頼朝さんなんか大概が笑えるシーンだけど、要所要所で刺さってくる怖いシーンが入ってくる。そのさじ加減が絶妙で。笑いの中に突然隠されている怖さみたいな、どっちも楽しめるのが三谷さんの作品だと思いますね。本当に今回は怖い(笑)。「真田丸」(2016年)ではそこまで感じなかった「怖え!」っていうのを感じるんだよね、特に頼朝さんには。心配だもん、好感度だけで売っている人間だからさ、僕の好感度はどこまで下がるのかなって(笑)。そういう役をそんなにやったこともないから、演じている分にはとっても楽しいんだけどね。現代の人から見たら頼朝さんの行動ってものすごく怖い部分が多いんだけど、そこをどれだけリアリティーを持ってというか、わかってもらいながら演じられるのかが大事かなと。説得力を持って見てもらえるといいなと思います。
今回は平安末期から鎌倉初期にかけて描かれますが、演じられる中で何か新しい発見はありましたか。
私事で恐縮ですけど…前に出演させていただいた「真田丸」の戦国時代より、今回はさらに座る板が硬いなと思いましたね。やっぱりより環境が悪い。「こんなに痛かったっけ?」というくらい、あぐらが痛いんですよね。「真田丸」のときは、少し偉くなって上田城ができたときに畳に座れるようになって、みんなで喜んだ覚えがあるんです。「よかったねー! これで楽になったよー!」みたいな感じだったんだけど、今回の時代は偉くなっても畳って出てこなくて。ギリギリ頼朝さんだけ座るところに畳が出てきたんですけど、そうなると今度は義時さんあたりから「いいよね、頼朝は。俺たちまだまだ痛いよ」みたいな感じで、ちょっとトゲのある言われ方をするんですよ(笑)。例えば、戦国時代は鎧で演技するとなったら床几っていうちょっとした椅子に座れたんだけど、それも無いって言うわけ。なおかつ鎧が重いわけね。それであぐらをかいた日には、本当に中世の拷問を受けている感じなんですよ。そういう役者的につらい時代の違いは感じていますね。
本当にね、次に大河ドラマに出るときはどんな地位の人物かというのは大事にしないといけないなという発見はありました。永遠に出世しない役とかやめておこうって(笑)。いくら主役でもね、義時さんなんてずいぶん衣装が変わらないものだから、だんだんほつれてきちゃって。でも「味だ、そのままいく」って言われるからかわいそうだなって。偉い役しかやっちゃダメだって思っています(笑)。