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INTERVIEW 2022.07.17

畠山重忠役・中川大志さんインタビュー

~「13人の宿老による政治に参加しない」というのが重忠らしい~

これまでの中で重忠らしさを感じた場面や、新たな発見のあった場面はありましたか。

第20回に静御前の舞で重忠が伴奏するシーンがあって、確かに史実として音曲おんぎょくに精通していたというのは僕も知ってはいたのですが、そういった部分を描いてもらえたことは個人的にうれしかったですね。重忠の新しい一面をお見せできたような気がしています。重忠は“音曲の達人”だったようなので、練習は難しかったですね。「達人ってどんな感じ?」と思ってしまって…(笑)。でも、そういう芸事に対しても重忠は真剣に向き合っていて、プライドもあって、誇りに思っているので、所作はもちろん、抱いている感情も丁寧に表現したいと思って挑みました。

改めて「鎌倉殿の13人」における畠山重忠はどのような人物だと思われますか。

序盤のころからはだいぶ置かれている状況が変わってきていますが、基本的なところはずっと変わっていないと思っています。いろんな思惑がうごめく中で、「どう立ち振る舞えば自分に利益があるのか」ということを考えている人が多いですが、僕は今回“武士道”をテーマに重忠をつくっているので、周りに流されずに常に自分と向き合っているような身の振り方は大事にしていますね。
僕と重忠がリンクするのは、たくさんの先輩たちや強者つわものたちと、「俺だって負けないぞ」「刀を抜いたら俺のほうが強いんだ」っていう自信や信念を持って、いかに飲まれないように戦えるかっていうところだと思うんです。そういう緊張感は演じるうえでも大切にしているつもりです。

今まで忠義を尽くしていた源頼朝の死を重忠はどのように受け止めていたと思いますか。

いつかくることだという覚悟はずっと持っていたと思うんですよね。頼朝がいなくなったあと、誰がどういう動きをし始めるのかなど、いろいろなパターンを頭の中で想像していたような気がします。でもやっぱり、「頼朝がいなければここまでくることはできなかった」という恩義はすごく感じていたと思うので、とても大きなものを失ってしまったという感覚はもちろんあったと思います。指針となる人がいなくなったときに、本来のその人たちの性格が出てくると思うんですよ。だからこそ周りの人たちには流されず、重忠はブレずに常に自分の生きやすい場所を模索し続けているのかなと思いました。

重忠は北条時政の娘・ちえと結婚しましたが、婿入りした北条家の印象はいかがですか。

台本では結構急に時間が流れて、気が付いたら「婿殿むこどの」になっていまして、もちろん史実でわかってはいましたが、急に時政さんのことを「義父上ちちうえ」と呼び出したりして驚いてはいます(笑)。でも北条家のことは自分が関わっていないシーンもこれまでとても楽しく見ていたので、自分もその一員になれたことはうれしいです。特に女性陣にはあまりお会いする機会がなかったので、「うわ~、政子さんだ!」と視聴者的目線になったりもしながら(笑)、とても不思議な感覚ですね。本当に新鮮ですし、第21回で北条家が大集合したシーンは、正月の親戚の集まりみたいな感じで楽しかったです。

家族が増えたことで重忠の中で何か変化はありますか。

今までの重忠は居場所が定まらない時期もありましたし、わりと孤独だったんですよ。それが頼朝軍に加わって、北条家のみなさんと家族になれたっていうのはうれしいですね。奥さんを含め守るものができたことで、今までとはまた違う一面がでてきたりするのかなと思っています。

義時はどのような存在だと思っていますか。

義時は常に無理難題を押し付けられて、いろんな人の板挟みになって、いろんなところを駆け巡っている人物だと思うんですね。でも、その頑張りが評価されなかったり報われなかったりすることも多いじゃないですか。なので、重忠は、周りの人が気付いていない義時の苦労や努力をちゃんと見て、理解している人であれたらいいなと当初から思っていました。これからも、そういう“わかりあえている関係”ではいたいですね。

頼家政権のもとで発足した13人の宿老による政治のメンバーとして声を掛けられたものの、重忠は断りました。この判断を中川さんはどう思われましたか。

「参加しない」というのが重忠らしいなと僕は思っているんですよね。しっかりと一線を引いている部分があるというか、何がどう転んでも自分の生き方を変えない、人に左右されない強さがある人だということをこれまで重忠を演じてきて感じているので、僕としては彼の判断はすごく腑に落ちています。歴史にそこまで詳しくない方は重忠は13人に入ると思っていたかもしれませんが、そういう大きなシステムが出来上がっていく中で、彼は自分なりの居場所や身の振り方を慎重に考えていたのだと思います。

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