INTERVIEW 2022.11.27
公暁役・寛一郎さんインタビュー
大河ドラマ初出演でしたが、撮影に参加してみていかがでしたか。
共演者の中には画面を通して一方的に知っている方も多かったですが、昔から父親(佐藤浩市)を通して知っている方もいて、そういう方と現場でお会いするのはいつも不思議な気持ちになるんですよね。不思議な接し方だし、不思議な距離感なので、やりにくさを感じることもありますが、うれしいです。大河ドラマはまた少し違う感覚もあり、長い期間撮影をされている最後の最後に若い役者がヒュッと入っていくのは結構プレッシャーなのですが(笑)、でもだからこそ「最後までいいものにしなきゃ」というのは感じましたし、逆にその緊張感をポジティブに捉えて楽しんで演じたいなと思っていました。
「鎌倉殿の13人」における公暁はどのような人物だと思いましたか。
すごく実直で、まっすぐな青年だと思いました。父も兄も殺されて、いつ自分にも死が降り注いでくるかわからない中で、ああなってしまった必然性に三谷さんがいろいろと味付けをしてくださったなと。公暁は、父・頼家を尊敬し、仇を取りたいという思いの強い人ですし、僕としては、彼は鎌倉殿になるべき人だったと思うので、そこに重きを置いて演じようと思いました。あとは、実朝を暗殺したときの彼の背景には、いくつか説がありますが、最初にお話をお伺いしたときに、「今回は公暁の単独説でいく」とお聞きし、個人的には腑に落ちました。最終的には三浦も若干関わっていて、一番近くにいた悪い大人が火に油を注いだという結果にはなっていますが、基本的には公暁の意志のもと事件が繰り広げられてしまった。それが、いろんな資料を拝読して僕の中で想像していたものと大きく違わなかったといいますか、単独説として描かれていてよかったなと思っています。
園城寺で修行を積んだ公暁は、どのような心情で鎌倉に戻ってきたと思いますか。
修行を積んで6年ぶりに帰ってきた時点で、「鎌倉殿になる」という意志は芽生えている状態だったんですよ。いろいろな期待もあっただろうし、資料によると、公暁には助けてくれる人もたくさんいたみたいなんです。例えば、園城寺で出会った人たちとか。そういうところを見ると、彼は結構、人徳があったのではないかと僕的には思っていて、人を惹き付ける力や自信があったはずなんですよね。でも、「鎌倉殿になりにきましたよ」という感覚で来たのに、どんでん返しというか、思っていたものとは違う展開に巻き込まれていき、彼のルートがどんどん崩れていってしまいました。そう解釈すると、彼の転落がわかりやすい気がしています。
実朝暗殺を計画している最中、母・つつじが訪ねてきましたが、「あなたの道を生きるべき」と語る彼女の言葉を聞いて、何を感じましたか。
そして父の仇討ちを遂げ三浦館に逃げた公暁は、頼っていた義村に討たれてしまいます。彼の最期をどのように感じましたか。
どうですかね…でも正直、しょうがないですよね。憎しみを持って人を殺めてしまうと、それは絶対に憎しみとして返ってきてしまう。今も昔も変わらないことなんだなと思います。だってね、「あんなことをしてどうやって鎌倉殿になるの」って思うじゃないですか。今回の脚本では、「北条がいけないんだよ」と主張して、「正当な後継者は僕なんだよ」と示したかったという感じですが、そうしたところできっと鎌倉殿にはなれなかったでしょうし、本人もわかっていたと思うんですよ。「諦めてない」とは言っていましたけれど、やってしまったことの重さと、これはもうひっくり返らないだろうということは。政子に会いに行った際にも、「こんなことをして鎌倉殿になれないとわかっているよね?」と言われましたし。でも公暁としては、「名をあげたかったんです」。それだけが理由ではないでしょうけど、そう答えるところに彼の若さや青さがあるなと感じました。
尊敬する父の仇討ちを果たした公暁の生き方を、どう思いますか。
“若気の至り”だと思われてもしかたがないくらい愚かなところはちょっとあったかなとは思いますが、僕は好きですね。なぜかと言うと、今よりも作法や文化というものが厳しかった中で、個の意志で全体に背くということをした人はあまりいなかったと思うので、そういう意味で“革命児”だなと思いましたし、それが善いことか悪いことかは別として、すべてに背いてでも新しい歴史をつくる行いをした彼の生き方は好きです。どこか自分もそうありたいなと思いますね。